目次
じわじわお店が増えてきた「ウイグル族」の料理
前回のアフガニスタン・パキスタン料理に続き、今回は「ウイグル料理」を紹介します。
ウイグル料理とは、「ウイグル族」の料理のこと。ではウイグル族とは? もともと4世紀から13世紀にかけて中央ユーラシアで活動し、いくつかの独立王朝を樹立したあと、18世紀には清の支配下に。今は中国の西端にある新疆(しんきょう)ウイグル自治区とカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスなど旧ソ連邦中央アジアに主に住んでおり、総人口は約1千万人と言われています。
実は近年、東京でもこのウイグル族の料理が食べられるお店が続々と登場してきているのです。特徴としては、ウイグル族の大半がイスラム教を信仰するムスリムのため、イスラム法において合法な食材・調理法を使っている料理「ハラール」の店が多いこと。新疆ウイグル自治区といえばタクラマカン砂漠があることで有名ですが、ウイグル族の生活は砂漠の中のオアシスで培われた農耕や牧畜が基盤。そういった歴史的経緯もあり、メインで使われる肉は羊肉です。また、ユーラシア大陸の中央部、シルクロードの要所で生活してきたウイグル族らしく、東西のいろいろな料理に影響やルーツを感じることができます。
例えばウイグル料理の代表的存在「ラグマン」。小麦粉を練った生地を引き伸ばし、茹であげて、トマトベースのソースで炒めた野菜をかけて食べるシンプルな麺料理です。近年、蘭州ラーメンのブームで中国の伝統的な手延べ麺「拉麺」に注目が集まっていますが、作り方はほぼ一緒。そして見た目は日本の「うどん」にそっくり! 野菜と炒めるパターンのラグマンもあるのですが、見た目はほぼ「焼きうどん」です(うどんは麺を切って作るという違いはありますが)。うどんのルーツも諸説ありますが、「やはり、海を渡って伝わってきたのでは……」と感じてしまうことうけあい。
また、小麦の皮で肉を包んだ「ゴシ マンタ」や「トゥギレ」といった料理は、前者は肉まん、後者は水餃子のよう。だからでしょうか、肉料理に関してはスパイスが効いているものが多いものの、基本的には日本人でもすんなり受け入れられる優しい味わいの料理が多い印象です。
料理がはるばるとシルクロードを伝わってきた長い歴史を感じつつ、店ごとの味わいの個性を楽しむことができるのではないでしょうか。
さて。そんなウイグル料理を楽しめる店を3店ご紹介します。
ウルムチ フードアンドティー(高田馬場)
近年急激に多国籍化が進んでいる東京・高田馬場ですが、こちらはそんな高田馬場エリアに2017年オープン。ウイグル料理とトルコ料理の両方が食べられるお店です。ウイグルはテュルク(トルコ)の民族であり、歴史的にも深いつながりを持つ両者。食文化にも通じる部分が多く見られることもあり、こちらの店でもすんなりとメニューが共存しています。
個人的にはこちらではウイグル風のピラフ「ポロ」がお気に入り。スープの旨味をしっかり吸い、ほんのりとにんじんなどの甘さを感じるピラフ自体もおいしいのですが、ここはぜひ本場のようにヨーグルトをかけて食べてみて。酸味がいいアクセントとなり、暑い時期でもさっぱり食べられる味わいに。
また、完全なハラールのお店なので、ドリンクにはお酒類や通常のコーヒーなどは置いていません。そのかわりガラスポットで供されるウイグル・トルコ流のお茶があるので、こちらを楽しみながらというのもまた一興ですよ。