パンラバー ひのようこさんが教えてくれた、日帰りパンの旅 in 千葉

パンラバーは千葉を目指す!?  〈こんがりパンだパンクラブ〉のひのようこさんをナビゲーターに迎え厳選した3店をお届け。

ひのさんに聞く、“千葉パン”の魅力

あれも食べたい、これも食べたい! 個性派パンの大豊作地帯

近年、個性溢れるパンが並ぶ店がいくつも出現し、全国のパンラバーが熱い視線を注ぐのが千葉エリア。ファミリー層が中心の郊外ならではのバラエティに富んだ品揃えや、都心の店にはないリーズナブルな価格帯ほか魅力たっぷり。

 

ナビゲーターは「夏の鎌倉とおいしいパン」でもおすすめアドレスを教えてくれた、〈こんがりパンだパンクラブ〉のひのようこさん。「私の出身地でもある千葉には、時間をかけてもまた行きたくなるような、個性的なパン屋さんが多いんです。一口に千葉といっても広いので一回ではなかなか回り切れないとは思うのですが、休日のドライブのコースにしてみたり、遠足気分で訪れたりするのはいかがでしょうか。お散歩にぴったりの公園や海岸も多いので、焼きたてのパンを買って、外の空気を感じながら食べるといった“千葉パン”ならではの楽しみ方もできます」。

 

今回はそんな生粋の“千葉パン”ラバー、ひのさんが厳選した3軒をご紹介。第1回・鎌ケ谷「こだわりのパン工房 パラオア」に続き、第2回となる今回はみどり台にある「ブーランジェリー ドド」をご紹介。

フランス仕込みのハード系パンと、地元民に愛される定番パンが共存

みどり台「ブーランジェリー dodo(ドド)」

おすすめ千葉パンの2軒目として、ひのさんが教えてくれたのは、京成線みどり台駅から徒歩5分ほどの静かな通り沿いにある、小さなパン屋さん。昭和の建物を改装した店内には、店主の本行多恵子さんが大好きなハード系のパンと、それだけで食事になるようなサンドイッチやフォカッチャ、それにクリームパンやあんぱんなどの定番菓子パンが常時20種類ほど並ぶ。「初めて食べたとき、どのパンにも、生地の味わいの深さと風味の素晴らしさがあり感動しました」と、ひのさん。それもそのはず、若い女性から年配男性まで、いろんな人がひっきりなしに出入りしているのは、地元で愛されている証拠!

ひのさんのスタメンパン

旬の素材×定番パン=幸せ無限大のサンドイッチ

「生ハムと柿のカスクルート」

ひのさんが真っ先におすすめしてくれたのは、新鮮な季節の素材に一手間加えたサンドイッチとフォカッチャ。ドドを訪れたら必ず買いたいものだそう。

 

写真上は、日替わりのバゲットサンド。生地は引きがそれほど強くなく、歯切れがいいので、具材が挟んであっても食べやすい。取材時は本行さんが大好きだという柿の甘さと生ハムの塩気がバランスよく味わえる「生ハムと柿のカスクルート」(500円)が店頭に並んでいた。「サンドイッチはおいしいパンを更に引き立てる、素材の組み合わせが魅力。帰り道、我慢できずに食べ歩きしたこともあるほどです!」とひのさん。季節ごとに訪れて、組み合わせの妙を楽しみたい。

外はカリッ、中はモチッ。さまざまな具材を受け止める優等生

「日替わりフォカッチャ」

「軽い食感が特徴のフォカッチャは食事のおともにぴったり。ぜひトーストして食べてください!」と、本行さんが胸を張る自信作のフォカッチャは、ドドの不動の人気者。ローズマリーを練りこんだ「フォカッチャ プレーン」(140円)やグリーンオリーブ、ブラックオリーブ、セミドライトマトが入った「フォカッチャ オリーブ」(170円)、それに旬の野菜をたっぷり使ったおかず系「日替わりフォカッチャ」がある。

 

取材当日の「日替わり」はサツマイモの甘みをハーブ入りマヨネーズ&チーズの塩気が引き立てる。写真上「サツマイモのハーブマヨソース」(240円)。

まとめ買い必至! 毎日の食卓の主役にしたい定番パン

「バゲット」

ひのさんが「初めてドドを訪問するなら、ぜひシンプルなパンで、その生地のおいしさをぜひ感じてみていただきたい」と話すように、定番パンはどれも粉の香りや生地の食感がしっかり味わえるものばかり。その代表格が薄めの皮とソフトなクラムが特徴のバゲット(280円)だ。「パンの値段が高くならないように、手に入りやすい材料を使い、製法を工夫することで味をよくしていくのが私の流儀」という本行さん。毎日食べてもまだ食べたい、安定のおいしさはついついまとめ買いしたくなってしまう。

取材班が見つけた、「あ、これも食べたい!」

「チョコとクルミのわっか」

本行さんが「今回の取材で、ひのさんが『気になっているパン』と言ってくださったことで復活したんです」と話す、リュスティックの生地にクルミとチョコを練りこんだパンは、コーヒーと一緒に食べれば幸せ気分に。「今日はやるよ!という日にはInstagramやFacebookで告知しています」とのこと。ディスプレイも可愛い!(250円)

「ブール」

くるみとレーズンのパンにクリームチーズをプラスした、食べ応えのある一品。たっぷりまぶされたゴマが香ばしく、食感のバランスも抜群。お好みで軽く温めてから食べるのもよさそう。

SHOP INFO

小さいながらも店主のセンスが光る、街角のパン屋さん

2〜3人入ったらいっぱいになる、こぢんまりとした店内。焼きたてパンのいい香りに包まれて幸せ気分に。

 

もともとベーグル屋さんだったという店を、昭和の建物の魅力を生かしながらリノベーション。厨房との間のガラス窓もキュート! 焼きあがったパンが木箱や籠の中に並ぶ店内にいると、ヨーロッパの片田舎にいるような不思議な感覚になる。

木箱の中には、本行さんが言うところの「茶色いパン」がぎっしり。売り切れ情報などは常時SNSで発信している。

 

「フランスで驚いたのは、街のパン屋さんにはパン・オ・ショコラとクロワッサン以外はバゲットとフルーツが入ったハード系のパンくらいしか置いてないこと。私もそういう、シンプルだけど飽きない、街の人の日常に寄り添ったパン屋さんがやりたかったんです」と話す本行さん。今後は、サンドイッチなどメニューを通して、具材との合わせ方やパンごとの特徴などパンのおいしい食べ方も提案していきたいとか。

 

店主に直撃!

本行多恵子(ほんぎょう・たえこ)
千葉県稲毛区出身。ホテル専門学校で学び、ホテル勤務などを経てユーハイムでパン作りをスタート。志賀勝栄シェフの薫陶を受けた5年間の修業ののち、フランス各地で1年間パン作りを学ぶ旅を続ける。2011年2月に現在の場所に「ブーランジェリー ドド」をオープン。

 

「稲毛出身なので、地元にお店を出したかったんです。でもオープンの2カ月後に東日本大震災が起きて、坂の下の方は液状化現象で断水するわ、計画停電の地域にも当たるわで、大変なことに。ただ、断水が原因で隣のコインランドリーに洗濯に来るようになった人や、調理しないで食べられるものを求めていた方たちが買いに来てくださるようになって、それが口コミで広がったんです。その頃からの常連さんもいらっしゃいます。ありがたいですよね」と話す本行さん。彼女を支えるのは、元気いっぱいのご両親だ。「父はやたらと人気があって、今や“看板おじさん”。子どもたちが“おじさんに会いに行く!”とお母さんを引っ張ってきてくれたりするんですよ」。

店頭には、自家製カスタードクリームが詰まったクリームパンや、懐かしい味わいのあんパンも。「このあたりには一人暮らしの年配男性なども多い。そういう方がわざわざ、あんパン1個を買いに散歩がてら来てくださったりするんです」とも。その包容力もドドの魅力だ。

 

 

取材・文:山下紫陽

写真:ミヤジシンゴ