新たな試みで、新たな日本酒ファンの心を掴む

近年、じわじわブームとなっている日本酒。そのなかでも斬新なスタイルで酒造りと飲食店を展開するのが、今夏誕生した「Whim SAKE & TAPAS」だ。店内に「WAKAZE 三軒茶屋醸造所」を併設し、そこで造る出来立てのどぶろくを店内で味わうことができる。

“山形×三軒茶屋”をコンセプトにしたどぶろくの味わいは?

山形県のSAKEメーカー「WAKAZE」の直営店としてオープンした「Whim Sake & Tapas」。三軒茶屋駅から5分ほど歩いた場所に店を構える。「WAKAZE」は“日本酒を世界酒に”をミッションに活動するベンチャー企業で、SAKEメーカーとしてさらなる飛躍を遂げるべく自社醸造所を東京に構えた。新たな文化を発信する場所にふさわしいと三軒茶屋を選んだ。ちなみに、「WAKAZE」には、酒蔵の若手従業員を指す「若勢」と「和の風」の意味が込められている。

まずは、併設する「WAKAZE 三軒茶屋醸造所」の紹介から。店内に入るとガラス越しに広がるのが6坪の醸造室内。現在、4つの小型タンクを並べ常時複数種のお酒(「その他の醸造酒」にあたるどぶろくや玄米酒など)を醸造している。蔵人は、秋田の新政酒造などで研鑽を積んだ30歳の造り手を中心とした若手メンバー。タンクごとに、酒米を変えるなど日々新たな挑戦に挑んでいる。現在はどぶろくがメインだが、今後は醸造過程で柑橘やハーブを使用したお酒も製造する予定だ。

この日提供されていたのは「初回醸造酒(どぶろく)」(1杯600円・税別)。山形県産のお米の「つや姫」、三軒茶屋にある神社の水、泡あり酵母で造ったどぶろくは、飲みやすい低アルコールで、甘みと酸味のバランスが心地いい爽やかな飲み口。お米の粒感も楽しむことができる。このどぶろくにアメリカの白ビール「ブルームーン」を合わせた「どぶビー」(800円・税別)も人気が高い。共に、福島県の大堀相馬焼のオリジナルグラスで提供される。

「WAKAZE」が手がける日本酒らしからぬ日本酒たち

店内で造るできたてのどぶろく以外に、「WAKAZE」が手掛ける実に多彩な味わいの日本酒を6種類用意していることもあり、「Whim Sake & Tapas」ではペアリングの提案も充実。メニューにはオススメの組合せを記載しているので、ぜひ試してみてほしい。

 

「FONIA(フォニア)」シリーズは、柚子や檸檬、山椒、生姜といった和の柑橘やハーブを日本酒造りに取り入れたお酒。爽やかでボタニカルな香りに癒やされる。「ORBIA(オルビア)」シリーズは、オーク樽で熟成した日本酒で、グラスに注いだときの色も美しい。和食だけでなく、洋食とのペアリングの可能性も感じさせてくれるテイストだ。

 

ご覧の通り、日本酒のイメージを覆すデザイン。通常の720mlより少ない500mlで、専用のギフトボックスがついているので、贈りものにも最適だ。店内でも1本3,000円(税別)で購入できる。

山形の食材を主軸にした料理にペアリングを提案

フードメニューは、すぐに登場するチーズやサラダのほか、〆のごはんものやデザートまで充実のラインアップ。ラム酒をきかせた「マスカルポーネとドライフルーツのスイートな大人ディップ」(600円・税別)は、定番の人気メニューだ。こちらは、オリジナルの日本酒「ORBIA LUNA」(1杯850円・税別)とぜひ。酸味と甘味がリンクし、延々飲めてしまいそうだ。

フードには、山形県庄内地方の食材を積極的に取り入れている。フードメニューを捲れば、だだちゃ豆、式部茄子、庄内砂丘メロンなど、生産者の顔写真と共に紹介されているので、ぜひチェックしていただきたい。「熟成庄内豚ロースハムのステーキ」(800円・税別)は、ジューシーで食べ応えある一品。季節ごとに替わる付け合わせのカラフルな野菜も山形県産だ。こちらには、ぜひ「ORBIA SOL」(1杯800円・税別)を一緒にオーダーしたい。しっかりとした酸味が、肉料理と寄り添う。

「Whim Sake & Tapas」の店舗デザインは、オリジナル日本酒「FONIA」や「ORBIA」のデザインを手掛けた若手の女性デザイナーによるもの。明るいガラス張りで、ほとんどの席からどぶろくのタンクを眺めることができるのも特徴。ほかに、カウンター席もあるので、ひとりで仕事帰りなどにふらりと立ち寄るにも居心地がいい。新感覚のお酒の数々を三軒茶屋で味わってみてはいかがだろうか。

取材・文/外川ゆい

写真/長谷川 潤