【噂の新店】「HINATA」

ジャンルを超えた料理を、ダブルシェフで

京都・中京区、元本能寺町にオープンした「HINATA」は、築80年近くの京町家を改装した一軒家のレストラン。京都の中心部ながらも静かなエリアにあり、店内は9ⅿに及ぶ長いカウンターと京都らしい坪庭が印象的な美しい空間だ。店名の「HINATA」は、オーナーシェフの中野 陽(あきら)さんの名前に由来し、「食材はすべて陽(太陽)の恩恵を受けている」という意味も込められているそう。

店は烏丸駅から徒歩10分程度
ゆったりと10席のみのカウンター
 

門上さん

店のスタッフが以前「京、静華」で仕事をされており、開店の案内をいただき、訪問しました。古い町屋をモダンに改装、居心地がいい空間でした。

中野さんは大学時代、アルバイトで飲食店に勤務したことをきっかけに料理に興味を持つ。しかし卒業後はいったん会社員として就職。その後、東日本大震災を経験し、「人生は一度きり。後悔しない生き方をしたい」と考え、本格的に飲食の道へ。京都の名店「レストランよねむら」で約10年間研鑽を積み、料理長も経験した。独立に際しては、お客様の反応を間近で感じられるオープンキッチンとカウンターを中心に店づくりを行ったとのこと。

気さくで話題も豊富な、オーナーシェフの中野さん

また、この店でユニークなのが2人の料理人によるダブルシェフ体制であること。中野さんとタッグを組む岡内孝司さんはパリや六本木の「ジョエル・ロブション」や京都の名中華「京 静華」などで経験を積み、フランス料理をベースに幅広い技術を習得してきた人物。互いに理想の店づくりのイメージが近かったことなどから、中野さんがビジネスパートナーとして声がけをしたという。メニューの作り方としては、2人がジャンルに縛られず、それぞれコース料理を考案。その中からいいものをピックアップしたり、アイデアを出し合ってブラッシュアップさせたりしながら、メニューを決めている。また、サービスも、ソムリエである2人が担当し、料理に寄り添うワインを提案している。

中野さん(右)と岡内さん(左)。先輩後輩の間柄だそう

いただけるお料理はこちら!

おまかせコースは22,000円(サービス料別)の1種のみで、14品が味わえる。今回はこのコースの中から門上さんのおすすめを4皿紹介していく。

香ばしく焼き上げた味来とうもろこしの中には、海老とホタテのムースを詰めて。足赤海老はカダイフを衣にして揚げ、殻を使ったアメリケーヌソースとともに。とうもろこしの甘みと海老の濃厚な風味が印象的。

最初に、とうもろこしをプレゼンテーション
味来とうもろこしと足赤海老
 

門上さん

発想の楽しさを知ることができます!

瀬戸内産の槍いかは生で万願寺とうがらしの上に盛り付けられ、ソースの熱によって徐々に火が入る仕掛け。時間とともに食感の変化が楽しめる。万願寺とうがらしは一度揚げてから焼くことで鮮やかな緑色に。イカの塩辛や魚醤「いしり」を使ったグリーンカレー風のソースが爽やかさを演出。

万願寺とうがらしと槍いか
 

門上さん

野菜の役割を再認識できますよ。

自家製の玉ねぎ醤、白ワインの代わりに煎り酒や梅干しを用い、ブールブランをイメージした和風ソースで。皮目を香ばしく焼き上げた真名鰹のあっさりとしたおいしさを、ソースで引き上げている。おかひじきを添えて。

真名鰹 醤麹
 

門上さん

真名鰹とソースとの相性を存分に楽しめます!

今回のコース〆はカレー。「レストランよねむら」の流れを感じさせながらも、独自にアレンジしている。隠し味に山利商店の白味噌を使用し、発酵のコクと甘みによってまろやかに。ご飯は、中野さんの祖父の田んぼで育てる、兵庫県産コシヒカリ。レンコンのピクルス、京番茶と。

炊き立てのご飯
〆のご飯、今回はカレー
 

門上さん

オーナーシェフのルーツとそこに対するリスペクトを感じます。

エンターテイメントとして楽しんで

「食に興味のある方はもちろん、記念日や少し特別な日に、気軽に訪れていただけたらうれしいです。カウンターだからといって緊張せずに、調理風景もエンターテイメントとして楽しんでくださいね!」と中野さん。11月以降はスタッフ体制を整えながら、お土産に最適な焼き菓子の販売にも注力する予定。ECサイトでの展開も視野に入れているそうで、今後の新たな進化も見逃せない。

店は反物店だった建物をリノベーション。ナプキンカバーやコースターには反物を活用し、その名残を演出
 

門上さん

食材の組み合わせが楽しいです。現代のセンスの溢れた料理だと感じました。

教えてくれた人

門上武司
1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会理事長補佐、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

※価格は税・サービス料込。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博