〈食を制す者、ビジネスを制す〉
この夏、サンフランシスコに行ってみた
先日、サンフランシスコに行ってきた。滞在期間は8日間。仕事でもツアーでも何でもないので、勝っ手気ままに観光名所を巡ったり、食事を楽しんだりしたのだが、日本と比べてとても涼しかった。気温は16℃前後で、猛暑の東京とは大違い。暑いと思ってTシャツと短パンを持参したのだが、結局使うことなく、夜は寒くてダウンジャケットを購入したほどだ。初めてのサンフランシスコということもあり、海外にあまり慣れていない自分としては、軽く緊張していたのだが、行ってみると、すぐに打ち解けることができた。ニューヨークのようにパワーがみなぎっている街というよりも、リラックスできる街。美しい街並みは申し分なく、歩いていると気持ちがいい。書店やお洒落なカフェ、レストランも多く、そこで働く人も客も自立した大人たちで周囲に配慮する、洗練された街という印象を受けた。
興味深かったのは、東京のように街中でタクシーがたくさん走っていなかったこと。なぜならウーバーが非常に普及しているからだ。観光客の多くもウーバーを利用しており、ホテルや観光名所でタクシー待ちをしている人はほとんどいない。私も結果的に初めて自分でウーバーを使ってみたのだが、電車もバスもなく、タクシーも拾えないようなところでも、スマホでウーバーを呼び出せば、数分で迎えに来てくれる。しかも安価だ。タクシーなら5,000円程度の運賃がかかるところを、半額の値段で利用することができる。日本ではまだ普及していないため、2020年のオリンピックのとき、海外からやってくる観光客はさぞ不便に感じるだろう。むろんタクシー業界にとっては、大きな脅威だ。しかし、ユーザーにとっては、一度ウーバーを使うと、その便利さに魅了されてしまうのだから仕方がない。
シリコンバレーの栄枯盛衰を垣間見る
滞在中にはサンフランシスコから足を延ばして、シリコンバレーやスタンフォード大学にも行ってみた。さすが高給社員の多いシリコンバレーだけに企業の駐車場にはベンツやBMW、レクサスだけでなく、2000万円近くするEV自動車のテスラも目立っていた。創業者のイーロン・マスクは現在、業績不振で窮地に立たされているが、シリコンバレーではテスラに乗っていることがイケてるスタイルとされているようだ。
シリコンバレーにはGAFAと呼ばれる企業群のうち、グーグル、アップル、フェイスブックの本社がある(アマゾンの本社はシアトル)。アップルの本社は巨大な円盤のような形をしていて秘密基地のように見えるし、グーグルやフェイスブックの本社はキャンパスと言われるだけに大学に似ている。中でも驚いたのは、フェイスブックの「いいね!」で有名な本社看板の裏側に、かつてUNIXで一世を風靡したサン・マイクロシステムズの文字が残っていたこと。今なはなきサン・マイクロシステムズの跡地をフェイスブックが再利用し、本社の看板も再利用しているということらしい。それだけ栄枯盛衰も激しいということだ。
そして、スタンフォード大学。ここには本当に圧倒された。かつてはハーバード大学と併願した場合、2割程度の学生がハーバード大を選んだというが、今はほぼ取りこぼしがないらしい。それだけ素晴らしい大学だということだ。実際、美しいキャンパスはリゾート地のようで、もう一度こんな場所で勉強してみたいと思わせ、自分の人生を後悔したくなるほどだ。スタンフォード大学の年間授業料は、約470万円! 学生寮や生活費などを加えれば、必要経費は合計で年間約700万円。卒業までには3000万円近くかかることになる。訪問したときは、新入生が入学する直前ということもあったのだが、キャンパスでは中国人学生が多いように感じた。それだけの富やパワーを中国が今、持っているということだろう。
サンフランシスコに思いを馳せながら食べるもの
サンフランシスコ滞在中には、食事も楽しんだ。ハンバーガー、ステーキほか、サンフランシスコ名物のシーフード料理、全米最大規模のチャイナタウンで中華料理など誰もが思い浮かべる定番料理を片っ端から食したのだが、ランチで一番食べたのが、ピザだ。アメリカで食べるピザは、日本のよりも大きくて、なぜかうまく感じる。
日本ではランチ時にピザを食べるというビジネスパーソンは少ないかもしれないが、アメリカのビジネス街や大学ではピザ店が多く、サンフランシスコでもスタンフォード大学でもランチ時に、ピザをパクついているビジネスパーソンや学生をよく見かけた。
西海岸のエグゼクティブは、東海岸のそれと比べ、ランチにあまり時間をかけないようだ。スーツ姿で決めたビジネスパーソンはほとんどおらず、基本的にラフな格好。そして、コーラとピザ。とくにグーグルやフェイスブックの社員たちは、遊びながら仕事をしているように見える。そういえば、本社敷地内に散髪の出前バスが来ていたし、勤務時間中なのに卓球もしていた。もちろん仕事の結果は厳しく問われるだろうけれど、何だか仕事が楽しそうだ。
日本だって、仕事もプライベートも楽しくいきたい。そんな気分のときは、ご当地にあやかって、やはりピザ! そんなわけで、実は帰国後もしょっちゅうピザが食べたくなる。
「おいしいピザが食べたい」――。そんな欲求を満たすべくピザ店行脚をするのがここ最近の日課だ。日本のピザ専門店といえば、まずは「聖林館」、次に「ピッツェリア エ トラットリア ダ イーサ」が挙がる。いずれも中目黒にある評判の名店である。どちらもピザ職人の方がオーナーの店であり、これまで何度も食べているが、味は確実。「聖林館」はマルゲリータとマリナーラのみ。「ダ イーサ」でも同じくこの2種類を選ぶことが多い。
中目黒でピザを食べながら、サンフランシスコやシリコンバレーに思いを馳せる。でも、ここは日本。見慣れた風景と慌しい日々が戻ってきた。ああ! それでも仕事は楽しくしたい!