〈食べログ3.5以下のうまい店〉
おいしいもの好きのあの人に「食べログ3.5以下のうまい店」を教えてもらう本企画。今回はフードライター猫田しげるさんが、日本では珍しいココナッツ鶏鍋やアヒル料理(絶品!)などを味わえる「中国料理 海南」をご紹介。
芦屋から元町にお引越ししてリーズナブルになった「海南」
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

中国・海南島の料理ってどんなものかご存じですか?「海南チキンライス」ぐらいしか思い浮かばない人も多いのではないでしょうか。まあ私もそうでしたが。
今回ご紹介する「中国料理 海南」は、主に中国料理全般ですが、店名どおり海南島のメニューも揃えています。オーナーシェフの李暢鵬さんは海南島生まれ。香港のレストランで修業し、なんと神戸の名門広東料理「施家菜」で副料理長を務めていた実力派です。
李さんは2018年に独立し、芦屋に「香港海鮮料理 海南」をオープン。長らく地元の食通たちに愛されてきましたが、2024年6月に元町商店街に移転しました。

猫田さん
「観光客やインバウンド層を狙ったのだろう」と邪推したところ「子供の学校がこの辺なので、引っ越しました。遠いと心配だからね」と、家族愛ゆえの思い切った決断からでした!

そして芦屋時代とは客層も少し異なるため「ランチを充実させ、値段も下げました」と今の時代の流れに逆らったカジュアル路線へシフトチェンジ。以前は、ランチ2,000円から、コースも5,000円ぐらいからでしたが、移転後はランチが1,200円からで麺や一品料理も充実。夜のミニコースは2,700円からで飲み放題付きでも4,500円! 5,500円のコースでも前菜盛り、点心3種、フカヒレスープ、大エビのチリソース、和牛料理、海鮮料理、香港式揚麺、デザートの全8品という大満足の内容です。

もちろん価格は抑えても味のクオリティは落としません。むしろ「中華街が近いので初心者から上級者までの口に合うよう探求しています」とのこと、激戦地で勝負に出たからには気合十分です。
南国のエキゾチシズム漂う「ココナッツ鶏鍋」、どんな味!?
ランチも好評なのですが、一度体験してほしいのが「日本ではあまり食べられない海南料理」の数々。まずはその一つ「ココナッツ鶏鍋」をご紹介!

聞いたことないですよね。名前の通りココナッツの鶏鍋なのですが「おそらく関西で食べられるのは当店だけです」と李さん。猫田調べでは、東京にはあるのが確認できましたが、確かに関西にはないようです。

猫田さん
故郷の海南島では非常にポピュラーな料理で、ココナッツ鶏鍋専門店がいくつもあるほどだとか。店によって味もまっっったく違うというから興味深い。

作り方を見て驚くのですが、ココナッツを丸ごと1個取り出してきて、ぶった切ります。中に蓄えられたココナッツウォーターを鍋に注ぎ、ココナッツ果肉を細切りにして、クコの実を加えてジャッと熱します。

そこにブツ切りの鶏肉と塩を入れて煮込むだけ。10分ほどで火が通ります。かなりシンプルなのですが、ココナッツの甘みと香りが鶏肉に染み込んで、エキゾチックな風味あふれる、独特な味わいに……!


さっそく味わってみると、ココナッツの南国チックな香りのするスープと、シャキシャキ食感のココナッツ果実が、日本では体験したことのない味。驚くのがタレのおいしさです。スイートチリソースにニンニク、酢、塩などで作られた専用ダレが、タイ料理のようにエスニックなピリ辛コク旨テイスト。

「食べ終わった後は清湯スープを加えて、豆腐、野菜、海鮮などを入れて2度目を楽しみます」とのこと、それいいな〜と思いましたが、次の料理を紹介しなければならないので第2ラウンドはまた今度……。
