お菓子博士・猫井登のスイーツ白書Vol.4「チーズケーキ」

お菓子の歴史研究家・猫井登先生が毎回ひとつのスイーツを取り上げ、その成り立ちについて解説し、「食べログ スイーツ 百名店 EAST 2018」と「食べログ スイーツ 百名店 WEST 2018」からオススメのお店を紹介してくれるという、なんとも美味しいこの企画。連載第4弾となる今回は、不動の人気スイーツ「チーズケーキ」編です!

紀元前から愛されてきた歴史あるスイーツ

編集(以下、編):今日は、チーズケーキについて教えて下さい。チーズケーキって、大昔からあったと聞いたことがあるんですが、本当ですか?

 

猫井先生(以下、猫):そうですね。一説によれば、チーズケーキの原型は古代ギリシャの「トリヨン」というもので、紀元前776年に行われた第1回古代オリンピックで選手に供されたともいわれていますから、ルーツは相当古いですね。

 

編:古代オリンピック……紀元“前”には既にチーズケーキがあったんですか?!

 

猫:乳も卵も小麦も大昔からあったものですから、そんなに不思議ではないでしょう。トリヨンというのは、チーズに乳や卵、小麦粉を混ぜて茹でたものだったといわれていますから、今でいう「プディング」に近いものだったと思いますけどね。

 

編:へぇ〜! 今のようなチーズケーキが作られるようになったのは、いつ頃からなんですか?

 

猫:中世前期頃に、ポーランドで作られた「セルニク」が今のものに近いのではないかといわれています。これが、ユダヤ人がアメリカに移民したことでアメリカに伝わりました。

 

編:それで、アメリカではチーズケーキが人気なんですね。

 

猫:アメリカでクリームチーズが発明されてから、一気にバリエーションが拡がりましたね。

 

編:日本にはいつ頃やってきたんですか?

 

猫:一応、明治時代の文献に記載があるので、その頃に入ってきたのだと思いますが、今のように一般的になるのは1970年代以降ですね。

 

編:アメリカから入ってきたのですか?

 

猫:いや、モロゾフから1969年に発売された「クリームチーズケーキ」の影響が大きいでしょう。これはドイツのチーズケーキがベースになったものです。当時のモロゾフの社長がドイツで食べて感銘を受けて、日本で再現したものといわれています。生クリームのようなフレッシュチーズにカスタードクリームを混ぜ込んでいるのが特徴ですね。

 

編:いろんなチーズケーキがあるんですね。猫井先生のオススメのチーズケーキってありますか?

 

猫:そうですねぇ。チーズケーキはいろんなお店で作られているので選ぶのが本当に難しいのですが……やはり王道は美味しいという点も踏まえて「日本一高価、日本一美味」といわれる有名な、「ハウス オブ フレーバーズ」のチーズケーキを紹介しましょう。鎌倉在住の著名な料理研究家・ホルトハウス房子さんのお店ですね。

 

編:日本一高価って、おいくらなんでしょうか?

 

猫:直径19㎝、高さ6㎝のもので、15,000円(税込)ですね。※2018年5月時点

 

編:ひぇ〜!!

 

猫:でも、味のクオリティーを知れば、皆さん納得されると思いますけどね。

 

編:猫井先生にそこまで言われたら、食べなくちゃですね! 編集長に頼んで買ってもらいましょう!

 

猫:ちなみに、お店のケーキセットなら2,700円(税抜)で食べられますよ。

日本一リッチなチーズケーキといえばここ「ハウス オブ フレーバーズ」

出典:teddyirisさん

 

こちらのチーズケーキは、見かけはレアチーズケーキに見えるが、実はベイクドチーズケーキ。レシピによると、グラハムクラッカーを砕いたものに砂糖、バター、シナモンを加えて、練ってクッキー状にした生地を敷き詰め、クリームチーズ、卵、砂糖を加えたものを流し込み、一旦オーブンで焼く。焼けたらサワークリームに砂糖を加えたものを上に流して再びオーブンでさっと焼いて作られる、サワークリームとチーズケーキの2層のケーキである。

 

出典:ダイジろうさん

 

上層のサワークリームは、とてもなめらかな舌触りで、爽やかな酸味が特徴的。下層のクリームチーズの層は超濃厚な旨味と上品な甘さ。2層を同時に口に入れると酸味と旨味、甘みが絶妙なバランスでハーモニーを奏でる。

編:関西の方では、いかがですか?

 

猫:そうですね。濃厚なチーズケーキとして有名で、遠方からも買いに来られる方が多いといわれるのが、「パスティチュリア・デリチュース」の「デリチュース」という、お店の名を冠したチーズケーキですね。

 

編:濃厚、こってり、大好きです!!

 

猫:好みが合いますね(笑)。

ベイクドなのにしっとり。チーズの旨味を堪能するなら「パスティチュリア・デリチュース 箕面本店」

出典:八坂牛太さん

 

大阪の中心地から車で30分ほど北上したところにある箕面(みのお)市の閑静な住宅街にあるお店。オープン当初からの一番人気商品であるチーズケーキ「デリチュース」は、チーズの王様といわれる「ブリー・ド・モー」をフランスの農家から熟成途中で仕入れ、93%の湿度でじっくり熟成させて作られる。

 

出典:ishikamiさん

 

ベイクドなのにレアチーズケーキのような舌触りで、とろけるような口溶けの良さ。サクサクのクッキー生地、濃厚なチーズ、甘酸っぱい杏ジャムが口の中で混じりあって微妙に変化していく奥深い味わいだ。

編:その他の地域のチーズケーキはどんなものがありますか?

 

猫:本店は北海道のお店ですけど、デパートの催事などで、知名度は全国区のお店を紹介しましょう。

夏にぴったり。アイスクリーム風に食べても美味しい「小樽洋菓子舗 ルタオ本店」

出典:VOLVO850Rさん

出典:yoakenoaoさん

 

小樽にあるルタオ本店は、1Fが店舗、2Fがカフェとなっている。こちらの看板商品ともいえる「ドゥーブルフロマージュ」は、ベイクドチーズケーキとレアチーズムースの2層仕立てのチーズケーキ。しっかりとしたコクと甘さを感じる濃厚なベイクドチーズケーキとすっきりとした酸味のミルク感が引き立つ軽やかなレアチーズムースが口のなかで溶け合う。

 

出典:あざらしななおさん

 

半解凍でもアイスクリーム感覚で食べられるので、これからの暑い季節にもピッタリだ。

文:猫井登