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〈自然派ワインに恋して〉
シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。
ナビゲーター
岡本のぞみ
ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。
清澄白河に突如現れるパリの佇まい
2015年にブルーボトルコーヒーが開業して以来、清澄白河には倉庫や工場をリノベーションしたレストランやカフェが続々と誕生している。すっきりとしたモダンな印象の建物が多いなか、まるでパリのビストロが瞬間移動してきたかのような佇まいを見せるのが「レ・デリッツェ・デル・モンド」だ。
扉を開けて店内に入ると、あたたかなアンティークの家具や小物、白いエプロンを着けた店主・安田真敏さんに出迎えられる。店内のインテリアはいつか自分の店を持つときのためにと長年にわたって集められたもの。どこを見渡しても素敵なインテリアが目に入り、心が浮き立つ。
レ・デリッツェ・デル・モンドは、イタリアンの大皿料理と自然派ワインが楽しめる店。安田さんは地元・岐阜のイタリアンを経て、ジャンルを問わずさまざまな業態で修業。魚の目利きや調理法を学びたいと、和食店で働いてふぐ調理師免許を取得したほか、パティスリーでケーキを作っていたこともある。ピエモンテ州やリグーリア州などイタリア北部を巡って、レストランや家庭に根付いた各地の伝統料理も学んだ。
さらにはワイン好きが高じて、ソムリエの資格も取得。子どもが生まれてからは、安全な食べ物への関心がいっそう高くなり、ワインも自然派を選ぶように。ワインセレクトも安田さんが務めている。食材は豊洲市場に直接足を運んで、魚や野菜を厳選。大皿に盛られた料理がアラカルトまたはシェフのおまかせコース(1人6,600円〜)で提供されている。
カルパッチョサラダ✕ペットナット
前菜の人気メニューが「本日のサラダ」。この日は豊洲市場で仕入れたカラフルな減農薬野菜にカンパチのカルパッチョがたっぷりのったサラダが運ばれてきた。山盛りの野菜サラダは季節によって内容が変わる。夏の間は鮮魚のカルパッチョがのることが多いが、ほかの季節はパテ・ド・カンパーニュなど自家製シャルキュトリがのることも。酸味の利いたドレッシングが華やかなサラダをさっぱりと引き立てていた。
カンパチののったカルパッチョに合わせたいのは、ポルトガルのペットナット。「最初の一杯になるので、心地よいスパークリングワインがおすすめです。ほどよい酸味があり、ドレッシングの酸味や野菜の味を引き立てるペットナットです」と安田さん。清涼感を感じるややにごったペットナットは、野菜はもちろんカンパチの脂にもきれいにマッチしていた。
ジェノベーゼ✕ピュアオレンジワイン
パスタ料理で人気なのが「手打ちタリアテッレ ジェノベーゼ」。このジェノベーゼは安田さんがイタリア周遊の料理旅でリグーリア州に渡ったときに地元のレストランのシェフから教わった伝統のパスタ。たっぷりとバジルを使い、低い温度でミキサーにかけ、松の実も入れてペースト状にしてパスタに練り込んでいる。
できあがったパスタは、まるで翡翠のような美しい色合い。できたてをフォークで絡めると、バジルとガーリックの爽やかな香りが漂ってくる。味わってみると、まるで野菜を食べているような爽快さ。薄く延ばしたタリアテッレの繊細な食感もおいしく、ぺろりと完食できるおいしさだった。
ジェノベーゼに合わせたいのは、ヴェネト州のガルガーネガを使ったサッサイアというオレンジワイン。「サッサイアはピュアでフルーティな果実味があり、酸味もうまみもあります。野菜に合うワインだと思っていて、バジルがたっぷり入ったジェノベーゼにおすすめです」と安田さん。オレンジワインなので白ワインよりも濃さがあり、練り込まれた松の実やコクのあるチーズともバランスが取れていた。
牛肉のタリアータ✕熟成赤ワイン
メインディッシュのおすすめ肉料理は「和牛ハラミのタリアータ 半熟卵とトリュフ、パルミジャーノ和え」。和牛ハラミをレアに焼いて、薄切りに。その上にトリュフ、パルミジャーノ・レジャーノがたっぷりと掛けられている。
さらに、皿の中心には半熟卵が忍ばせてある。食べるときは、タリアータにとろりとした卵とトリュフ、パルミジャーノ・レジャーノを絡めるのがおすすめ。
4つの味が贅沢に重なり、食いしん坊の美食家たちを喜ばせる絶品の味わいだ。
タリアータにペアリングしたいのは、イタリア・アブルッツォ州の赤ワイン。「こちらのモンテプルチアーノ・ダブルッツォは果実味やタンニンがしっかりあるワインでうまみのある肉料理にも負けない赤ワインです」と安田さん。2018年のワインは飲み頃を迎えており、スパイシーさや熟成によるこなれ感も出てきていて、タリアータと合わせてもバランスのよい組み合わせだった。
安田さんの「私が恋した自然派ワイン」
安田さんが恋した自然派ワインは、きれいな色のオレンジワイン。
「ドメーヌ・グロスのトリオというオレンジワインです。3〜4年前に出会ったのですが、ちょうどボトルワイン1種類でどんな食事にも合わせやすいものがないかと探していたときに出会いました。
こちらのオレンジワインは、ピノ・グリが入っていて、赤っぽい色が交じるオレンジワインです。ほとんどの食事に合わせることができますし、お客さんに出してみると、女性を中心にかわいいという反応がありました。
実際に、こちらのワインはいろいろな要素が感じられて、どんな食事にも合わせやすくなっています。ぜひ試してみてください」
イタリアやフランスの自然派ワインを中心にラインアップ
レ・デリッツェ・デル・モンドではイタリアやフランスを中心に自然派ワインが用意されている。なかでもフランス・アルザス地方のピノ・グリやゲヴュルツトラミネールを使ったオレンジワインやロゼワインを多めにセレクト。さまざまな食事に合わせやすく、テーブルが華やかになるワインがフィーチャーされている。グラス10種類(880〜2,200円)、ボトル(6,600〜13,200円)。
色合いの濃い料理とワインがおいしさの理由
レ・デリッツェ・デル・モンドは、良質な食材を使った色合いが濃いカラフルな料理や自然派ワインが印象的だった。ちょっと量が多めで、いろんな味が食べられるところはグルマンにおすすめ。清澄白河でパリのビストロの雰囲気に浸りながら、目にもおいしい料理とワインを味わいに行こう!
※価格は税込