【食を制す者、ビジネスを制す】

神保町でのお目当ては古本とナポリタン

頻繁にアウトプットすればインプットの質は向上する

これまで仕事で多くのリーダーを取材してきたが、いつも思うのは、彼らの大半が大変な勉強家であることだ。ドラッカーの本を書き込みでページが真っ黒になるくらいまで読み込んでいる人、新聞や雑誌を読むときも、赤ペン片手に気になった記事に熱心に線を引っ張っている人、メモやノートを片時も離さない人、日記をつけて、それを何十年分もためている人……

リーダーたちは、成功する前も、成功した後も、限りある1日の時間のなかから、数時間、いや数十分でも捻出して、ずっと勉強し続けている。

そんなリーダーの勉強法とは、いわゆる大学受験の勉強法のようなものとはまったく異なっている。司法試験や公認会計士試験などの難関の資格試験の勉強法とも違う。リーダーの勉強法として特徴的なのは、様々な問題を解決するために、社内外で情報を集め、調べて整理し、アクションを起こし、足りない部分をまた補強していくことを一日ごとに優先順位を決めて取り組んでいることだ。

ここで重要なのは、インプット(=勉強)ではなくアウトプット(=アクション)を繰り返していることだ。ときおりインプットばかりしているビジネスパーソンを見かけるが、インプットを実際の仕事に役立てなければ意味がない。

実は頻繁にアウトプットすることでインプットの質は飛躍的に向上する。真剣にアウトプットしていけば、インプットしなければならないものが自然と見えてくるのだ。

古典を読んで本当に役立つ「学び」を得る

リーダーたちは、アウトプットを繰り返す中で、効率的に学び、仕事の成果に結びつけていく。そのために最も役立つインプットは読書になるが、単に読書するだけでは足りない。

例えば、経営の神様といわれる松下幸之助氏や、京セラ創業者の稲盛和夫氏の本を読むのはいい。だが、現代を生き抜くビジネスパーソンの勉強法としては、そうした本を読んで得た知識や考え方、ノウハウを日々の仕事に活かし、トライ&エラーを繰り返すことが大切なのだ。さらに言えば、ビジネス書だけでなく、多くの名経営者が言うように「古典を読む」ことも必要だ。ビジネスに携わる人間というものを深く知ろうとするなら、古典に当たらなければならない。そして、古典によって、自分の人生の幸福をも視野に入れた本当に役に立つ「学び」を得ることが大切なのだ。本には1回読んで理解できるものと、何回も読まなければ理解できないものがある。言うまでもなく、古典は何回も読まなければ理解できない。そうやって何度も読んで、自分の中で腹落ちしたときの喜びは何とも言えない。

そうした本を探すとき、私はよく神保町に行く。この前は映画で観たイギリスの名宰相ウィンストン・チャーチルに改めて興味を抱き、チャーチルの自伝『わが半生』(中公クラシックス)を購入した。チャーチルもやはり勉強家で、歴史家エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』(ちくま学芸文庫)などの古典を読み漁り、文章の書き方や演説についても、いかに古典を参考にしていたかが、改めてよくわかった。ちなみに購入額は200円。だから、神保町はやめられない。

神保町に行ったら「さぼうる2」にいこう

そんな神保町で古本を購入したときによく寄る店が、喫茶店の「さぼうる2」だ。もう20年以上通っているが、まさに神保町を象徴するような名店だ。いつもここで食べるのがナポリタンのセットだ。ケチャップたっぷりの昔ながらのナポリタンにサラダとコーヒーなどがつく。私はナポリタンがいつも大盛でやってくるその姿に感動する。そこにタバスコと粉チーズをたっぷりふりかけてフォークで口の中に運ぶと、幸福感で一杯になる。

出典:豕さん

食べても食べてもなかなか減らない。それがいい。食べ終わるとコーヒーを飲みながら、買ってきた古本をパラパラとめくり、読むというか、眺めている。ランチ時の店にはひっきりなしに客が入ってくるので、長居はできない。だから、古本を眺めて、買ってよかったと満足すると店を出る。

最近はランチ時に行列ができていてなかなか入れないが、時間をずらせばどうにかなる。ちなみに、私はナポリタン以外にハンバーグのセットを注文することもある。このハンバーグもデミグラスソースがたっぷりかかっていて、肉もやわらかくて食べやすく、ごはんが本当にすすむ。そこにアツアツのスープで一息。こちらもお薦めだ。

出典:きじとら子さん

先日行ったとき、自分の席の近くで、若いビジネスパーソンがコーヒーを飲みながら真剣に読書をしていた。集中して本を読んでいる人の姿は美しい。帰り際、本にカバーをしていなかったので、何を読んでいるのか気になって覗くと、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)だった。そう言えば、池上彰さんの『世界を変えた10冊の本』(文春文庫)でも、この本を薦めていた。私もかつてチャレンジしたことがあったが、もう何も覚えていない。私はもう一度古本の森に舞い戻ることにした。