【第4週のカレーとスパイス】本格派ダルバートが600円から味わえる! 大久保にネパール料理の注目店が誕生「ナナハウス」

10年ほど前までは全国的に見ても数えるほどしか無かった本格的ネパール料理店。数年前に大久保エリアでワンコインのダルバートがマニアの間で流行ったことをきっかけに大久保から東京、そして全国に本格的なネパール料理店も増えていきましたが、日本におけるネパール料理の聖地とも言える大久保エリアでは日々新しいお店が生まれ、淘汰が繰り返されています。

今回ご紹介する「ナナハウス」は、以前も本格的ネパール料理店があった場所の居抜きで入った新しいお店。大久保ネパール料理激戦区のメインエリアではなく、大久保駅から中野方面へ向かう途中にあるのですが、夜は煌びやかな灯りが一際目を引くお店です。

こちらには場所柄もあってか、一般層にわかりやすいナンとカレーのセットもあるのですが、やはり食べるべきは本格的なネパール料理でしょう。

というわけで、まずは「ダルバート」。豆スープとご飯のセットをメインとし、カレーなどと一緒に食べるネパール定番の定食です。こちらのお店では「◯◯カナ」と言う名称となっていて、◯◯の中にはカレーの具材が入るのですが、野菜だと600円という激安価格。その他の肉を選んでも650円です。

ここ数年の原材料費高騰により、大久保でも流石にワンコインダルバートはほとんど見かけなくなったのですが、そんな中でこの価格はかなり頑張っているなと感じます。しかも豆スープとご飯とカレーのみならず、サグ(青菜炒め)やタルカリ(カレー味のおかず)もつくのですから。

「ポークカナ」のダルバート

今回は「ポークカナ」650円を選びました。シャバッとしたテクスチャの、優しく滋味深いネパールカレーに豚バラがゴロゴロと入っています。

ダル(豆スープ)もまろやかで優しい口当たり。ご飯の上に両者をかけて混ぜて食べれば身体中に染み渡るおいしさです。

タルカリは茄子でしっとりとした食感。サグはシャキッとしていてそれぞれ火入れの具合にもこだわりを感じました。

「マトンチョエラ」

他に「マトンチョエラ」900円も。こちらはタイミングもあったのかもしれませんができたてのホカホカな状態で、作り置きタイプを提供する店も多い中で一際おいしく感じました。

「スープモモ」

「スープモモ」700円もゴマの利いたスープに大量のモモ。一人ならこれだけでお腹いっぱいになる量です。

「マサラチャイ」

どれもお得な価格で、お値段以上の満足感だったので食後に「マサラチャイ」250円を頼んでみると、これがまた絶品。淹れたて熱々でしっかりとした甘さとスパイスの香りのバランスが良く、他のネパール料理店と比べても頭一つ抜けたおいしさのチャイだと感じました。しかもこちらも良心的すぎる価格ですから。

数多くの人気ネパール料理店がひしめきあう大久保エリアにおいて、お得で味のレベルも高い隠れ家的なお店だと言えるでしょう。お店の奥には個室もあり、予約も可能。メインエリアから少し離れているからこその使い勝手の良さがある新店舗。ネパール料理好きは要チェックです。

【第5週のカレーとスパイス】人気爆発前に行っておきたい! 間借りカレーで注目を集めたシェフが待望の独立店をオープン「インド家庭料理 ammikallu(アミカル)」

2023年のカレー業界を振り返ると印象的だったのは、南インド料理界の大きな動き。特に日本における南インド料理ブームの火付け役とも言える京橋「ダバインディア」の閉店と、そこから派生した新たなお店の誕生、さらにその他の人気南インド料理店の移転や支店の開店など、多くの動きがありました。今回ご紹介する久我山の「インド家庭料理 ammikallu」(以下、アミカル)も、ダバインディアで長年働いた方が独立して開いたお店です。

ダバインディアを運営していた株式会社チョティワラ(現在も「グルガオン」「GOND」を運営)は、社内ルールとして、料理に携わるのはインド人のみで日本人はその他のサービスに従事するというポリシーがあることで知られています。アミカルのシェフは株式会社チョティワラ出身。日本人なのでダバインディアで腕を振るっていたというわけではないのですが、インド現地に何度も通って料理を習得し、ダバインディアのシェフにも料理のポイントの手解きを受けたという方。

既にこちらのお店をスタートする前から白金台や渋谷で間借りカレー店を営み、南インド料理マニア、カレーマニアの間では高評価を得ていた腕利きシェフであり、実際僕の知る中でも都内間借りカレー店の中ではトップクラスにおいしいと感じて通っていたお店が遂に独立したというわけです。

久我山駅近くにある店舗は外からの陽光もたくさん入る明るい空間。

メニューは週替わり(取材時は日替わりでしたが、現在は週替わりになりました)で、この日のメニューはエビのプリコロンブとカリフラワーのダルの2種。そのどちらも味わえ、さらにはワダとドリンクもつく「Cランチ」1,800円をいただきました。

「Cランチ」

プリコロンブはタマリンドの酸味が印象的な南インド料理。現地の家庭で日常的に食べられているものであり、インド家庭料理というお店のコンセプトに合ったカレーです。アミカルの料理はパンチのある料理が多いのですが、こちらもしっかりとスパイシー。だからこそ海老の味わいが優しく、プリッと弾けるような食感もたまりません。

一方カリフラワーのダルは優しく滋味深い味わいで、両方をポロポロとした食感が印象的なポンニライスにかけて混ぜて食べると、また新たなおいしさが生まれました。

(写真左から)カリフラワーのダル、エビのプリコロンブ

副菜はキーライマシヤル(ほうれん草の料理)とさつまいものポリヤル。どちらも素材の味を活かした仕上がり。

キーライマシヤル(写真手前)、さつまいものポリヤル(写真奥)

そして特筆すべきはワダ(南インドの甘くないドーナツ)のふわっふわな食感! ココナッツチャトニにつけて食べるも良し、カレーをつけて食べるも良しの絶品。副菜もそれぞれ死角のないおいしさです。

ココナッツチャトニ(写真左)とワダ(写真右)

食後にホットチャイも。刺激的な料理で高まったテンションを穏やかにしてくれる優しい甘み。満足度もさらに上がります。

「ホットチャイ」

やはりこちらのお店は何を食べてもおいしいです。シェフの腕の確かさを再確認しました。土日にはベジミールスを用意し、1月からはディナー営業もスタートさせ、お酒に合うドライなカレーも考えているとのことで、今後もさらに楽しみなお店。

2024年には話題となること間違いなしの新名店。人気が出すぎる前に食べに行くことをおすすめします。

※価格はすべて税込です。

撮影:カレーおじさん

文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部