フレンチから和食ベースへメニューを一新!

「カブと酒粕のスープ」

本日は「おつまみコース」6品5,500円から3品をご紹介しましょう。まずは「カブと酒粕のスープ」。ベースに青森の西田酒造の銘酒「田酒」の酒粕を使っているので甘みとうまみと華やかな香りが格別!「ねっとり感が他の酒粕とは違います。アルコールは飛んでいるのですがほのかに日本酒の香りもして、このまま食べてもおいしい。だから何もしなくてもおいしいスープになるんです」と言いますが、小泉さんの料理に何もしないなんてことがあるはずもなく……。

こんなおいしい焼き芋が脇役とは!

やはりありました。すごい変化球が! トッピングにした焼き芋がねっとりとして甘くて、これはただものではない!「芋も保湿が大切です」と、水分を与えすぎず飛ばしながら2時間蒸し焼きし、丸一日冷蔵庫で寝かせてから焼いたさつまいもはあまりにおいしく言葉を失います。また、乾燥させてパウダー状にし、程よく塩分を抜き香りを残した黒オリーブを上に散らしたことで味がグッと引き締まります。

「焼き牡蠣とブルーチーズソース」

こちらは宮崎県のどんこ専門の農家から仕入れた大きな「どんこ椎茸」の上に石臼で粗挽きにしたとうもろこしの衣をまとった焼き牡蠣をのせ、フランスのブルーチーズ「フルムダンベール」で作ったソースをたっぷりとかけた一皿。

切ってみると中には……

牡蠣と椎茸の間に閉じ込めたニラソースは小泉さんのニクイ演出。ニラをすりつぶしただけのソースはまるで収穫したてのような自然がもたらす辛みと香りを感じます。チーズに牡蠣にニラという一癖も二癖もある味わいを肉厚のどんこ椎茸がしっかりと受け止め一体感を生む。さすが、“小泉マジック”!

衣は粗挽きしたとうもろこし

食感の妙も見事です。イタリア料理の「ポレンタ」のような風味があればと閃いたのが原料となる粗挽きのとうもろこしの粉を衣にすること。このプチプチした食感の後からとろんとやわらかい牡蠣が現れ、最後にプリッとした椎茸で口中を楽しませてくれます。

何でもない食材を絶品料理にする“小泉マジック”

「佐土原茄子の鹿肉巻き」

こちらは素揚げした佐土原茄子の上に自家製のふきのとう醤油漬けをのせ、ゆっくり火入れして焼き目をつけた鹿のロースで巻いた一皿。同じく自家製の燻製梅で味を付けた鰹出汁の葛餡の上に鹿肉巻きをのせ柚子の皮を削りかけています。

食感はとろとろ

口にすると鹿肉はとてつもなくやわらかく、茄子もとろけて一瞬にして消えてしまいますが、葛餡の出汁の優しい味わいとくっきりとした梅の味が余韻となって五臓六腑に染み渡ります。さらにハーブとふきのとうがガッチリ手を組み、えもいわれぬ香りで包み込むのです。これはもはやおつまみのレベルを遥かに超えたメインと言っても過言ではない逸品です。

ボトルは6,000円〜、上質なナチュラルワインがそろう

ワインは引き続きナチュールが中心。おいしくて葡萄の種類が明確なものに厳選しています。また料理が和食ベースになったので新たに日本酒もラインアップ。誰もが知っている銘柄から個性的なものまで常時10種類以上を用意し、グラス650円〜とリーズナブル。

写真左:兄の洋さん、右:弟の裕さん

どこにでもある食材の組み合わせや味の重ね方、調理法でこんなにもおいしい料理に変えてしまうのは小泉さんのなせる技。センスは天才肌ですが、それを支えているのはあらゆるジャンルでの経験値と努力です。基本はアラカルトですが、今回紹介した「おつまみコース」6品5,500円や「おまかせコース」9品8,800円、「土鍋ごはんコース」9品11,000円も用意しています。来年からは裕さんの腕を活かした「焼鳥丼」や炭焼き料理も登場する予定。またランチも始めるとのことで、ますます賑わうことに違いありません。

※価格はすべて税込

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 写真:松園多聞