【青森駅から徒歩で行ける至高のグルメ】

Vol. 1「天じゅん」のあぶり天丼とローストビーフ丼

日本全国のグルメ情報を網羅する食べログが有するメディア、食べログマガジン。だがしかし、東京のグルメ情報に少々偏りすぎでは? そんな疑問を編集部にぶつけてみたところ、「それでは我妻さん、地方グルメを取材してきてください」と仰せつかることに。

 

今回、筆者が向かった先は青森県。いろいろと聞き込みをしてみると、まだまだまだまだ……青森には知られていない超絶に旨いものがたくさんあるというではないか。

 

中でも、青森市にはJR青森駅から徒歩圏内で行くことができるエリアに最高に旨いモノが集っているという。車を使わずにアクセスできるなんて、マジっすか!? 地方都市において、中心駅から歩いて最高の食にありつける……言うなれば“至高の徒歩グルメ”を知っておけばこんなに心強いことはないはず!

 

第一弾として紹介するのは、あぶり天丼の「天じゅん」。

上野発の夜行列車を降りたときは雪の中だったかもしれないが、現在の青森駅は降りるとすぐに旨いものだらけなのだ!

青森駅前で食べる世界に一つだけの丼

青森駅から徒歩1分。駅前広場に位置する天丼専門店「天じゅん」は、青森に一つだけ、日本に一つだけという“あぶり天丼”を提供するお店だ。

 

日本料理を修行してきた若き料理人である店主・対馬さんが営む「天じゅん」は、可能な限り県産の食材を使うことを心がけ、陸奥湾産のホタテやタラの白子、三陸産のアナゴなどを使った極上の天丼をリーズナブルに楽しむことができる。

もともと青森市内には天ぷら専門店が多くなく、某有名天丼チェーン店の進出もいまだにないという背景がある。そこで、青森の老舗料亭で天ぷらを担当していた対馬さんは、天丼専門店を開業する決意にいたったという。

 

当然ながら味は本格的だ。なにより地元青森の超新鮮な魚介類をふんだんに使った天丼だというのに、写真の真白子とエビの天丼セット(ミニうどん付)は1,200円という破格っぷり。「元気玉」(50円)なる生卵黄をかけると――。

この通りである。卵衣装に身を包んだ白子を、「おやまぁ~」となでたくなってくる。なんとフォトジェニックな白子だろうか。筆者には孫がいないので、孫の七五三の着物写真の代わりに、この白子天丼の写真を居間に飾ろうと思う。なんとまぁ~可愛いらしい姿よ。

 

これだけでも十分満足なのだが、目玉は「あぶり天丼」だという。
一体、あぶりとはどういうことか?

 

老舗料亭時代、まかないとして兄弟弟子に人気のあった“あぶり”の天丼。日本料理の正道ではないことは、対馬さん本人が一番よく分かっている。しかし、自らのお店を開店するにあたって、対馬さんは料理人たちから人気の高かった「あぶり天丼」を再研究し、お店の目玉としてデビューさせたのだ。

試しに天丼単品750円(安い!!)を炙ってもらうことに。最初から炙ってもらうこともできるが、途中から炙ってもらうこともできる。こんな贅沢な天丼の楽しみ方があるだろうか?

 

ちょ、待てよ!

 

「天丼を炙るなんて邪道でしょ! ちょ、待てよ!」と異を唱えたい方、その気持ちは分かる。たしかに天丼はそのまま食べても美味しい。しかし、その考え、トランキーロ(=あっせんなよ!)である。焦らないでほしい。

 

「天じゅん」のタレは、コンブとカツオブシの出汁を中心に、サバ、イワシ、アジなどの厚削りでとった出汁を加え、濃厚な出汁の旨味で砂糖の量を減らしている点が特徴だ。通常、天丼のタレは甘みが強いが、このお店のタレはキリっとした濃い味に、確かなコンブや魚の風味を感じることができる特製品である。

 

それを、ア☆ブ☆ルのだ。

 あぶりゼロ円! プライスレス!

ファイヤー!

炙ることでタレの下地となっている出汁の風味が引き立ち、天丼にはない香ばしい風味が鼻を抜けていく……たまりません!

 

サクサクの天丼を食べるたびに、ぎゅっとタレのうま味が引き締まるような感覚。キレがあって濃いめのタレだからこそ「あぶり天丼」は可能となる。このタレがあるからこそ、炙っても美味しくいただけるというわけだ。

 

正道ではないだろうが、決して邪道でもない。新しい天丼のスタイルが、青森駅前にはあるのだ。

 

しかも、このあぶり。途中からあぶりをお願いすれば、再加熱よろしく天ぷらがホクホクに蘇る。どんぶり系の避けられない未来である「徐々に冷えてしまう問題」すら解決してしまうのだから、一石二鳥どころではない。

 

さらに! 「天じゅん」ではタレを作る際の出汁を転用して、うどんの出汁を作っている。天丼に目を奪われがちだが、本格的な出汁から作られるうどんも是非一緒に楽しんでほしい。うどんの汁の風味が、ものすごく優しいのにしっかりして力強い……映画のときのジャイアンみたいだ!

最後に紹介したいのが、「ローストビーフ丼」(単品1,000円、ミニうどん付1,100円)である。もう写真からして破壊力がすさまじい。「天じゅん」のもう一人の主役と言えるこちらの逸品は、作れるときと作れないときがあるので、来訪するのであれば天じゅんのフェイスブックなどで当日の有無を判断してほしい。

 

老舗料亭で研鑽を積んだ対馬さんだからこその“和テイストのローストビーフ丼”は、「納得できるしっかりした肉が手に入る時しか作れない」からこその美味しさがある。一級の肉のうま味や甘みを和風のタレで引き立て、大根おろしやカイワレとともに食す。

洋風のローストビーフであればややもすれば味がしつこくなりがちだが、こちらのローストビーフはさっぱり食べることができる。清涼感すら覚えるほどで、その中に肉汁(と肉のうま味)がほとばしる。辛口の日本酒や白ワインと合わせたら、さぞ美味しいだろう。

 

あぶり天丼とローストビーフ丼という「なんだ、と…心臓が二つある、だと」的なチートなキャラ設定のような天丼専門店が、驚くことに青森駅から徒歩1分の距離に存在する。
ふらっと絶品を食べに行けてしまうのだ。

 

 

しかし、青森駅からすぐ行ける“至高の徒歩グルメ”はこれでは終わらない!

次回は、青森のローカルモーニングタイムを満喫できる食を紹介する。

 

 

取材・文:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)