〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はスイーツコーディネーターの下井美奈子さんが大ファンになったという日本料理店をご紹介。
教えてくれる人
下井美奈子
多数のメディアで洋菓子情報を紹介する他、講師、商品開発、レシピ提供を行うスイーツコーディネーター。実家の母が“鎌倉下井お菓子教室”の講師で、子どもの頃からスイーツの食べ歩きや菓子製作を行う。一般企業退職後、渡仏しパリRitz Escoffierで料理・菓子のディプロム取得。渡仏中、ル・コルドンブルー、「ルノートル」で、フランス家庭菓子、イギリス家庭菓子など学ぶ。2年間のロサンゼルス在住中、各国の製菓料理を学ぶ。生活総合情報サイト「All About」では立ち上げ当初からスイーツガイドを担当。日本紅茶協会認定ティーインストラクター。
ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜にある都会の喧騒を忘れさせてくれる日本料理店
みなとみらい駅から徒歩圏にあるザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜は、ハワイにあるザ・カハラ・ホテル&リゾートと同じホスピタリティを持つ最高ランクのラグジュアリーホテル。その3階に2020年9月「日本料理 濱」はオープンした。
下井さん
最初のきっかけは宿泊した際にいただいた朝食がとてもおいしくて感動したことです。そして、和のアフタヌーンティー「濱茶膳」は、毎シーズンいただくほど大ファンです。
“「現地の人々の生活、文化、習慣を尊重する心」を携えて土地と共栄していくべき”というホテルのホームページの紹介文に記載されている通り、「日本料理 濱」も地場産の食材をメインに使い、随所に横浜らしさを料理の中に盛り込んでいるのが特徴的である。食べログでの点数は3.19だが、外資系ホテルの中にある日本料理なので、宿泊以外の利用客には少々分かりにくい立地が理由かもしれない。
※点数は2022年9月時点のものです。
室内は全16席。すべて個室席となっており、どの席からも水庭の風景を見ることができる設計となっている。6名以上であれば10名用の個室席も利用が可能だ。
下井さん
プライベートも守られ、このご時世、全席個室というのも魅力です(しかも個室料金は無料)。また窓の外にひろがる水庭は、海風が吹くと共に波紋が広がり水辺にいるようで癒やされます。
料理長の青木氏は数々の日本料理の名店で長年腕をふるってきた人物。過去に旅館などで料理長としての経歴もある、腕利きの料理人だ。
「濱茶膳はコロナ禍で海外など遠方へ自由に行けないもどかしさの代わりに、茶事(食事)を食べて楽しんでもらおうと考案してメニュー化しました」と話す青木氏。シーズンごとに変わる「濱茶膳」だが、常に利用客の意見やアドバイスを取り入れて改善しているそう。一流のおもてなしの志があってこそできる気配りだ。
ランチタイムで提供される和のアフタヌーンティー「濱茶膳」の魅力とは
和のアフタヌーンティーと、うたうだけあって和菓子が引き立つように山の幸と海の幸をバランスよく取り入れて、最後の一口まで食材の魅力を味わえるコースとなっている。
コース構成は、おもてなし、変わりにぎり、八寸、針庭、島台、抹茶(季節によって若干変更あり)。コースの内容は春夏秋冬でテーマが違い、四季折々で楽しめるのでシーズンごとに訪れる人も多いそう。
下井さん
コース仕立てで提供されるので、温かいもの、冷たいものを最良の状態で味わえます。
写真奥にある八寸は、横浜で歴史のある三溪園をイメージした箱庭と赤レンガ、観覧車など横浜にゆかりのあるものをイメージして創作している。
写真手前の寿司は、変わりにぎり。この日は左から鯵、イサキ、アオリイカというラインアップで、どれも近海でとれた鮮度抜群のもの。醤油をつけなくても、各々の魚に合うようにタレや薬味がトッピングされているのでそのまま食べられる。このトッピングが絶妙な味付けで魚の魅力を十二分に引き出しているのだ。
下井さん
目にも華やかで、日本料理ならではの新鮮なおいしさのお寿司がセイボリーとしていただけるなんて、とっても贅沢。和をベースにしたスイーツたちも、すっきりとした後味のものばかりで、甘いものが苦手な方こそ、おすすめしたいアフタヌーンティーです。
取材時は初秋だったので、針庭のテーマは“秋の落ち葉拾い”。サツマイモのチップを落ち葉に見立て、その中から旬の食べ物を探すような盛り付けは、遊び心も満載だ。
コースのおもてなしで出される一番出汁は、蔵囲昆布と枯れ節でとった、こだわりのひと品。昆布は3〜5年ほど寝かせた旨みが濃く口当たりがまろやかな福井県産の老舗のものを厳選している。枯れ節は枕崎産のカビ付けを3回施した、鰹の力強い風味とすっきりとした味わいのものを使用。この出汁はそれぞれの食材の持つ旨みと、両者が調和された奥深い出汁感を堪能できる。
下井さん
なんと、最初に「一番出汁」が提供されるのですが、スイーツの合間にこの一番出汁を少しずついただくと、口の中がリセットされます。時間とともに変化する出汁の旨みも楽しめます。