江戸前寿司とのペアリングはおまかせすれば間違いなし

フードライターの森脇さんが絶賛する鮨 からくを訪れたならば、寿司とワインの味わいをたっぷり堪能したい。

 

森脇さん

鮨 からくの素晴らしいところは、手間を惜しまずに江戸前の仕事をきちんとしているところ。そしてご主人がワインに造詣が深く、ワインリストもお見事! 江戸前寿司とのペアリングコースもありますよ。

寿司にワインを合わせるにも、一体どうやって頼んだらいいのかわからない……。それならば店主・戸川さんがおすすめのワインを提案してくれるコースをオーダーしよう。寿司にもワインにも旬があり、その時々で最もおいしいマリアージュを教えてもらえる。

今回はコースの中でも特におすすめの寿司と料理を森脇さんがピックアップ。そこに戸川さんのおすすめするワインを合わせていただいた。

鯛の昆布じめ×たっぷり熟成したシャンパーニュ

独特の食感に昆布のミネラルの旨味がギュッと凝縮。

鯛を昆布で挟み、一昼夜寝かせた昆布じめ。フレッシュな鯛と比較すると、水分が抜けて、昆布の風味を吸収している分、噛めば噛むほど旨味が溢れてくる味わい深い一品。合わせるのはシャンパーニュだ。

シャンパーニュの熟成感と昆布から引き出された鯛のうまみが、おいしさを増幅する。

「鯛の昆布じめにはアンリオ ブリュット スーヴェラン。白ワインだと、生臭くなることが多いのですが、36カ月以上じっくりと瓶で寝かせて熟成の進んだこのシャンパンだと生臭さもなくなり、昆布でしめた鯛と合わせて、お口の中でさらに旨味が広がっていきますよ」と、戸川さん。

鮪のお醤油漬け×軽やかなピノ・ノワール種の赤ワイン

鮪がもっとおいしくなる理由とは?

鮪は少量の煮きり醤油に12時間ほど漬け込むのが鮨 からくの流儀。

 

森脇さん

最近流行りのさっとくぐらすだけの即席漬けではなく、半日寝かせた昔ながらのヅケが好きです。ややねっとりした赤身の熟成感がとてもいいですね。

合わせるのは赤ワイン用のブドウ品種であるピノ・ノワールを使った香り豊かなワイン、ボーヌ  デュ シャトー プルミエ クリュ。まずはピノ・ノワールを一口。特徴的な上品な味わいが印象に残る。

戸川さんはこう語る。「そこで鮪のお醤油漬けを食べて、再びピノ・ノワールを口にするとよく合うのですよ。生の鮪のままだと鮪の生臭みが前面に出てしまって相性が悪い。でも醤油、みりん、酒、だしを調合した煮きり醤油に漬けた鮪だと、生臭みがマスキングされて、煮きり醤油の塩味と旨味にピノ・ノワールが寄りそってくれます」

タコの桜煮×ふくよかな味わい広がるメルロー種の赤ワイン

タコの桜煮も赤ワインにマッチ。でもピノ・ノワールとは違う赤ワインをどうぞ。

鮨 からくではタコを4時間ほどかけて煮込む。ほろほろと口の中でほどけるような甘じょっぱいタコに頬もとろける。

醤油、酒、みりん、砂糖といった調味料を合わせる和の味わいには総じて赤ワインがよく合う。「和食×赤ワイン」の相性のよさを、戸川さんは早くから発見し、研究を重ねていた。

「タコの桜煮にはしっかりとした味わいに仕上げた赤ワインのスターレーンがおすすめ。このワインはメルローというぶどう品種を使っています。同じ赤ワインでもピノ・ノワール種の赤ワインと比べると、タンニンの渋みがほどよく利いて、ストレートに風味がくるでしょう? だからじっくり煮込んで味が染みわたったタコと一緒に食べると相性抜群です」

和食は醤油の配合の違いによって、あっさりとした煮物に仕上げたり、しっかり煮詰めたすき焼きになったりと味わいの濃淡が変化する。だからこそ、いろいろなワインを合わせる楽しみも広がるのだと戸川さんは教えてくれた。

からく丼×さわやかで飲みやすい口当たりのロゼワイン

お客さんの熱い要望に応えて復活したというからく丼は2,970円。ランチタイムに予約制で受付中。

ランチタイムにはコースのほか、丼もお目見えする。

 

森脇さん

コストパフォーマンスの良いお得な一品で、鮨 からくの魅力を手軽に味わえますよ。

からく丼は鮪のお醤油漬けに加え、濃厚な味わいが特徴の鯛のごま醤油漬け、ふっくらと柔らかな江戸前煮穴子の3種類が贅沢に堪能できる。ただいま数量限定で提供中。(※2022年8月時点)

「いろいろな味を一度に食べられるからく丼なら、ロゼでどうぞ」と戸川さん。この日はシラーズ種を使ったスモール フォレスト ロゼをすすめてくれた。「ロゼなら赤と白の両方のいいところを持ち合わせていますから、何を合わせてもちょうどいい一杯ですよ」とのこと。

江戸前の仕事があってこそワインとともにもっとおいしくなる

昆布でしめた鯛はフレッシュな鯛よりも濃厚な味わい。見た目も変わる。

初めて来たお客さんには江戸前寿司と一般的な寿司の食べ比べをさせてくれるなど、どんなお客さんでもあたたかく迎え入れる鮨 からく。そして昔ながらの江戸前の仕事になぜワインが合うのか。どうしてペアリングが成立するのか。江戸前寿司の味わいの科学やワインの知識を店主の戸川さんはやさしく教えてくれる。

「ソムリエとしてワインの香りや味の特徴を分析してお伝えするのも仕事ですが、マニュアルをそのまま述べているだけに聞こえる時もあるでしょう。でもね、私は職人ですから、とにかく食べて飲んで合うかどうかが大事。実際にお客様がどう感じるかを一番大切にしています」

難しい知識は一切不要。江戸前寿司とワインが織りなす、驚くべき美食体験に納得せずにはいられない。

※価格は税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください

撮影:岡村智明

文:宇野美香子(フリート)