お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない!と言っても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第33回は、様々な文学作品の舞台としても知られる歴史ある街、東京・神楽坂のスイーツスポットを紹介します。
【猫井登のスイーツ探訪33・前編】神楽坂のスイーツショップを巡る
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食べログマガジン編集部
今日は、東京メトロ東西線「神楽坂駅」1b出口からスタートですが、早速すぐ隣に神社があるのが神楽坂っぽいですね。
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猫井先生
赤城神社ですね。神社は後にして、今回はまず、行列の店の方に急ぎましょう! 1b出口を出て左へ、赤城神社の前の道を右へ。「カド」という店の角を左へ曲がり、道なりに歩いたら、相生坂を下ります。
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食べログマガジン編集部
それにしても、神楽坂は本当に坂が多いですね!
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猫井先生
先ほどの神楽坂駅の出口周辺が海抜25mぐらいで、坂を下ると海抜5mぐらいなので、結構急な坂が多いですね。夏目漱石や永井荷風などの文学作品に登場する坂もあるので、ぶらぶらと坂を散歩するのも面白いかもしれません。さぁ、着きましたよ!
【1軒目】「パン・デ・フィロゾフ」
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食べログマガジン編集部
お店の外にもパンの香りがしますが……朝からすごい行列ですね! これは結構並ばないといけませんね。
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猫井先生
土日は特にすごいですね。ただ結構回転は早いので、15分~20分位で店内に入れると思いますよ。
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食べログマガジン編集部
こちらは、どんなパン屋さんなんですか?
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猫井先生
シェフの榎本哲氏は専門学校卒業後、「ポンパドウル」「パティスリー・ペルティエ」で修行。特にペルティエでは、志賀勝栄シェフの下で研鑽を積み、「ドミニク・サブロン」のシェフ・ブーランジェを務められました。その後「俺のベーカリー&カフェ」の商品開発やアドバイザー業務にも携わり、2017年にオープンしたのがこちらのお店です。
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食べログマガジン編集部
お店の名前は、どういう意味なんですか?
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猫井先生
「Philosophes(フィロゾフ)」は、フランス語で「哲学者」の意味で、「哲学者のパン」という店名ですね。榎本哲氏の「哲」にちなんでいます。お店の看板も姓の「榎」の葉がモチーフになっていますね。
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食べログマガジン編集部
哲学者のパン……なんだか複雑な味わいがしそうですが、どんなタイプのパン屋さんなんですか?
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猫井先生
既成概念にとらわれず、シェフがおいしいと思うパンを作るというのがコンセプトで、ハード系が中心ですが、「クロワッサン」や「パン・オ・ショコラ」も大人気で、週末には200個以上も売れるそうです。クロワッサンには、フランス産の発酵バター「レスキュール」がたっぷりと使われています。レスキュールは、フランスで初めてA.O.C.を取得したバターで、100年以上の歴史を持っています。
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食べログマガジン編集部
A.O.C.って何ですか?
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猫井先生
フランスには、原材料の産地及び伝統製法の厳しい基準を満たした製品に与えられる品質保証があります。これがA.O.C.(Appellation d’Origine Controlee=アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)です。原産地統制呼称と訳されていますね。
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食べログマガジン編集部
なるほど。そんなバターを使った「クロワッサン」はどんなお味なんですか?
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猫井先生
クロワッサンというのは、パイ生地と同様に折込生地ですから、層をなしていて、一般的にはエアリー感というか、はらはらとした感じが強いわけです。それに比べてこちらの生地は、弾力とモッチリ感があって、パンを食べていると実感させてくれます。生地を噛みしめていると発酵バターの香りが口中に広がりますよ。
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食べログマガジン編集部
クロワッサンは好きな人が多いパンですしこれはマストで買いですね! そうなると同じくクロワッサン生地を使った「パン・オ・ショコラ」も気になるところです。
![辣油は飲み物](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/04/640x640_rect_90088c452039f1d9f07a2046ebbed6bf.jpg)
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猫井先生
形状が異なるせいか、クロワッサンよりも弾力が強いように感じますね。中に入っているチョコレートにもこだわっていて、フランス産のオーガニックチョコレートが使用されています。やや酸味がある味わいが生地によく合っています。
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食べログマガジン編集部
あと、変わった形の「バトン・シュクレ」というパンも気になります。
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猫井先生
こちらはクロワッサン生地をまとめて練って、発酵させずに焼いている商品なので、パイのようにサクサクした食感です。シナモンときび糖をまぶしてあり、おやつ感覚でいただけます。
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食べログマガジン編集部
甘いパンを食べると、次にハード系も食べたくなりますね。おすすめはありますか?
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猫井先生
まずバゲット類ですと、一番人気の「アルファ・バゲット」です。「湯だね法」という、ふつうは食パンに使われる手法で作られているので、水分量が多く、皮も薄く、軟らかいバゲットです。もちもちとした食感で甘さが感じられる生地となっています。バゲットの生地はサックリと仕上げられることが多いので、シェフの既成概念にとらわれない考え方が反映されたパンのひとつですね。「アルファ」という名は、湯だねによってデンプンをα化させていることにちなんでいます。
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食べログマガジン編集部
哲学っぽさを感じるパンですね。他にもありますか?
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猫井先生
木の枝のような形の「ポミエ(りんごの木の意)」も面白いですね。こちらのパンは、りんごの酵母で作られていて、ナッツとともにドライのりんごを生姜と白ワインと一緒に煮たものが入っています。ブルーチーズと相性が良いパンですね。あとは「ロデヴ・ドゥ・フレーズ」もいいですね。ロデヴ生地にオーガニックドライストロベリー、グリーンレーズン、ピーカンナッツを入れたものです。
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食べログマガジン編集部
「ロデヴ生地」って初耳です。
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猫井先生
一言でいうと「高加水のハードパン」といったところでしょうか。水分量が多いので、外側はカリッとしていますが、中は気泡が多く、もちもちとした食感で日本人好みのパンとも言われていますね。粉の味わいがしっかりと感じられます。水分量が多いので、少し時間を置いても硬くなりにくいのが特徴ですね。
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食べログマガジン編集部
やはり日本人はもちもち食感が好きな人が多いですよね。もちもち食感と言えば、食パン系もあるんですか?
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猫井先生
一般の食パンとはかなり異なりますが「ASAMA」でしょうか。こちらは、群馬産の小麦粉を使っていて、生地が大変軟らかく、ふつうのパン型では焼けないため木型に入れてそのまま焼成しています。食感としては、しっとり、ねっとりという感じですね。結構甘みもあるので、私はそのまま何もつけずに食べるのが好きですね。余談ですが、こちらの木型も何気にフランス産で(笑)、贈り物にしてもオシャレですよ!
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