甘いパンも惣菜パンも選り取りみどり

左から時計回りに「きこりの竹炭ショコラ」(319円)、「川崎産じゃがいも きのこ 柚子 自家製ラグーソースのアッシェパルマンティエ」(528円)、「豆乳みるくパン」(86円)、「みよしのあんバタークロワッサン」(378円)

こちらのパンは川崎市高津区の竹炭工場の竹炭や、川崎市中原区の豆腐店「越路屋」の豆乳など、すべて出合った食材に合わせて作られます。まずは食材ありき! ベーカリー事業部の責任者である鈴木孝貴さんがその素材を食べてみてどんなパンにするかを考えるそう。

 

高橋綾子さん

見た目と全然違ったのが「竹炭ショコラ」です。触った感じでもっとフワッとしたパンかと思ったら「Lenブレッド」と同じ高加水なので食感がもっちりと力強い。味はココアとチョコレートチップをふんだんに使っているのでめちゃくちゃリッチ。焼くと香りが高くなり、フォンダンショコラみたいに溶けたチョコレートがとろりと流れておいしさが倍増します!

クロワッサンは砂糖ではなく川崎産の蜂蜜を使っています

「みよしのあんバタークロワッサン」は地元で大人気の高津区の和菓子店「みよしの」のあんこから発想しています。「みよしの」のあんこは上品な甘さなので、組み合わせたのはコクと香りが強い無塩発酵バター。さらに川崎産の塩でパンチを利かせます。またあんことバターはテクスチャーが滑らかなので、バターの折り込み数を減らしてザクザクとした食感に仕上げたクロワッサンに挟んでいるのだそう。

 

高橋綾子さん

「あんバタークロワッサン」は食べると「甘い」「しょっぱい」がはっきり分かれて交互に感じられるところがおもしろい。クロワッサンっていかにサクサクでパリパリかが求められますが、こちらはもっとザクッ、バリッとしていて大胆。味も食感も強弱のつけ方にセンスを感じます。

二子新地店は客層に合わせて「食事パン」が多め

鈴木さんは地元の食材を使うだけではありません。ラグーソースやマヨネーズなどの調味料もできるだけ添加物を入れたくないと、市販のものではなく手作りしています。さらにうまみには塩昆布、甘味にはきび糖、甜菜糖や蜂蜜と、ほぼ天然のもので味つけします。「アッシェパルマンティエ」もじゃがいもを茹でてマッシュポテトを作るところから始めるそう。

そんなことができるのは鈴木さんがレストランで修業した料理人でもあるから。「パンというより“料理”と捉えているので、どんなシーンで食べるのかを想像して作っています。自分が“絶対おいしい!”と思えるまでとことん追求します」と、隠し味にもこだわります。

ファンが多い「プリン」

リピーター率ダントツ1位なのが「白いうみたてたまごプリン」です。一般的なレシピとは異なり、卵白と生クリーム、少量の砂糖とバニラビーンズで作ったコッテリと濃厚なプリンを苦味が利いたカラメルで引き締めた大人のスイーツです。

「白いうみたてたまごプリン」(486円)

「高津区・河崎養鶏園の『うみたてたまご』のために考えました。お菓子の場合、“卵白は泡を作るため、味わいは黄身で”というのが普通なのですが、この卵は質が良すぎるので卵白だけでコクも味わいも十分なのです。私は素材を活かす配合とレシピを考えるだけ。例えば混ぜる時間を間違えただけで味が変わってしまいます。“お菓子は化学”なんです」と言うのはパティシエの大川雅恵さん。

 

高橋綾子さん

パンナコッタのようにしっかりとしたテクスチャーなのに舌触りはシルクのようにきめが細かくなめらか。甘さ控えめとは言えこれだけ濃密なプリン生地をカラメルがスパッと切ってくれるので後味スッキリ。だからたっぷりサイズだけど2〜3個はいけますね。本当に感動的なプリンです。でも残念なことに河崎養鶏園さんが廃業され、このプリンはもう食べられません。今は同じ高津区の森正養鶏場の「モリモリ卵」を使って再登場しています。きっとおいしいに違いない!

これからも「地元第一」のベーカリーとして

地元を愛する思いが詰まった店名

店名は「Local」「Eat」「Neighborhood」、それぞれの頭文字を取ったのだそう。「Len」にとって絶対に欠かすことのできない大切な3つをカタチにしたパンやスイーツは永遠に愛され続けていくことでしょう。

※価格は税込です。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

取材・文:高橋綾子
撮影:大谷次郎