目次
価格が高騰し続けて、なかなか手を出せない存在になりつつある松葉ガニ。だからこそ特別なご馳走として、1匹丸ごと贅沢に味わってみたい! そんな願いを叶えるため、松葉ガニの産地として知られる島根県内でも、比較的リーズナブルに松葉ガニを味わえると評判の「かに小屋」へと足を運んだ。
ズワイガニのなかでも別格にうまいのが成熟した雄。ぎっしりと身が詰まり、旨みも非常に上品だ。代表的なブランドとして知られるのが、冬の味覚の王様として知られる山陰地方の松葉ガニである。
最高級のブランド「松葉ガニ」を求めて島根県松江市へ
山陰沖でズワイガニ漁が解禁されるのは、例年11月から2月の終わり頃まで。2019年には初競りでの取り引き最高額が1匹500万円と過去最高を記録し、今シーズンも1匹200万円を超えるほど価格高騰が続く。「競りで落札された最も高額なカニ」としてギネス世界記録に認定されたほどだ。庶民には高嶺の花となりつつあるため「どうすれば手が届くのか」真剣に考えなければいけない。
まずは時期だ。漁の解禁期間は旬の時期と重なっており、松葉ガニの味には大きな変化はない。とはいえ、解禁直後や年末年始は需要の増加から価格が上がりやすい傾向にある。価格が落ち着きはじめるのは例年1月中旬頃から、つまり今が狙い目なのだ。
漁港らしさで気分高まる。松葉ガニ以外も魅力的な「かに小屋」
場所は島根県松江市にある「かに小屋」が良いだろう。ここは地元の観光業を盛り上げるため、若手経営者たちが立ち上げた海鮮屋台小屋。JR松江駅から徒歩15分ほどにある松江港管理所にて、2014年から松葉ガニ漁の期間だけ限定で営業している。「観光業のために」と採算を度外視しているだけあり、地元のスーパーなどで売られている松葉ガニよりも割安と評判だ。
小屋内のシステムは魚市場で買い物をするような、臨場感のあるキャッシュ・オン・デリバリー方式。だるまストーブで温まりながら、カセットコンロを使いバーベキュー感覚で多彩な海の幸を堪能できる。家族や友人と賑やかに過ごすのも良いが、カウンタースペースがあるのでお一人様でも安心だ。
メインディッシュである松葉がにの前に、地元の名産品であるのどぐろも味わっておきたい。「白身のトロ」「一年中、いつでも旬」と言われるほど脂がのっている。一夜干しを軽く炙れば、ただでさえ力強い旨みがより引き立つ。
旨みが強い猪肉のフランクフルトは、粗挽きでワイルドな食感。松江市内のハンター・森脇さんが仕留め、そのまま本人が加工しているという。自然が豊かな地域だけあり、海の幸だけでなく山の幸も味わい深い。
最高の状態で食べたい松葉ガニ。おすすめの食べ方は?
「かに小屋」の松葉ガニは網からはみ出るほど大ぶりだ。そのまま焼くのは難しく、まずはハサミで足を切り落とす。甲羅をはぎ取り、エラをはずすなど手順はあるが、写真付きの分かりやすい説明書きがあるので迷うこともない。鮮度が最もよい状態で浜茹でされているため、軽く炙るだけでベストな食べ頃だ。
ぎっしりと身が詰まった足は瑞々しく、上品な甘みを感じる。心地よい弾力があり、この部位だけでも満足度は高い。胴体は特に身が大きいため食べやすく、適度に味噌が混じり合うため、味の変化も楽しめる。
甲羅に詰まった濃厚な味噌は、地元の酒と味わいたい。「かに小屋」には國暉酒造、米田酒造、李白酒造と、松江市内にある3軒の蔵元の酒が揃う。
お隣の境港市にある千代むすび酒造の「蟹に合う酒」も面白い。かにとの相性を追求するため味覚センサー分析などを行い、約1年半も試行錯誤を続けて完成した酒だ。 口当たりは柔らかく、すっきりとしており、松葉がにの上品な甘さとも釣り合いが取れている。味噌を食べきったら甲羅に酒を入れ、ぜひ甲羅酒としても楽しんでいただきたい。
冬の松江は松葉ガニだけじゃない。観光も見どころが満載
「かに小屋」が「できる限りリーズナブルに」と松葉ガニを提供しているのは、地元の観光を盛り上げるため。その味を堪能するならば、松江市内の名所も満喫するのが道理だろう。古代出雲の中心地として神話の時代から栄え続けている地域だけに見どころには事欠かない。
江戸時代以前に建てられた天守閣が現存する全国12城のなかでも「正統派」として知られる国宝、松江城。現存天守の総面積では、姫路城に続き全国2位と大きさも申し分ない。黒を基調とした威厳のある佇まいは、築城された400年以上前の姿のまま。白く雪化粧が施された冬だけの立ち姿も評判だ。
歴史ある温泉のひとつ玉造温泉。733年に完成した出雲国風土記に「一度入ると美しくなり、再び入ると万病が治る」と記されており、古代から優れた美肌効果が注目されていたことがわかる。勾玉の生産地としても栄えていたのが名前の由来。温泉街の奥には温泉の神や勾玉の神が祀られる玉作湯神社もある。
国内最大級という全天候型の室内ガーデン。松江フォーゲルパークには冬でも1万株以上の花々が咲き誇る。動かない鳥として知られるハシビロコウにしては活動的と評判のフドウくんをはじめ、可愛らしい衣装を着て歩き回るペンギンたちなど、約400羽の珍しい鳥も暮らす。まさに地上の楽園だ。
美保神社は全国3,000以上という、えびす神を祀る社の総本宮。商売繁昌以外にも、海上安全や大漁満足のご利益で知られる。松葉ガニをおいしく食べるにあたっても参拝するのに適した神社だろう。参道には漁港集落の街並みを色濃く残す青石畳通りがあるほか、サザエやイカといった美保関港名物の魚介が味わえる食事処も多い。
松江市では、2月上旬から下旬まで全域で「まつえ食まつり」も開催予定。各種イベントのほか、さまざまな飲食店で期間限定メニューが登場する。松葉がに以外にも、地元の名産品を活かした料理と出合えるはず。「かに小屋」でリーズナブルに松葉ガニを楽しんだ分だけ、ほかの食や観光につぎ込んでも良いだろう。
※価格はすべて税込