シンプルながら味わいは複雑。長期熟成の味噌だからできる創作料理
「アボカドチーズ焼き ~こうじ味噌和え~ 」を食べて印象的だったのが、豊かな麹の香り。使用されている味噌には、通常の1.5倍という米麹が使用されているだけあり、炙り焼いたチーズにも負けない芳醇さです。
原材料は塩を除けば、愛知県産の大豆と米だけ。発酵を止める加熱処理なども行っておらず、木桶から出したての生のものが蔵元から届きます。手作業で丁寧に梱包されているため、素材の粒感も損なわれていません。
ともに発酵食品である味噌とチーズもベストマッチ。食物繊維がゴボウ並みに含まれているアボカドと合わせれば、おいしいだけでなく腸活にも最適です。
味噌、チーズ、野菜を同時に楽しむのなら「味噌漬けモッツァレラのカプレーゼ」もおすすめ。味噌に丸2日以上も漬け込んだモッツァレラは弾力の心地よさも見事ながら、なんと言っても複雑なコクに驚かされます。その味わいの根幹となっているのが、桝塚味噌が誇る「とろみそ」です。
そもそも桝塚味噌は、八丁味噌の産地である愛知県岡崎市八帖町に隣接した、桝塚西町にある蔵元。契約栽培による愛知産の大豆と鳴門の海塩だけで仕込む、八丁味噌(豆味噌)が代表的な商品です。
一般的な味噌は温度調整により発酵を促進して短期間で熟成させますが、桝塚味噌の場合は天然熟成。木桶のなかで18ヶ月以上もかけて風味を深めているのです。
巨大な木桶ひとつで約12トンの味噌が熟成されますが、「とろみそ」となるのは中心部分の約5%だけ。貴重な木桶仕込み、長期天然醸造の味噌のなかでも、さらに風味に優れた部位だけを厳選しています。
20年ほど前、10代後半の頃に桝塚味噌の跡継ぎと知り合ったという店主の永田さん。その友人の実家で仕込まれた味噌の味に感銘を受け「東京でも桝塚味噌の味を広めたい」と、その十数年後に専門店「MISO18ヶ月」を開きました。
「とろみそ」をはじめ、麹味噌や米味噌など、料理の味付けはすべて桝塚味噌のものだけを使用するという徹底ぶり。「先人が生み出した素晴らしい料理を桝塚味噌でどう表現するか」が新しいレシピ開発の原動力になっているそうです。
色の濃さはおいしさの証だけじゃない。長期熟成の味噌ならではの健康効果
蒸した大ぶりのメークインの味付けは「とろみそ」をベースにバター、にんにく、カシューナッツなどをプラス。ホクホクとした食感を楽しむほどに、旨味、渋み、酸味といった複雑な味噌の風味が広がります。調理自体はシンプルですが、それだけ引き立つ味噌の存在感。素材を活かすセンスの良さを感じます。
MISOおでん盛り合わせ1,100円は冬季限定の人気メニュー。大根、ちくわ、魚河岸あげ、玉こんにゃく、たまご、厚揚げなど、下処理した具材を和風出汁で5〜6時間じっくり煮込んでから冷蔵庫で冷やし、一晩寝かせて「とろみそ」を芯まで浸透させています。
「しっかりと味噌を馴染ませるために、おでんは2日くらい時間をかけて仕込んでいます。色が濃いので視覚的に味も濃いように見えますが、そもそも八丁味噌は一般的な白味噌よりも塩分濃度は低いんですよ」と永田さん。実際に風味が濃厚に感じられる理由は、長期熟成させた味噌に多く含まれるメラノイジンなどにあります。
こちらの成分の生成過程は、肉や魚を焼く際にアミノ酸と糖質が結合するメイラード反応として有名。強力な抗酸化作用があるほか、血流の改善、善玉菌の増殖を促す効果もあるという研究結果が出ています。
味噌の熟成過程も調理と考えれば、18ヶ月以上もかけて味を調えている訳ですから感慨深いもの。「MISO18ヶ月」の料理の数々、味わうほどに奥行きの深さを感じられるのにも納得です。
そのほかお店では、富山県氷見より直送の鮮魚を使用した料理をはじめ、ジューシーな味噌カツ、白みそ生ウニスパゲッティなど、桝塚味噌を活かした料理が盛りだくさん。腸活を意識していない方でも満足度の高い逸品が揃っていますので、味噌料理に興味がある方は、ぜひ気軽に立ち寄ってみてください。