うどん百名店に見る、個性あるうどんの食感。

日本人の心をつかんで離さないうどんには、全国津々浦々、麺や出汁に地域の特色があるため、「結局美味しいお店はどこ?」という疑問を抱くことも多いはず。

 

そこで、全国のうどん店の中で食べログユーザーから高い評価を集める100店を集結した、『うどん 百名店』を食べログから発表しました!

 

今回はうどんの食感に注目。うどんライターの井上こんさんに、数あるうどんの中から代表的な5種類の食感について解説していただきました。

地域性だけではない。作り手の数だけ麺がある。

「うどんはコシがなきゃね」。そう話す友人をあるうどん店へお連れします。一口啜って「美味しい! こんなうどんがあるなんて知らなかった」なんて言われた日には、内心ガッツポーズを決めずにはいられません。

 

やわらかいん、かたいん、粘るん、伸びるん……世の中には作り手の数だけ麺があり、“讃岐”や“博多”といった地域属性だけでは決して計り切れないもの。そこで、今回お届けするのは食感のバラエティについて。「うどんに違いなんてあるの?」という方に向け、入門編として食感のオノマトペ(=擬音)から5つに大別してみました。うどん=ただ白くて長いだけの麺じゃないんです。

 

1. 永遠の王道「つるモチ」系

手造りうどん 楽々/出典:毎日外食グルメ豚さん

 

“美味しいうどんの基本”とされるのがこのタイプです。「つる」というからには、表面は丹念に磨き上げたかのようにつるつるとなめらか。ファーストインパクトは歯をスッと受け入れる素直さ。

うどん 丸香/出典:*あんこ*さん

 

中心にいくにつれもっちりと粘弾性が高まります。いわゆる「コシがある」といわれる麺で、東京・神保町の「うどん 丸香」や大阪の「手造りうどん 楽々」が当てはまります。

 

2. 瑞々しく躍る「ぷるムチュ」系

手打うどん かとう/出典:bottanさん

 

個人的に「飲むうどん」と呼んでいるのがこのタイプ。例えば愛知の「手打うどん かとう」や香川の「日の出製麺所」がドンピシャでこれ。加水の高さをうかがわせるツヤツヤの麺を頬張るとどうでしょう。

日の出製麺所/出典:たかまつせんいちさん

 

唇から口蓋、舌全体へと吸いつくような感覚に飲み込まれます。ちなみにこのタイプは冷やしだとよりエロティックな質感が際立ちます。

 

3. 見た目を上回るバネ「ぷりシコ」系

佐藤養助 秋田店/出典:WoodySnowさん

 

人同様、麺も見かけによらないということを教えてくれるのが、「ぷりシコ」系。ビジュアルは一見、頼りなく細いことが多いですが、食感も同様に儚いだろうと思ったらビックリ! ひと啜りで予想はいい方向に裏切られます。

 

静かかつ確かなコシは、芯の通った細身美人のようなイメージ。例えば秋田の「佐藤養助」。5~6mmの細麺から繰り出されるぷりっと躍動感のあるコシ。熱狂的ファンが多いのにも納得です。

 

4. 平和の象徴「ふわフル」系

博多うどん酒場イチカバチカ 恵比寿店/出典:*あんこ*さん

 

長時間茹でる、もしくは茹で置きすることで麺内部に水分を浸透させ、唇で挟むだけで切れるピースフルな食感に。

 

例えば東京の「博多うどん酒場イチカバチカ 恵比寿店」ではコシを徹底的に排除。椀物のごとくすとんと胃に収まる優しさは、ほろ酔いの胃にうってつけ。

5. 頼もしい先輩感「わしムチ」系

手打うどん長谷川/出典:ちゅーかさん

 

2.や3.が女性的だとするならば、こちらは力強さを蓄えた男性的なタイプ。ただ、一言で「わしムチ」系といっても強度はさまざま。

 

例えば東京・大泉学園の「手打うどん長谷川」の麺にはシルキーさと強さが内在し、「わしムチ」系初心者におすすめです。

 

うどんの世界は無限大!

実際はこの5つに当てはまらないものも山ほどありますが、今回は筆者が多い、または特徴的と思うものに絞りました。ここからどんなうどんに出合えるかはあなた次第。固定観念にとらわれず、ボーダーレスなうどんの世界を一緒に楽しみましょう。