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【90年代後半】時代は「イタメシ」から「東京イタリアン」へ
“イタメシ”という言葉に変わって“東京イタリアン”なる言葉が生まれたのも、この時期かもしれない。その“東京イタリアン”を象徴するようなリストランテといえば、1998年、広尾の片隅にひっそりと店を構えた「アロマフレスカ」だろう。

オーナーシェフの原田慎次氏は、当時イタリア帰国組のシェフが多かった中で、イタリアに行くという選択よりも日本の食材を見つめ直すことで独自のイタリア料理を確立。日本の食材にスポットを当て、素材を活かしたオシャレで洗練された皿の数々は、瞬く間に美食家たちの舌を魅了。銀座に移転してからも、ミシュランの星を取り続けている。

同店からは、代官山「タクボ」の田窪大祐シェフ、広尾「ボッテガ」の笹川尚平シェフといった気鋭のシェフたちが巣立っている点にも注目したい。
【2000年代】新世代料理人たちの帰国&出店ラッシュ。地方郷土料理や肉イタリアンが盛り上がる

こうした動きの中、21世紀を迎えると、イタリアでの修業を終えた料理人たちの帰国が再び相次いだ。代々木八幡「オストゥ」(2007年)の宮根正人シェフ、中目黒「イカロ ミヤモト」(2008年)の宮本義隆シェフ、西麻布「グラディスカ」(2007年)の堀江純一郎シェフ(現在は二子玉川「リストランテ・イ・ルンガ」)に、自由が丘「モンド」(2008年)の宮木康彦シェフなどが次々に店を構え、新たな活況を呈した。
中には、堀江シェフのようにイタリアでミシュランの星を取る料理人も生まれ、より本場との距離が縮んだ時期かもしれない。彼らは、修業先の郷土料理をリスペクト。オシャレというよりも骨太系な皿が多かったが、かえって、それが新鮮に感じられたのかもしれない。この後、地方料理に特化したレストランが増えていった。

また、ここ十数年の肉ブームの影響もあってか、近年はビステッカ的な肉料理を売りにする肉イタリアンも盛況。薪焼きブームに先鞭をつけた渡邊雅之シェフの赤坂「ヴァッカロッサ」や、熟成肉の達人高橋直史シェフの駒沢大学「イル・ジョット」をはじめ、飯田橋「トラットリア グランボッカ」、中目黒「RODEO」、銀座「エル ビステッカーロ デイ マニャッチョーニ」といった店が話題を呼んだのは記憶に新しい。
2021年、多様化するイタリアンから目が離せない!
そして現在、イタリア料理は多様化の一途を辿っている。郷土料理系や、東京イタリアンが更に進化したとも表現できるイノベーティブ系、シェフがワンオペレーションで切り盛りするバルやオステリアのような気軽な店もあれば、ソムリエのいる高級リストランテに和や中華のエッセンスを取り入れたフュージョン系等々、そのバラエティの広さには目を見張るばかり。今後のエボリューションに期待したい。
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文:森脇慶子、食べログマガジン編集部