カレー細胞さんおすすめのカレー店5軒

ということで、ここからはカレー細胞さんおすすめのカレー店5軒について、詳しく聞いていきましょう。

1. 優雅な暴力性と変態的な緻密さを操る「KALA」

やはりまずは改めて「Spice&Dining KALA」のスゴさを、詳しく教えてもらいました。

「番長の料理に対するストイックな姿勢は、僕の知る限りでは日本一です。限りなく優雅でありながら、感覚の深部にまでスーッと入り込んでくる、ある種の暴力性をも秘めた味わい。規格外、破天荒、変態的でありつつも、そのマインドコントロールの緻密さこそが、『ホルモン番長』より連綿と続く彼の料理なんです」

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「Spice&Dining KALA」のバナナリーフミールス   出典:ropefishさん

そんな同店は、2020年からは金曜の夜のみ「ラープと琥珀と時々煙り」という名義でタイ料理を提供しています。

「今度はタイ料理を極めるつもりなんですかね。いずれにせよ『Spice&Dining KALA』はもはやカレーの枠から外れていて、食べログの店舗ページでも「モダン・インディアン(新感覚インド料理)」「イノベーティブ・フュージョン」と記載されてます。カレーは食べられますけどコース主体で完全予約制。値段もそれなりにします。カレー店としてではなく、スパイス料理の新たな可能性を堪能する気持ちで行ってみてください」

2. 日本が誇るカレー界のホープ「アフターグロウ」

次は福岡市内のオアシス・大濠公園からも近い「アフターグロウ」。カレー細胞さんが「日本が誇るカレー界の若きホープ」と太鼓判を押す一軒です。

「店主の入部友登(ゆうと)氏は『Spice&Dining KALA』の番長の一番弟子。それもあって、弟子のなかでも変態度は群を抜いていますね。以前はだし系の食品メーカーにいて、あらゆる食ジャンルへの興味と、それらを因数分解し再構築、脳内調理する“能力”を持ってます」

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「アフターグロウ」のスリランカプレート(イワシ)&辛増   出典:☆中隊長☆さん

大阪系のだしカレーもスパイスカレーも、中華カレー、カツカレーもすべてにおいてハイレベル。「デリー」のカシミールカレーも再解釈して「アフターグロウ」流においしく作ったかと思えば、かつ丼やナポリタンなどのカレー以外も絶品とか。ただ一つ、注意すべき点があるようで。

「入部氏は音楽フェス野郎で、ライブが優先なんです。1カ月ほとんど休業なんてこともあって、だからフェスの多い時期は特に注意。実は第1回の『SHIBUYA CURRY TUNE』は同店を招いて「気に入ったら福岡に行ってね』と伝えてたんですが、翌月の実店舗スケジュールはほぼ休業だったという。もし行く際には、事前にSNSを要チェックです」

3. スパイスカレーの代表格「クボカリー」

スパイスカレー好きの人向けという点で挙げるなら「クボカリー」がおすすめとカレー細胞さん。大楠店と大名店の2店舗展開で、どちらも高い人気を誇っています。

  「スパイスカレーの本場は大阪ですが、大阪と福岡を比べると味の土台に違いがあると思います。と言うのも、大阪はスリランカ料理、福岡は南インド料理からのインスパイアが多いんですね。『クボカリー』もそうで、例えば南インドの野菜カレーと言える『サンバル』を添えるスタイルなんです」

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「クボカリー 大楠店」のクボカリープレート   出典:YadamonMさん

さらにカレー細胞さんは、福岡カレーのレベルの高さは、もともと食材がおいしいという土地柄も関係していると言及。確かに九州は鹿児島や宮崎など畜産の盛んな県が多く、カレーに欠かせないトマトは熊本が日本一の産地。海の幸も豊富で、福岡には玄界灘や五島灘などで獲れる新鮮な魚介が絶品です。豊かな食材とスパイスの融合が、えも言われぬおいしさの理由と言えるでしょう。

「『クボカリー』も例にもれず、鮮烈なスパイスにジューシーな肉、そこにシャキシャキ野菜のメリハリが特徴。ビシバシ、ググッと攻めた味わいでたまりません。ビジュアルも華やかでありながらパワフルで、それはさながら『博多祇園山笠』のお祭り。同店は立地や雰囲気的にもハードルが低く、エントリー層には特におすすめです」

4. 門司港名物・焼きカレーの最高峰「こがねむし」

冒頭で門司港の「焼きカレー」に触れましたが、カレー細胞さんは圧倒的に好きなお店が一軒あると言います。ということで「焼きカレー」についても簡単に解説。

国際貿易港として栄えた門司港は洋食がいち早く発達した街で、今はなき「山田屋」という和食店が土鍋でカレーをドリア風に焼いたところおいしく仕上がったため、メニュー化して「焼きカレー」が広まったとされています。では、カレー細胞さんのイチオシ店は?

「『こがねむし』という喫茶店です。激ウマなだけあって、行列も必至。それには理由があって、一つひとつ丁寧にオーブンで焼くから提供スピードも遅くなっちゃうんです。ウマさの秘密は、10数種類の新鮮野菜と肉を3日間煮込み、それを40年以上煮込み続けるカレーソースに合わせているから」

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「こがねむし」の焼きカレー   出典:0713yさん

焼き方だけではなく、レシピの組み立ても実に丁寧。カレー細胞さんが「焼きカレーの最高峰」「天下無双の焼きカレー」と絶賛する背景には、食べ手のことを考え抜いた緻密な計算があるのです。

「カレーの構成は、ベーコンが入っているエリア、コーンが入っているエリア、アスパラガスが入っているエリアと、きれいに3等分されています。そして中心にはとろーりとした生玉子。崩すと今度はカレーがマイルドリッチに。それでもスパイス感がしっかり残っていて、素晴らしい味わいです。門司港名物の『焼きカレー』を食べるならぜひおすすめしたい一軒と言えるでしょう」

5. 肉塩油の濃厚さがインパクト大な本場の味「マルハバ」

最後はパキスタン出身店主が営むレストラン。博多や福岡空港の北部に位置する箱崎エリアの「ハラールフードマルハバ」です。この地域にはイスラム教徒のためのモスクがあり、在日のパキスタン人はもちろん、日本中のカレーマニアをもうならせているのが同店なのだとか。

「もともとはムスリムのためのハラール食材店でしたが、お客に振るまっていた賄い料理が評判に。やがて本場のパキスタン料理を求める日本人ファンの応援によって、食堂を兼ねるスタイルになりました。メニューは日替わりですが、運がよければビリヤニにもありつけますよ」

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「ハラールフードマルハバ」のチキンカラヒ   出典:まっせなさん

カレー細胞さんが食べた中で、特に絶品だったのはビリヤニと、和牛を使った「ニハリ」という煮込みカレー。メニューが日替わりとはいえ、全体的に肉のうまみと油、塩味とスパイスのバランスが絶妙で、感動的なおいしさだと絶賛します。

「あえて和牛を使うなど、おいしさへのこだわりは随所に。なお、店構えや雰囲気はディープですが日本語も普通に通じますし、アットホームでハードルはそれほど高くありません。福岡でリアルなパキスタン料理を味わいたいならぜひここへ」

成熟した福岡の次にアツいスパイスシティは別府!

「メディアでここまで深く紹介したのは初めてかも」とカレー細胞さん。今回紹介したほかにも平尾「インド食堂ワナッカム」、赤坂「ポラポラ食堂」、薬院「チャクラ」、香椎「オスアシリ アーユルヴェーダ ダイニング サロン」など、おすすめの福岡カレー名店はたくさんあるとか。

そして近年一気に盛り上がった勢いは、今や県外にも影響を及ぼしていると言います。「博多から特急で約2時間。大分の温泉街・別府です。成長率で言えば福岡以上、日本屈指と言ってもいいでしょう。大昔から別府は観光地ですから、国内外の旅行客とのふれあいが身近なわけです。自治体としてもダイバーシティの推進に熱心で、他者や異文化を受け入れる気風が育っていました。それもあって2000年に立命館アジア太平洋大学ができ、いまやスパイス文化圏の留学生が一緒になって町おこしをしているんです」

以前カレー細胞さんが別府を訪れた際は3日間で予定を組んだそうですが、注目店が想像以上に多くて回り切れなかったそうです。

「東京の名店の系列である『カレー&スパイス 青い鳥 別府』もあれば、『Spice&Dining KALA』の番長肝入りの『スパイス料理専門店 ノラリクラリ』、南インドカレーの『TANE』、コミュニケーションカフェを兼ねた『バサラ ハウス』など、挙げればキリがありません」

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「スパイス料理専門店 ノラリクラリ」の本日のターリー   出典:ropefishさん

これら名店の多くが徒歩圏内にあるという濃さも見逃せないと、カレー細胞さん。別府は名物の温泉処も随所にあって、カレーと湯治の“沐浴”で新陳代謝を高めるインターバルも楽しめます。九州でグルメツアーを組む際には、福岡と大分は要チェックと言えるでしょう。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。


※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

監修/カレー細胞(松 宏彰) 取材・文/中山秀明