ファッション誌や広告出演、アパレルブランド「idem(イデム)」をディレクションするモデル・村田倫子。お酒好きを公言する彼女が気になる飲み屋を調査しパトロールする連載。「同世代の人にもっと外食、外飲みを楽しんで欲しい!」と願いを込めてお送りする連載35回目は、焼酎×料理の可能性の扉を開いてくれると話題の、東京・渋谷「IGOR COSY」(イゴール コージー)をパトロール。

呑み屋パトロール vol.35「焼酎と料理のペアリングに新たな味覚の扉がオープン」の巻

恥ずかしながら、私は普段焼酎はあまり飲まない。ついつい好物の日本酒に手が伸びてしまい、もうそこですっかり気持ちよくなってしまうのだ。しかしこの日、私の新たな好奇心の扉が開いた。良き出合いは、好きを掘り下げる動力になる。店を出るときには、すっかり焼酎の魅力に首ったけ。なんて罪なお店だろう。今回は、私の推しを増やした神泉の話題店「IGOR COSY」へ。

フレンチの有名シェフ、丸山智博さんがディレクションを務める新たな居酒屋。京王井の頭線・神泉駅で下車してすぐ。店構えから店内に至るまで、お洒落な空間だ。

偶然にも、先月の連載で紹介し、大衆居酒屋の概念を覆された池尻大橋の「Lanterne」も丸山さんが手がけたお店。

この関連性は知らなかったので驚いた。なんだか不思議と引き寄せられているようだ……。

カウンターにずらりと並ぶ焼酎ボトルたち。 “焼酎と料理のペアリング”。その「おいしさと楽しさを伝えたい」と丸山さんがこのお店の要にしたのは、ワインではなく焼酎。コンセプトからなんだか面白そう……。

冒頭でも告げたが、私は焼酎初心者。しかしこれも何かのご縁。今夜は焼酎縛りでいきましょう。(人生初めて)

「だいやめ 芋/鹿児島」650円(グラス)

お店のおすすめの乾杯酒は、ワイングラスに注がれた「だいやめ 芋/鹿児島」のソーダ割。

んんん? 私が知っている焼酎とは違う? いや、私があまりにも無知なだけ? ワイングラスから立ち上るのはライチのような華やかで甘い香り。口に含むと、それがまた爽快に弾けて、最後に芋の旨みがじわじわと広がって心地よい。

「こんな焼酎あるんだ」。これが焼酎ビギナーの率直な感想。油断していた。乾杯酒から好奇心の扉は全開放。もうゾクゾクしちゃう。

「白イチジクバター 焼酎風味」630円

前菜に頼んだのは、「白イチジクバター 焼酎風味」。焼酎に漬け込んだ白イチジクを練り込んだ、特製のバター。ちょっぴり振り掛けられた粗塩の塩気がアクセントに。

洋を感じる深い旨味と、焼酎が混じって溶けて、新たな輪郭を縁取る「IGOR COSY」のペアリング。食材とともに表情を変える焼酎の味わい。これは面白い。

「ズワイガニとマスカルポーネのポテトサラダ」700円

「ズワイガニとマスカルポーネのポテトサラダ」は、ほくほくとしたズワイガニの身がごっそり。マヨネーズは控えめに、その分マスカルポーネをたっぷり仕込んだ贅沢なポテトサラダ。

フライドオニオンときゅうりの食感、炒めた玉ねぎの甘味。仕上げに追いマスカルポーネソース……実に太っ腹な組み合わせだ。洋と和のいいとこどり。こちらも不思議と焼酎に合う。

「山翡翠 米/宮崎」600円(グラス)

2杯目は、「山翡翠 米/宮崎」。華やかな香りとスッキリした味わいの山翡翠は、焼酎に大葉と唐辛子を入れた「金魚」スタイルで。大葉の爽やかな香りと唐辛子の辛みが焼酎の旨さをぐんと引き出す。こんな割り方も今夜が初めまして。

「炙り〆鯖 春菊醤油仕立て」880円

名物「炙り〆鯖 春菊醤油仕立て」で好物の〆鯖を。深緑のソースは春菊が練り込まれた醤油ベース。

春菊特有の香味は、濃厚な鯖の旨味に寄り添って、深みをぐっと引き出すきっかけとなる。この面白い組み合わせは癖になりそう。

名物その2は、「雲丹のせ笹豚焼売ライムリーフの香り」。

「雲丹のせ笹豚焼売ライムリーフの香り」900円

蒸籠を開け、立ち上る湯気の中から現れたのは、雲丹がちょこんとのった大振りの焼売。ライムリーフとともに蒸された焼売は、爽やかな香りを上品に纏っている。

ぷりん、ぷちっ、じゅわん。 機嫌良く弾ける皮、滲み出る豚肉の旨味、そして雲丹の気品あるコク。口の中で繰り広げられる、おいしいの往復ビンタ。

幸せの渋滞で、口元は緩みっぱなし。気を抜くと肉汁が溢れてしまいそう。

「磯辺揚げ風生海苔のゼッポリーニ」580円

「磯辺揚げ風生海苔のゼッポリーニ」。ゼッポリーニとは、南イタリア・ナポリの揚げパン。ピッツァ生地に海藻を入れて揚げた異国のおつまみだ。衣はカリッと、身はふわふわ。

噛み締めるたびに広がる磯の香り、旨味を相乗するチーズ。知らなかったイタリアの新たな黄金比に興奮が止まらない。

「極楽 米/熊本」630円(グラス)

濃厚でガツンとボディにくる一皿のお供は、「極楽 米/熊本」の河童。きゅうりの青味がよりスッキリな風味を醸す。

新しい好きとの出合いに、トクトク鼓動が早い今晩。〆はお店自慢の「韓国風 トロタク巻き」。

「韓国風 トロタク巻き」700円

タレの味が染み込んだトロは、かなり贅沢な厚切り仕様。そこに沢庵と大葉のアクセントが加わる。

定番から未知の味わいまで、どこかにプラスαの遊び心が仕込まれている「IGOR COSY」の料理たち。あぁ、今夜もとても楽しい。

この日をきっかけに焼酎の魅力に目覚めた私の最近の癒やしは、仕事終わりの「だいやめ」ソーダ割。(帰宅後、即ネットでポチッと)

「IGOR COSY」のおかげで、我が家に増えた愛しい相棒。呑みの場は昔から、そしてこれからも私の好奇心を開く場所だ。

※価格はすべて税抜

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※本記事は取材日(2021年2月23日)時点の情報をもとに作成しています。

文:村田倫子、食べログマガジン編集部