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おしゃれフードトレンドを追え! Vol.47
点心+ワイン&シャンパンが主役の座に躍り出た!
餃子、焼売、小籠包、春巻き、大根餅。みんな大好きな点心だが、近頃はその食べ方に異変があるようだ。
餃子にビールやハイボール、春巻きや揚げ物系点心に紹興酒というペアリングは昔から鉄板だが、近頃最も旬なお酒はシャンパンとワインということで、都内にはあちらこちらにワイン×点心の店が続々とオープンしている。その流れに押されるように、数年前まで中華料理の脇役的な存在として添えられてきた点心が、2019年から一気に主役の座に躍り出た。
そもそも点心は中国で「軽食・間食」という意味。ちなみに、「飲茶」とは、中国茶を飲みながら点心を食べる習慣のことを意味しているので、今トレンドのワインやシャンパンと食べるのであれば「点心」と表現するのが正しいということを最初にお話ししておこう。あくまでも間食、軽食といったカジュアルな佇まいは嫌味がなくて、抜け感を大事にするおしゃれ業界の人々を魅了しているようだ。「ちょっと点心でも食べに行かない?」という気軽さが、ランチに、仕事帰りに、中途半端な空き時間にぴったりなのだ。
ひと口で食べられる点心は、会話を妨げないので社交にもぴったり。パーティ慣れしたファッション業界人は、フィンガーフード的サイズ感を見ると理由もなしに心躍る。小さな口でパクッと食べて、シャンパンとワインを味わえば、その場での話にも花が咲く。アラカルトで好きなものをあれこれ頼む楽しみも、自由で気軽で洒落ている。
点心を主役に、おいしいシャンパン&ワインを飲める店をリサーチ。カジュアルにシャンパンとワインを飲むには点心が一番! 昨年オープンしたての注目店から人気再燃の老舗まで都内は一大点心天国になってきた。以下のオススメの店は、おしゃれ業界人たちが足繁く通う場所。いずれも点心師(中国の国家資格)がいる本格的な点心店なので、シーンに合わせて使い分けてみよう。
ロンドンの一流チームが作る独創的点心:ヤウメイ(日比谷)
一昨年二重橋スクエアにオープンして以来、点心界隈の話題を総なめにしているのが「ヤウメイ」。ロンドンで中華料理店として初めてミシュランの星を獲得した伝説的レストラン「HAKKASAN」を立ち上げた名物プロデューサー、アラン・ヤウと一流チームが手掛ける独創的な点心専門店だ。
日本の寿司カウンターにインスパイアされた白木のカウンター、高い天井の店内はコロニアル風のインテリアで、まるで昔の香港にタイムトリップしたような気分だ。
メニュー数は少なめで、オーソドックスな点心に混ざってオリジナル点心には青マークがしてあるのでシグニチャーをオーダーしやすいのが助かる。長いワインリストはフランス・ブルゴーニュのリストのみで大半はボトルで1万円代中盤以降という、かなり本格的なレベル。7,000円というボトルが白赤共に1本ずつ、またリストにないものも紹介してくれるのだとか。ブルーの衣装を纏った華麗なソムリエールがとても的確で詳細な説明をしてくれる。しかしハイレベルなワインやシャンパンがグラスで1,200円〜で飲むことができるのでご安心を!
創作点心はどれも見た目にスタイリッシュで、味もさっぱり系でワインによく合う。海老の上にホタテをのせてとびこを飾った蒸し焼売、プルンと張りのある皮の中に弾ける海老の旨みを閉じ込めた海老蒸し餃子、揚げ湯葉と海老の腸粉(蒸して作るライスヌードルで、筒状に丸められている)はパリパリの揚げ湯葉の存在感が抜群でボリューミー。斬新なのに味わうとオーセンティック、そのバランスが面白い。
新感覚の点心とフランスワインのマリアージュ、クラシックな店内で海外旅行気分を味わえる。ここの点心を食べずして今のブームは語れない。
横浜中華街の老舗がプロデュース:鈴華荘 Urban Chinese (六本木)
横浜中華街の老舗「状元樓」が本格上海料理に、型にはまらない自由な発想を取り込んだ、都会的中華料理をプロデュース。2019年にオープンした「鈴華荘」は、点心とタパスと名付けられた小皿料理がお洒落に楽しめる店だ。フカヒレの煮込みをはじめ、本格上海料理やオリジナル料理もスモールポーションで食べられるので、女性2〜3名でも気軽に堪能できるのがうれしい。
鈴華荘の点心の特徴は、味のクオリティの高さはもちろん、ジュエリー点心とも評される見た目の美しさ。ロブスターの旨みたっぷりのビスクを閉じ込めたロブスタービスク小籠包1,050円(横浜中華街で開催された「美食節」にて金賞を受賞)、トビコのせホタテと海老の蒸し餃子900円、ピンク色が可愛らしいSakura小籠包 (春菊とリコッタチーズ)1,050円、グリーンの海鮮入り翡翠蒸し餃子870円などカラフルな点心が目を引く。ワインやシャンパンはグラスでオーダー可能で、飲み放題コースもある。
女系親子3代で50年以上に渡り伝統的な上海料理を継承し続けている状元樓。鈴華荘でも繊細で手の込んだ料理と、美的センスが光るテーブルセッティングとインテリア、きめ細かなサービスが実現されている。添加物や化学調味料を使わず、油少なめのあっさりとした味わいは毎日食べても胃もたれしないので、まさに女性向きと言える。1階2階合わせて133席、少人数用の個室から大人数のパーティまで利用可能だ。1品ごとのクオリティが高く、店内のホスピタリティも良好で誰と行っても安心できる店。予約が取れなくなる前に女子会を開いておくのが正解だろう。
恵比寿の老舗の人気も再燃中:ル・パルク 恵比寿店
恵比寿公園の横に建つクラシックな洋館。コンセプトは、パリの下町チャイニーズということで、緑を眺めながらの家庭的点心が居心地いい。飲茶の種類がとても豊富で値段もリーズナブルだ。コースもあるが、アラカルトで好きな物をオーダーするのがおすすめだ。
全体的に点心のサイズが大きめで、洗練されたレストランの味というよりは、家庭的で手作りの味わいが気軽でいい。点心をお腹いっぱい食べて、ワインを飲んで、1人4,000円程度におさまるリーズナブルさ! 平日の昼は日替わりで料理長のおすすめが味わえるランチセット(1,100円)がコスパ○で人気。もっちりとした透明感のある薄皮と餡のぷりっぷり感。できたての熱々を求めて、家族づれや大人たちがシャンパン&ワインとともに連日わいわいと賑わっている。
点心&ワインのトレンドを牽引:スチーム Dim Sum&Wine(六本木)
今の点心ムーブメントを肌で感じられるスタイリッシュな店。都内外資系ホテルで研鑽を積んだ2人の料理人が繰り広げる広東点心の世界は、伝統に新たな解釈を加えたクリエイティブなものだ。右側がオープンキッチン、それに向かい合うカウンター席、後ろにテーブル席。キッチンに積み上げられたセイロともくもくの蒸気が、モダンな店内で絶妙にマッチしている。
絶品広東焼売900円、海老入りニラ焼き饅頭760円など王道メニューもあるが、羊とトマト、パクチーのぎょうざ900円、漢方豚と大和芋のワサビ焼売900円など斬新なメニューも。これがどれもワインとのペアリングにぴったりの味わいで、ソムリエとの会話も楽しい。シメは是非、海鮮とアジアンハーブの爽やか炒飯 ライム添え1,750円で。これぞアーバンライフ六本木の夜に似合う無国籍感!
1週間で4店の点心を食べてみたが、店それぞれで点心の味もワインとのペアリングも異なるので連日食べても飽きないのが不思議。肉がぎっしり詰まった焼売や小籠包、甘みのあるしっとり大根餅にはシャンパン。鶏足の豆豉ソースや豚バラのローストなどこってり味には軽めの赤、さっぱりした野菜ものや海老餃子には白といった具合に点心の種類によってお酒に変化をつけられるのもいい。赤と白の中間ロゼワインはオールラウンドプレーヤーとしての実力を発揮する。点心をおつまみにアペリティフ、定着しそうだ。
※価格は税抜