〈僕はこんな店で食べてきた〉

鴨南蛮だけではもったいない。合鴨の贅沢な楽しみ方

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冬の日本料理の二大看板は、ずわいがにとふぐだが、個人的には鴨が解禁になるとワクワクする。

 

いまや年中食べられるような気にもなる鴨だが、そば店で出てくる「鴨南蛮」のほとんどは合鴨。真鴨とアヒルとの交雑交配種だから養殖物だが、皮のうまみと肉のさっぱりと鉄分を感じる味はさすが鴨肉だ。

 

東日本橋にある「あひ鴨一品 鳥安」は合鴨すき焼き一本の名店で、明治5年の創業。

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あひ鴨一品 鳥安   出典:ramen__manさん

すき焼きといっても牛肉のそれとは違い、くぼみのある独特の鉄鍋(くぼみは合鴨の脂を溜めるためとか)を炭火にかけ、胸肉、笹身、もも、レバー、砂肝、心臓を焼いて大根おろしで食べる料理。

 

コースにすると、前菜、吸い物、一品、ご飯に赤出汁やデザートもついて、10,000円(税・サービス料別)。一軒家の座敷の個室で食べられることを思えば会食にいい。

オールバックGOGOGO
あひ鴨一品 鳥安   出典:オールバックGOGOGOさん

以前は木造だったが、平成17年に建て替えられた。僕は木造のころに何度か訪れ、昨年新しい建物になって久しぶりに行ったが、かつての部材を残したそうで、イメージは変わっていなかった。

 

 

トゥールダルジャン 東京
トゥールダルジャン 東京   写真:お店から

もっとも、鴨料理で有名な「トゥールダルジャン」(本店はパリ、東京店は四ツ谷のホテルニューオータニ 東京内)の「幼鴨のロースト」も、シャラン鴨と呼ばれる厳密に育てられた高級食材を使っているが、こちらも合鴨だ。

 

 

狩猟の解禁日を楽しみに、冬旅へ行く人も

希由塚
割烹 長吉   出典:希由塚さん

日本では野生の鴨は秋にシベリアからやってくるものとして知られ、通常は11月中旬に狩猟解禁になる。鴨料理で知られる地方の料理店では、新潟「割烹 長吉(ちょうきち)」や滋賀「鳥新(とりしん)」や「千茂登(ちもと)」が有名で、解禁と同時にわざわざ食べに行く友人も多い。

 

 

東京ではなんといっても浅草「鷹匠壽(たかじょうことぶき)だろう。雷門の近くにある一軒家で、個室のみ。「鷹匠鍋」といわれる鋼でできた特別の鍋で鴨を焼き、最後は焼き飯で締める独特のスタイルだ。持ち込みOKなので高級ワインを持ち込む客も多いが、残念ながら紹介制なので一見は予約ができない。常連ですら部屋の獲得は大変らしい。

 

東京で食べるなら、こんな名物料理を

柏原 光太郎
諸菜 匠   出典:柏原 光太郎さん

そんな予約困難店の「鷹匠壽」だが、僕は残念ながら友人のお誘いで何度かうかがっただけ。自分で行くのは「諸菜 匠」のほうだ。赤羽橋に昔あったジビエ料理店「あか羽」で料理長を務めた大将が開いた店で、幡ヶ谷駅から直結の雑居ビルの奥にある。

俊太朗
諸菜 匠   出典:俊太朗さん

はじめて誘われたときには「まさか」と思ったほどの普通の小料理店だが、ここにも希少な「鷹匠鍋」があり、大将がつきっきりで焼いてくれる「お狩場焼き」が名物。はじめて訪れたのは6年ほど前か。まだ知る人ぞ知る、という雰囲気で、食べログの点数も今ほど高くなかった。

柏原 光太郎
諸菜 匠   出典:柏原 光太郎さん

当時のコース8,000円は、この冬12,000円(税込)になったが、それでも満足度は高い。持ち込み料はあるものの、ワイン片手に4人くらいで訪れるのがおすすめ。いろいろ裏メニューもあるが、それは何度か訪れてからのお楽しみだね。

 

 

※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額を掲載しております。最新の情報はお店の方にご確認ください。

 

文:柏原光太郎