〈僕はこんな店で食べてきた〉
鴨南蛮だけではもったいない。合鴨の贅沢な楽しみ方
冬の日本料理の二大看板は、ずわいがにとふぐだが、個人的には鴨が解禁になるとワクワクする。
いまや年中食べられるような気にもなる鴨だが、そば店で出てくる「鴨南蛮」のほとんどは合鴨。真鴨とアヒルとの交雑交配種だから養殖物だが、皮のうまみと肉のさっぱりと鉄分を感じる味はさすが鴨肉だ。
東日本橋にある「あひ鴨一品 鳥安」は合鴨すき焼き一本の名店で、明治5年の創業。
すき焼きといっても牛肉のそれとは違い、くぼみのある独特の鉄鍋(くぼみは合鴨の脂を溜めるためとか)を炭火にかけ、胸肉、笹身、もも、レバー、砂肝、心臓を焼いて大根おろしで食べる料理。
コースにすると、前菜、吸い物、一品、ご飯に赤出汁やデザートもついて、10,000円(税・サービス料別)。一軒家の座敷の個室で食べられることを思えば会食にいい。
以前は木造だったが、平成17年に建て替えられた。僕は木造のころに何度か訪れ、昨年新しい建物になって久しぶりに行ったが、かつての部材を残したそうで、イメージは変わっていなかった。