ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第6回は、横浜にある「hasamu(ハサム)」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第6回「hasamu」

今回は、みなと横浜から「hasamu」という店のご紹介です。hasamuとは日本語の「挟む」のこと。元町や外国人墓地、港の見える丘公園から、そう遠くない、本牧(ほんもく)というエリアにあるのですが、鉄道が走っておらず、ちょっと行きづらい、不便な場所です。ですから、まだ行ったことがない人も多いかも知れませんが、素晴らしくおいしいハンバーガーが食べられます。

 

店主・直樹さんとフリーアナウンサーの松原さと子さんのお店です。以前2人は、千葉県は南房総・勝浦の部原(へばら)海岸で、「OWL(アウル)」というキッチンカー形態のハンバーガーショップをやっていました。

以前、千葉の勝浦で営業していた「アウル」

すぐ目の前が太平洋という絶好のロケーションで、週末だけの営業でしたが、ファンが大変多い店でした。その勝浦から横浜に引っ越したのが2014年。今度は店のうしろに小高い丘を擁するロケーションです。

直樹さんと、看板犬・シベリアンハスキーのムーちゃん(メス・5歳)

店の横手のデッキが、緑豊かな「本牧山頂公園」へと繋がっています。ここはぜひとも、hasamuと「セットで」行っていただきたい公園です。なだらかな丘陵地を整備した気持ちのいい公園で、犬の散歩コースとしても賑わっています。その散歩からの帰り道にちょうどhasamuがあるわけですから、もちろん犬連れOK。愛犬家の皆さんからは、ドッグカフェとしても重宝されています。

ワンちゃん同伴OKなのはウッドデッキのテラス席。25席あります。ビニールカーテンで囲われた一角もあって冬もあたたか。ローズマリーやジューンベリーなどが植わる、気持ちのいいテラスです。

そんな、地元の人に愛されるhasamuですが、そのハンバーガーは、本牧だけに留めておくにはあまりに惜しい、それはそれは一級品です。交通の便の悪さを押してでも、わざわざ食べに行く価値のあるお店と思ってください。

「ダブルチーズバーガー」パティ180g 1,360円。パティでなくてチーズがダブル。hasamuのパティは120gと180gの2サイズあり、大きい180gパティのときはチーズ2枚の「ダブルチーズバーガー」がおすすめ

バーガーメニューは全21品がレギュラーです。あれこれ目移りするところですが、私のイチ押しは断然「チーズバーガー」、もしくは「ダブルチーズバーガー」です。まずはここから始めてください。

 

hasamuのバーガーは、なにより「塩」がおいしい! パティを焼く際に振る、振り塩の旨さ! 直樹さんはこの“肉の味を引き出す塩加減”が抜群に巧くて、その塩味だけでバーガー1個余裕でイケてしまいます。

自家製ソースは「バーベキューソース&マヨネーズ」「タルタル」「サウザンアイランド」の全3種。ポテトにかけるもよし、ハンバーガーを“味変”させて食べるもよし

このバーガー、とにかく「ひと口目が最高においしい」です。顔を近づけるとプンと漂うビーフのにおい。かぶりついたひと口目に感じる振り塩とチーズの塩気の旨さ。パティは豪州牛と国産牛のミックス。一見するとゴツそうですが、スッと噛み切れて食べやすいです。

 

新宿「峰屋」の酒種バンズの“しゅっ”と縮むような生地感が、硬めなパティの食べ口とすごくよく合っています。パティとバンズの食感の一致を感じます。

「アボカドサワークリームバーガー」パティ120g 1,380円

塩味だけで丸1個食べられてしまうようなバーガーは、都内にもそうそうありません。ですから私は、こちらでバーガーを食べるなら「このチーズバーガーでもう決まり!」と信じて疑わなかったのですが、しかし、アボカドをのせてもおいしい!

 

塩味の輪郭がはっきりしているので、アボカドやサワークリームの“ほわん”とマイルドな味がその上にのっても、消し合うことなく、むしろ見事に融合します。〈塩とアボカド〉という組み合わせの、他にはないタイプのアボカドバーガーです。

ディナーメニュー「ベイビーバックリブ」1,360円

一転して、ディナーの前菜は、パンチの利いたストロングスタイルのメニューが多めです。「ベイビーバックリブ」は、じっくり火を入れたUSポークにタレがしっかり染み込んで濃厚な甘辛味。添えられたマッシュポテトもこれまた濃厚。お酒が進みます!

 

生ビールは「ハートランド」「ギネス」そして、米国シカゴのクラフトビール、グースアイランドの「GOOSE IPA」の3銘柄。特に3つ目の「GOOSE IPA」は、樽生が飲める店は少ないので、貴重です。

ディナーメニュー「ガーリックシュリンプ」680円

そして、「ガーリックシュリンプ」もなかなかのハードパンチャー。タレに漬けて3~4時間マリネした後、刻んだニンニク、オリーブオイルなどとともにザザッと炒めた剥きエビが5~6尾。レモンを搾るもよし、スイートチリに漬けて甘くして食べるもよし。ガーリックがとにかく芳ばしい、ストロングスタイルのおつまみです。

 

ということで、hasamuは、かぶりつけばスッと噛み切れる、歯切れのよさと、シンプルな塩の旨さ、私がハンバーガーに求めるものを兼ね備えた、そんなお店です。世のあらゆるド派手でスペシャルなバーガーを食べつくし、その興奮が過ぎ去ったあとに、最後に心に残るのはこういうバーガーかなと、私は思っています。

新ブランド・米hasamuの「本牧ロコモコライスバーガー」720円

さらに、hasamuはこの秋、ライスバーガー専門の新ブランド「米hasamu(コメハサム)」を、hasamuの店頭にてスタートさせました。厳選した国産米の間に、ハンバーガーに使っているのと同じビーフパティや、牛カルビ、豚の角煮などを挟んだ、“ハンバーガー屋が本気で作ったライスバーガー”です。全6ライスバーガー+スープ2品。持ち帰りのみなので、それこそ散策がてらに本牧山頂公園に登って食べてみてはいかがでしょうか。

 

※価格はすべて税抜

 

取材・文・写真:松原好秀