お好みでいただける若手の注目店といきなり高レベルの寿司店

本当は教えたくない寿司店

7月15日、新富町と築地の間にオープンした「芳尾」は通いたくなる寿司店でした。まだ30歳の芳尾信治親方は「築地寿司清」でスタートし、その後に「冨所」で4年、「鮨処やまと」で1年という、寿司好きなら注目する経歴。

カウンター7席の店内をひとりで切り盛りします。握りは大ぶりで、艶やか。一貫一貫、満足感があります。おまかせだと昼10,000円、夜22,000円ですが、なんといってもお好みでも食べられるのがうれしいところ。肉厚のカスゴ、結乃花のマグロのはがし、寿司種としては珍しいタカベなど9貫につまみとかんぴょう巻き、玉子焼き、ビールに日本酒と堪能しても12,000円ほどでした。「全く宣伝してないですから」とのことで(私も知人が隣の「シノワズリ372」を訪れた際、偶然見つけて教えてもらいました)、8月上旬時点では余裕で予約ができましたが、きっとどんどん人気が出るのでしょう。個人的には、こんなお店がふらっと入れるままだったらいいのになあと複雑な心境ですが。

カスゴ

最近の「高額寿司店」でピカイチ

5月1日にオープンするや、あっという間に予約困難店になっていた麻布十番の寿司店「みつい」は先日、ようやく訪れることができました。親方の三井祥さんは西麻布「鮨祥」開店の少し前から存じ上げているのですが、当時から全てに意欲的で、好奇心の塊のような人でした。「みつい」はまさにその集大成といえるお店で、「新店」というには完成度が高すぎる気すらします。

おまかせコースのみですが、一斉スタートではないのもうれしいところ。このレベルで27,500円ですから、最近の「高額寿司店」の中では一番のおすすめでしょう。ちなみに事前予約制の「特製ばらちらし」は持ち帰ったら、もらった人は狂喜すると思います。

クジラの尾の身

「みつい」の紹介動画はこちら!
https://www.instagram.com/p/DJDdsQ8hrRi/

三つ星を目指して始動したスターチームと中野に誕生した話題のフレンチ

「三つ星を獲得するため」に作った店

6月20日、表参道にグルメ業界大注目のフレンチがオープンしました。白金「ラ クレリエール」で6年連続一つ星を獲得していた柴田秀之シェフが、三つ星を獲得するためと宣言し、作り上げた「mærge(マージ)」です。そこまで言われると、こちらもつい厳しめな視点で訪れてしまうのですが、結論としては圧倒されました。この人材不足のご時世に180人もの応募者の中から厳選された調理スタッフ、テーブルで料理の仕上げも担当する、高度な技術を持つサービス陣、著名ホテル出身のフロント。

もちろん俊英が集ったからといっていい店になるわけではないのですが、こちらは柴田シェフの哲学と目指すゴールが全員に共有されているので、気持ちよく非日常の世界に浸れます。料理は美しく、特に香りが出色でした。気軽に訪れられる値段ではありませんが、特別な日にはぜひ。

オコゼのグルノーブル風

中野にフレンチの新星

7月27日、ほぼフレンチのイメージが無い中野にオープンした「sanka」も驚きでした。駅から徒歩1分の中野レンガ坂という、飲食店が集まるエリアにあるのですが、木の年輪をイメージしたという大きな円形のオブジェの奥は別世界。カウンターキッチンの後ろには上品な金色の真鍮が張ってあり、その前で仕上げられる料理を眺めるとワクワクしてきます。

シェフは今年46歳の古澤英夫さん。フランスから帰国後、表参道「ブノワ アラン・デュカス」のスーシェフを経て独立。前職は赤坂「Le FAVORI」のシェフでした。料理は何より色彩が豊かで、これは四季を通して訪れてみたいと強く感じるほど。変貌を続ける中野にまた新しい話題が生まれました。

魚と冬瓜

“裏神楽坂”と池尻大橋、注目エリアにオープンした話題性十分のバー

飲ませ上手な「あの人」の店

2022年、「Don Bravo」の姉妹店である「CRAZY PIZZA SQUARE」が神楽坂にオープンした時、『東京最高のレストラン2023』の座談会で“ニコニコと朗らかで飲ませ上手なサービスの女性”として話題になった山添恭可さんが8月1日、同じビルの2階に独立オープンしたのが「LAURA」です。

大分県出身ということもあり、ナチュラルワインだけでなく、焼酎類も充実。「ゴーヤと新しょうがの浅漬け」「クミンシュウマイ」など、十数種ある手作りの日替わりおばんざいは、のんべえに寄り沿いつつほっとする絶妙の味。締めにはミニサイズの「カレー」や「ごぼ天肉うどん」もありました。コンセプトは“落ち着ける家”だそうですが、確かになんとも寛げます。ちなみに店名はイタリアでの修業時代、苦しかった時に救ってくれた女性の名前で、いつか自分の店を持つ時に付けようとずっと思っていたとか。いい話です。

クミンシュウマイ

そして1階のCRAZY PIZZAは同じく8月1日、店名を「CRAZY BRAVO」と変更し、7,700円のコースのみとなりました。イタリア愛に溢れた柴田正幸シェフの料理をより堪能できると評判なので、早く訪れなくてはと思っています。裏神楽坂エリア、盛り上がってきました。

ナチュラルワインとビストロ料理

最近、新店の登場が相次ぐ池尻大橋には7月20日、ワインバー「passe temps(パストン)」がオープンしました。渋谷「CHOWCHOW」や「Henderson」のマネージャーだった山田隆未さんの独立店です。ひげが印象的なナチュラルワインを愛する店長、といえばお分かりになる方も多いのではないでしょうか。調理を担当する妻の由樹さんは「uguisu」「organ」などで勤務。

6席のカウンターではご夫妻と会話しながら、豊富なナチュラルワインとビストロ料理を楽しめます。開放的な入口には立ち飲み用の大きな木製の円形テーブルがあり、2階にはテーブル席も。いかにも人々が集いそうなお店です。

ムール貝白ワイン蒸し