教えてくれる人
マッキー牧元
株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。とんかつブームの火付け役とも言える「東京とんかつ会議」のメンバー。テレビ、雑誌などでもとんかつ関連の企画に多数出演。
沖縄でマッキー牧元さんの心を打った2軒とは?
帆掛きそば
那覇から車で1時間、うるま市の郊外にその店はあった。飲食店どころか店もない田んぼの中に、ポツンと一軒家が佇んでいる。だが店内は満席である。
メインメニューは、沖縄県産豚と鰹節、昆布、日替わり鮮魚による自慢の出汁で作る「帆掛(ふーか)きそば」と、あさり、鰹節、昆布、日替わり鮮魚によるうまみを凝縮した出汁で肉類不使用の「海風(うみかじ)そば」である。
鮮魚による自慢の出汁ということで、沖縄では珍しい。
2つとも食べたかったが一人なので「帆掛きそば」と「じゅーしー」を頼んでみた。「魚の出汁はどんなもので作っているんですか?」と聞くと、
「タマン、カタカシ、ウムナガー、シタンジューミーバイね」。そうオバーは答えてくれたがさっぱりわからん。
やがて「帆掛きそば」が運ばれた。甘辛く煮た豚肉の塊がどんとのっている。まずスープを飲む。味が澄んでいて雑味がなく、まろやかで優しい。
自家製麺はしなやかで、澄んだスープの滋味ときれいな麺がすっと舌になじんでいく。どちらも丁寧に作られているということがわかる味だった。
一口スープをすすり、麺を手繰った瞬間に訪れる温かい気持ちは、作り手の誠実さだろう。「帆掛きそば」の味の中には、ご主人の誠実さがあった。