【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2024年3月を振り返る

春。出会いと別れの季節です。寂しい別れもありますが素敵な出会いもあり、また、うれしい再会があったりもします。今月のカレーとスパイスもうれしい再会がたくさんありました。

  1. 人気店があった場所に形を変えて戻ってきた南インド料理の名店
  2. ランチ間借りから同じ場所でリニューアルしたスパイス料理と燗酒のお店
  3. 行列店の2店舗目はあえての間借りスタイル。香りを食べるカレーライス
  4. 老舗名店ののれん分け。同じ町の別の場所で待望の移転オープン
  5. 名店出身シェフによるスパイス飲みをリーズナブルに楽しめる新店舗

以上5店舗。僕にとってはすべてがうれしい再会でした。そしてこれからもお付き合いさせてもらいたいと思っているお店ばかり。皆さんにとっても素敵な出会いとなりますように!

【第1週のカレーとスパイス】小田急線ユーザーに朗報! 人気南インド料理店「タンジャイミールス」が経堂に2号店をオープン

外観

幡ヶ谷の人気店「タンジャイミールス」が、2024年2月11日、経堂に2号店となる「タンジャイミールス 経堂店」をオープンさせました。という以上に、名前を変えて帰ってきたとも言えます。

実はこちらの店舗があるのは、元々「スリマンガラム」(現在は祖師ヶ谷大蔵に移転)があった場所。そしてタンジャイミールスのシェフは、その経堂時代のスリマンガラムでも腕を振るっていた方なのです。

店舗はスリマンガラム閉店後に居酒屋となったそうですが、そちらが撤退した後に「思い入れのあるこの場所でもう一度」ということで実にドラマチックな再スタートとなった次第。

内観

カラーリングこそ違うものの、シルエットは以前のスリマンガラムを思わせる店内。ミールスの他にドーサなどもありますが、やはり店名にミールスがつくくらいなので「ノンベジミールス」1,500円をいただきました。

「ノンベジミールス」

カトゥーリ(小皿)に盛り付けられているのは、写真左上からチキンドライ、日替わりのマトンニルギリ、サンバル(南インドの野菜カレー)、ラッサム(南インドの酸味のあるスープ)、クートゥ(南インドの豆カレー)。そしてアッパラム(南インドの豆煎餅的なもの)、ポンニライス、ピックルという構成です。

写真一番手前がクートゥ
混ぜながら食べると新たな味わいに

サンバルとラッサムとクートゥはそれぞれ引き算の優しい味付けですが、ご飯にかけて混ぜながらいただくと、それぞれが補完しあっておいしさの相乗効果が生まれるというミールスの楽しさを存分に味わえます。

ゴロッとした肉のビジュアルが食欲をそそるチキンドライ

チキンドライは単体でわかりやすく全体の満足度を上げてくれるアイテム。そして特に気に入ったのがマトンニルギリ。ニルギリとはカレーリーフやコリアンダーリーフなどのハーブを使ったカレーなのですが、濃厚さと爽快さのアウフヘーベンがなされていて絶品。さすが名シェフだと感動しました。サービスで出してくれたモールコロンブはヨーグルトのカレー。豆のコフタ(団子)入りで、こちらも爽やかでどこか癒やされるような味。

南インド料理というとホテルレストラン仕様のゴージャスなテイストのものか、現地の町場の食堂のような素朴で滋味深いものかに大きく分かれますが、こちらの料理は華美すぎず地味すぎず、素材の味を活かしながらもおいしさの輪郭がさりげなく縁取りされ、美しく際立たせたようなテイストに仕上がっているのが素晴らしいです。

追加料金100円でライス、サンバル、ラッサムのおかわりも可能。基本料金はできるだけ安く抑え、沢山食べたい人には廉価でそれを提供するというスタイルも良いですね。

「サウスインディアンフィルターコーヒー」

取材時(2024年2月)はまだランチ限定営業ということで単品料理のメニューが無かったのですが、エクストラメニューに「ラドゥー」200円を発見。こちらをデザートに、食後の「サウスインディアンフィルターコーヒー」500円も注文。

エアブレンドの様子

コーヒーはシェフ自らエアブレンドしてくれました。コーヒー全体を包みむこむような泡もおいしさにつながる重要な要素。インド料理の後には甘いチャイが合いますが、南インド料理には個人的に甘いコーヒーが合うと感じているのでおすすめです。

「ラドゥー」

ラドゥーはインドのスイーツらしく激甘なことが多いですが、こちらのものは程よい仕上がりでした。スイーツはテイクアウト可能なのでこちらで食べずとも家で食べながらインドを思うのも良いかもしれません。

お土産にぴったりのスイーツ各種

店名を変えて帰ってきた名シェフの味。経堂在勤在住の皆さんはもちろん、南インド料理好きならこちらの料理を味わうためだけに、わざわざ行く価値のあるお店ですよ!

【第2週のカレーとスパイス】川越の人気間借りカレー「タベカレー」がリニューアル! スパイス料理&熱燗ペアリングがアツい「スパイスとお酒 食楽たべ」

埼玉は川越の地で、南インド料理をベースに独自の工夫を加えた料理がマニアにも地元の方にも愛されていた「タベカレー」が、2024年1月11日、間借り先を受け継ぐ形で同じ場所にて「スパイスとお酒 食楽たべ」としてリニューアルオープンしました。

外観

メニューはその時々の旬のものを使用する形で常時入れ替わるのですが、地元川越産の野菜を使用したメニューも充実。

取材日のメニュー
「からし菜のマスタードアチャール」

まずは「からし菜のマスタードアチャール」300円を。マスタードオイル、クミン、フェヌグリークで作ったおひたしのような食感。

「杉錦」

こちらのお店は「スパイスとお酒」というだけあり、燗酒のペアリングもおすすめなのですが、これに合わせるお酒をおすすめで頼んだところ「杉錦」800円(120cc)をぬる燗で出してくれました。どことなくだし感のあるフレーバーで、からし菜との相性も完璧。意味のあるペアリングです。

「春菊と金柑とホタルイカのサラダ」

続いておすすめの「春菊と金柑とホタルイカのサラダ」1,100円。春菊と金柑も川越産。金柑はピックル(インドのスパイスピクルス)にしてから使用しているので辛さもありますが、春菊の苦み、金柑自体の甘みと酸味が調和してバランスの取れたおいしさ。おつまみになるサラダです。

「カブのクートゥ」

続いて川越の小野農園でとれたカブを使用した「カブのクートゥ」980円を。クートゥとは南インドの野菜カレーであり、豆と他の野菜を使ったもの。通常はシャバシャバのカレーなのですが、こちらのクートゥはそれを分解再構築した形で、ドライな豆カレーの上にグリルしたカブ、そしてカレーリーフも飾りではなくしっかりと味の根幹に関わるもの。これが実においしくて。通常はミールスの脇役として存在しているイメージのクートゥですが、主役を張れる存在感と完成度となっていました。素晴らしい!

「白鷹」

こちらに合わせるお酒は「白鷹」800円(120cc)。インドで使われるすましバターであるギーのような芳醇さがあり、ドライなクートゥのおいしさをさらに上げてくれるペアリングでした。

「あん肝のピックル」

他にも色々ありますよ。「あん肝のピックル」700円(ハーフサイズ)はねっとりした食感とすっきりした味わいの調和。

「グリルチキンチェティナード」

「グリルチキンチェティナード」1,200円はこちらも南インド料理のチキンチェティナードの分解再構築。パリッと皮目をグリルしたチキンにチェティナードソース。おいしくないわけがありません。

「海老のビリヤニ」

〆に「海老のビリヤニ」1,200円(Sサイズ)も。フワッと軽やかで上品なビリヤニは色々食べた後でも胃の中に吸い込まれるように収まります。ビリヤニにはコーラだろうということで「クラフトコーラ」700円も。

「クラフトコーラ」

ノンアルコールメニューでも面白いものがあるので、お酒が飲めない方でも楽しめるのが素晴らしいです。

ちろり

間借り時代からレベルが高いと感じていましたが、リニューアルしたことによってさらにやりたいことができるようになり、それが良い形でまわっている様子。

店内にはレコードがたくさん

レコードも豊富で好きなBGMをお願いすることも可能。僕の大好きなTHE WHOをかけてもらってテンションも高まり、最高に楽しくておいしい幸せな時間を過ごすことができました。

落ち着いた雰囲気のカウンター

川越というと都内の方には遠いイメージがあるかもしれませんが、池袋からなら特急に乗れば30分かからないで着きます。

時間と交通費をかけてでも行く価値のあるお店。小さなお店ですので予約推奨です。気になった方は是非行ってみてください。

【第3週のカレーとスパイス】これぞ、香りを食べるカレーライス 高円寺のカレー百名店が恵比寿に間借り店をオープン「ホールスパイスカレー青藍 恵比寿店」

黄色が目印

食べログ カレー TOKYO 百名店」にも選出されている高円寺の人気店「ホールスパイスカレー青藍」が、恵比寿に2号店となる「ホールスパイスカレー青藍 恵比寿店」を2024年2月27日よりスタートさせました。

こちらの場所はさまざまな間借りカレー店が入っていた黄色いビルの4階。実は青藍 恵比寿店も間借り形式なのです。そもそも青藍は高田馬場で間借りカレー店としてスタートしたお店(詳しいお店の成り立ちは過去の記事をご覧ください)。

そう考えると自然な流れであり、先日ご紹介した「カレースタンド ワッカ」も人気店の2号店でありながら間借りスタイルということもあり、今後このようなスタイルは増えていくのかもしれません。

間借りの雰囲気を堪能できるカウンター席

店内は広々とした空間ですが、しばらくは1人営業なのでカウンター席のみの使用となるそうです。

メニューも絞ってチキンカレー1種。これをスパイシーにするか否か、副菜付きの定食にするか否か、ご飯の量をどうするかという選択が基本で、他にトッピングもあります。

「スパイシーチキンカレーZ定食(小サイズ)」に「春菊ポテトサラダ」と「チーズ」をトッピング

「スパイシーチキンカレーZ定食(小サイズ)」1,150円に、「春菊ポテトサラダ」300円と「チーズ」200円をトッピングしていただきました。

副菜もたっぷり

副菜は日替わりで、この日は大根マスタード、パクチー、キャロットクルミクミンラペ、アンチョビキャベツ黒胡椒、紫キャベツ塩こんぶという組み合わせ。

まずは一口目はカレーから、いただきます!

まずはカレーから。口に運ぶ前からスパイシーな香りが鼻腔をくすぐり、一口味わえば「ガリッ」と弾けるホールスパイスの鮮烈な香り。粗挽きだからこその香りの強さ。これこそ青藍のカレーです。店名にスパイスカレーではなくホールスパイスカレーだとあえて書いているのも伊達ではありません。青藍のカレーの中でもスパイシーチキンカレーZは「香りを食べるカレーライス」なのです。

副菜の野菜惣菜はそれぞれ優しい味わいで、カレーの味を邪魔せず引き立てるもの。混ぜながら食べていくと変化が出て最後まで飽きません。

春菊をふんだんに使用したポテトサラダ

春菊ポテトサラダも粗挽き胡椒の刺激と春菊のほのかな苦みがカレーと絶妙に合います。

パルミジャーノレッジャーノをON!

チーズは注文が入ってから1皿ずつ削りたてのパルミジャーノレッジャーノをたっぷりと。これもチーズ好きにはたまりません。

ふわふわのチーズ

また、ご飯も青森産の「まっしぐら」を硬めに炊いたもので、カレーを食べるためのご飯となっているのも良いです。

やはりおいしい。この日は店主の梶田さんご本人が作っていたので当然といえば当然ですが、違う場所でも味のクオリティが落ちないのは流石です。

2号店についてお話をうかがってみると「以前からお店は増やしたかったんです。高円寺とは違う雰囲気の街でやってみたくて。しかし最近は良い物件がなかなか無い。家賃も高くなっていますから。そこで以前自分も間借りからスタートしたのもあって間借りできる物件を探したら、ちょうど良いこちらが見つかったのでスタートしました」とのことでした。

今後お店は増やしていくのか聞いてみると「まだそこまでは考えていません。増やすとなると人を育てないといけないのですが、時間がかかりますから、まずはここを定着させるために先のことは考えずしっかりとやっていくつもりです」と。

やはり飲食業界はどこも人手不足のようです。そんな中でも新たな地に攻めに行ったその姿勢が素晴らしいです。現在こちらの恵比寿店は店内飲食のみならずテイクアウトやデリバリー(フードデリバリー業者による)もしているとのこと。

間借りということで昼のみの営業ですが、恵比寿近辺在住在勤の方は要チェックですよ。