〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー！
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回はフードライターとして活躍する船井香緒里さんに知る人ぞ知る焼き鳥屋を教えてもらった。

教えてくれた人

船井香緒里（カオリン）
福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・フードライター。「あまから手帖」「dancyu」「BRUTUS」ほかメディアでの食関連の執筆をはじめ「dancyu.jp」では連載「大阪呑める食堂」を担当。食の取り寄せサイトや、飲食店舗などのキュレーションもおこなう。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。

大阪北部・江坂の繁華街からちょっと外れた、知る人ぞ知る穴場

新大阪から地下鉄で北へ5分。大阪北部・北摂の玄関口・江坂は、オフィス街や飲食店、商業施設が立ち並ぶ賑やかな街。だけど、南北に走る通りを2本ほど西に歩けば、緑豊かな公園も多く、暮らしのにおいとローカルな空気が漂う。そんな繁華街の外れに、昭和60年創業の「ぶんぶん堂」はある。

アコースティックギターや電子ピアノ、さらには昭和レトロな電話やテレビが置かれた店内。一瞬、何屋さん？と思ってしまうけれど、紛れもない、ここは「ふっつうの焼鳥屋です」と店主・吉田稔也さん。確かに、吉田さんのTシャツがすべてを物語っている（笑）。

時代を遡ること昭和後半。吉田さんはこの地で「景気屋」という名で焼鳥屋をオープン。2012年に「ぶんぶん堂」という店名に変え、ライブもできる食事処、串カツとカレーの店、さらにはライブハウスなどを経て「一生できる仕事だから」と昨年5月、焼鳥を再開したのです。
「吉田さんの焼鳥が食べられる！」と喜んだのは、昔ながらの客たち。江坂在住の地元客はもちろん、常連客の中には、有名なアコースティックギタリストの姿も。しかも、大阪・福島の名焼鳥屋で「食べログ 焼き鳥 WEST 百名店」選出の「あやむ屋」の主人・永沼 巧さんの師匠の一人が、吉田さんなのだ。

平日は、界隈で働くビジネスパーソンや、近所に住む夫婦などがゆっくりと焼鳥を味わう姿が見られ、週末ともなればファミリー客の姿も。つまり、地域密着型の焼鳥屋だ。