食べログ3.5以下のうまい店
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていない“とっておき”の「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、おいしいものを知り尽くしたフードパブリシストの高橋綾子さんが、今大注目しているという「地域密着型」のお店を紹介。「コロナで行き場を失った地元の食材を何とかしなければ!」「近所にパン屋さんが欲しい!」、地元民によるこの2つの要望から誕生した、ベーカリー&スイーツの店「レンローカルスペシャリティファクトリー 二子新地店」です。食べログの点数は3.08ながら、その実力は?
※点数は2022年1月時点のものです。
教えてくれる人
高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
「Made in Local」
神奈川県川崎市高津区に、地元民に愛されているベーカリー&スイーツのお店があります。2020年12月に溝の口店、2021年3月に二子新地店、同年12月にマルイファミリー溝口店と1年の間に次々とオープンし、TVでも取り上げられるなど人気赤丸急上昇中。これらは溝の口駅から徒歩5分の場所にあるカフェ「TETO-TEO」のオーナー、丸山佑樹さんのお店です。
「ウチのカフェは、おもしろいことになぜか情報が集まってくるんです」と丸山さん。コロナ禍で大打撃を被ってしまった農家さんたちの話を聞き、何か力になれることはないかと考えていたところに、「この街にはパン屋さんが意外に少ないから何とかしてほしい」という要望が! そんな“街の声”を拾った丸山さんが地元の素材を使って製造小売業にチャレンジしてみようと奮起し、地元民の願いを叶えたのが「Len」なのです。
もともと「TETO-TEO」は地産地消を謳ったカフェということもあり、地元の生産者さんとは繋がりがありました。そこからさらに紹介されたり、出逢いがあったりして絆が広がっていったのです。「野菜、蜂蜜、卵、醤油、味噌……、どのパンにも川崎産のものが何かしら使われています。自分の店というより生産者さんたちと共に作っている感じがします」と丸山さん。
パンは料理! 独創的な観点がパンの可能性を広げる!
しっとりもちもち高加水食パン「Lenブレッド」は必食
看板商品は店名を冠した「Lenブレッド」です。“シンプルで飽きずに毎日食べられる食パン”を目指し、砂糖とバターを使わず、北海道産のブレンド小麦、塩、水、自家製の天然酵母、そして川崎市麻生区「井上養蜂園」の蜂蜜で作られています。
味の要となるのは地元のフルーツや野菜を使った天然酵母。柿、みかんなど季節によって入れるフルーツは変わりますが、継ぎ足しながら3〜4日かけて完成させます。もうひとつのこだわりは砂糖を使わずに蜂蜜で甘みを出すこと。「井上養蜂園」の蜂蜜はすっきりさっぱりした味わいで、ほんのりと自然な甘みを作るのに最適なのだそう。
「Lenブレッド」の特長は水分を限界まで閉じ込めた高加水であること。しっとり感ともちもち感が断然違います。「水分量が普通の食パンの1.5倍なので、同じように1.5倍ほど長めに焼かないとつぶれてしまいます。だからものすごく“引き”が強いです」と言うように、その日は簡単に手で引きちぎることができないくらいの力強さがあります。トーストすると表面はカリッと、内側はしっとりもちもちのままです。
高橋綾子さん
食べてみると想像を上回るもちもち感! 翌日もほぼ同じ食感で、3日目には簡単に引きちぎれるようになりますが食感はやっぱりしっとりもちもち。いったいいつまでこの食感が持続するのか実験したいくらいです。