おしゃれフードトレンドを追え! Vol.42

“江戸前寿司バブル”は継続中! だから高級寿司はランチを狙え!

空前の寿司ブームである。各時代を振り返っても、今は異常なほどの寿司バブルだ。バブル感を物語っているのが寿司の価格の高騰ぶりで、現在予約困難と言われている超人気店はおまかせコースで 3万円超えが基準、さらにお酒を飲んだら4万円程度になるのだからデートで2人分出したら1回で8万円、これではちょっとした温泉旅行にいけそうな金額だ。

「鮨 和魂」(出典:浜田岳文さん)

高級ホテルや商業施設にも人気寿司店が続々とオープンした。昨年はアマン東京に「武蔵 by アマン」、東京ミッドタウン日比谷には「鮨 なんば 日比谷」が、今年はザ・ペニンシュラ東京に青山「鮨 ます田」が手がける「鮨 和魂」がオープン。どこもオープン直後から予約困難状態なのだとか。

「鮨 なんば 日比谷」(出典:きゅいそんさん)

そんななか食通たちは連日新たな寿司店を開拓中で、もちろんおしゃれ業界でも「この寿司屋がうまい」という話題で持ちきりだ。インスタグラムを見れば、ファッションPR男女は寿司投稿オンパレードだ。売れっ子ファッションフォトグラファー長山一樹さんも「#月一で高級鮨を食べる」と題して、数々のお店を食べ歩いている。皆さん、食への投資額が上がっている様子だが、その気持ちもわかる。一度おいしい寿司を食べてしまうと、次に食べる寿司と比較して、もっともっと高いレベル、そして自分の好みを追い求めてしまうのだから。米の硬さは? 酢の種類や加減は? 店によって塩と砂糖の配合は千差万別だし、江戸前は塩や酢で〆る、蒸す、煮る、タレを塗る、漬けるといったさまざまな仕事がネタに施されているから、比べ始めたら果てしない世界なのだ。

「武蔵 by アマン」(出典:Peragate Charoenpanich (ビア)さん)

当然ながら、本当においしい寿司はそれなりに高い。値段と質がほぼ比例している感もある。しかしディナーに3〜4万円も出して自分の好みと合わなかった場合はダメージが大きいので、初めてのお店は一度ランチで試してみるのがおすすめだ。ランチが食べられる高級店は限られるが、あの予約困難最高峰クラスの「鮨さいとう」にもランチがあるし、玄人人気の通なお店だって土日限定ランチがある場合も。夜は2万超えでも、昼は5千円なんていうお得なランチ寿司。お寿司屋の実力チェックには、ランチタイムを狙うべし!

寿司職人に愛される寿司! 本格派江戸前寿司を肩肘張らずに:鮨 太一(銀座)

銀座の路地裏ビル、カウンター9席のL字カウンター。2008年オープンして以来、鮨好きの間から安定した人気を誇っている名店だ。ランチ鮨は11貫5,400円、17貫(おまかせ)10,800円(ともに税抜)の2種類。伝統的な江戸前が抑えめの価格で食べられる、良心的なお店だ。

大将の太一さんのトークは歯切れよく、傍に控えた弟子をいじりながら軽快に寿司を握る姿がなんとも粋だ。カウンターのお客が一体化するような、和やかな雰囲気を作っている。この店のシャリの特徴は硬さで、しっかりと歯ごたえある米粒が酸味強めでキリッとしている。細かく隠し包丁を入れた赤身やふんわり煮た穴子に、小さめのシャリがしっかり寄り添いながら、ほろほろと口の中でほぐれていく。しっかりめにしめた小肌の爽やかさもいいし、赤身と中トロの巻物も絶品だ。異常な価格高騰バブルの中、銀座で王道の寿司を気軽に楽しめる店があるのはうれしいこと。同業者たちが揃ってここをおすすめしている理由がわかる。

ファッション業界人が集う上品な隠れ家:代官山 鮨 たけうち

写真:お店から

住宅地の一角にひっそりと構えた店、カウンターに8席だけの小さな空間はモダン和風でおしゃれな雰囲気だ。ランチは10貫、小鉢、お椀で4,000円のコースか、お料理、握り8貫、お椀で8,000円(税抜)のコースがある。

赤酢がしっかりきいた小ぶりな寿司は、一口で食べられる上品なサイズ感。寿司の間にホタテの磯辺焼きがさっと出たり、デザートにブドウが出たりと変化が楽しめるのも面白い。白エビ キャビアのせ、アジの上にネギと生姜ペーストのせ、など変化球の組み合わせが来るのがフレッシュな印象。お客には金髪のモード系女子や、20代前半と思われる男の子二人組、外国人などカジュアルで自由な雰囲気だ。

王道スタイルの寿司を日常に:青山すし泉

おしゃれ業界人たちの庭、青山で10年以上に渡って愛され続けているのがすし泉。南青山の外苑西通りを少し裏道に入った場所、半地下にある店内は落ち着いた雰囲気で木の香りに癒やされる。奇を衒うことなく、全てがバランスの良い江戸前寿司。少々味がしっかりめなのでランチから一杯お酒を飲めると尚おいしい。ランチタイムは基本の旬の握りが3,000円(8貫、巻物1本、香の物、お椀)、9貫4,500円、12貫8,000円というラインナップ。ちらしは1,200円(税抜)からと普段使いにも最適。テーブル席もあるので、ランチ接待やお祝い事にもぴったり。大将の小泉さんは海外経験もあり英語が堪能なので外国のお客様を連れて行っても喜ばれるはずだ。

 

ちなみに、今回あいにく予約が取れずリサーチに行けなかったお店も多数ある。特に白金の「鮨 いまむら」、不動前「らんまる」のランチは近々必ずや行ってみようと思っている。寿司食べ歩きにハマったら「#月一で高級鮨を食べる」を便乗タグ付けしてSNS投稿してしまうかもしれない。

おいしい寿司の情報を知っているのは、業界内でも一種のステイタス! 高い、予約困難、見つけにくいの3拍子が揃ったら最高におしゃれということで、一目置かれる存在になる。しかし、予約が比較的取りやすいおいしい寿司を知っていることは、さらに上のステイタスになるはずだ。

撮影・文:小泉恵里