永遠に食べていたいと思わせる焼肉とは……

_mg_9592だんだん年齢を重ねるごとに「ザ・焼肉」がつらくなってくるのである。どうやら私はニンニクに弱いらしく、ギットギトの脂とニンニクにまみれると夜中に胃が痛くなってしまう傾向にある。

 

それで、ここ最近は赤身系や熟成系に移行していたところだったが、久しぶりに肉と白飯で美味しく食べられる焼肉屋さんに出逢えたのである。それが新宿2丁目にある「焼肉 大貫」。

 

「肉」、「タレ」、「米」のすべてが想像を絶する美味しさで、常にごはんのおかわりを3杯はしてしまう。もしおなかが許すのであれば永遠に食べていたいと思わせてくれる素晴らしい三重奏なのである。

 

では何がどうなのかご説明いたしましょう。

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まずは肉。焼き上がってから「2分待って」といわれる「厚切りタン」から始まり、「上ミノ」、「レバー」、「トモサンカク」、「ウチモモ」、「シンシン」、「トウガラシ」、「リブ芯」……など出るわ出るわ、10種類は出てくるはず。

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もちろん「ナムル」や「キムチ」も途中に挟まれてくる。そうそう巨大な「焼きしいたけ」もこちらの名物。裏のヒダに美味しさの水滴がキラキラと輝く頃、口に入れるとじゅわんとエキスが広がって満面の笑みになる。とにかくしいたけも逸品だが、こちらの肉はどれも歯切れが良い。

 

タンだって2cmはあろうかと思われる厚さなのにかみ切れずにウニウニすることはない。本当にほれぼれするくらい美しいサシが入っている。2分は肉汁が全体に回る大切な時間。ここで我慢して待つことによってカリッとした表面の先にはほとばしる肉汁が。

 

店からは「肉汁がうまいのでひと口でいってください。」といわれる。ひと口だなんて美味しい時間は、本当にはかない。とか言いつつ、待ち切れず塩こしょうがしっかり効いたタンをそのままガブリ。一応出るには出るがほとんど使わないレモンも、ハイここまで。

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ここからは特製のタレ物になる。タレの話は後ほどするとして、どの肉もどうしてこんなに歯切れが良いのかわからないが、わかっているのはとにかくサシが美しいってこと。

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あぁ、今日の福島県産「シンタマ」もこんなに色艶美人。「これはフトモモの部分ですね。赤身のうま味と脂のノリがちょうどいいところです。少しだけ脂を落とすくらいに焼くのがうまいと思います。個人的には全然焼かなくていいですけどね。」と笑う店長の薩美 駿さん。

確かにサッと2~3回炙ればいいほどの上物。でもこの肉がもうちょっと焼いてよと言うなら仰せのとおりにいたしましょ。

 

タンの焼き方は本家の浜松店と同じだが、霜降りは肉の状態次第なので任せてもらっているそうだ。さ、焼いてくれるぞ!  思わず「美味しそう〜!」と声が出てしまう。

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ジュ〜ジュ〜、なんて美しい音なのだろうか、なんておなかが空く音なのだろうか。腹ペコにとってはモーツァルトだろうがマーラーだろうがこの音に勝るものはない。焼けた! タレに付けて、ほっかほかの白飯の上に……。ちょっとここで一旦たれの話をいたしましょう。

たれ

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たれの話。たれはですね、門外不出のレシピでなかなか口を割ってもらえないのである。ひとつわかったのが漬け込むことはせず肉を切ってたれでもむだけだってこと。それくらいでなぜあんなにしっかり味が染み込むのか。 謎は深まる。

 

(文字通り)煙に包まれているところに「この間、味が変わらないように浜松のおじちゃんのところ(本家の「焼肉 大貫」)に行ってきました。」と話す薩美店長。

 

本家の大将と薩美さんでは年齢にかなりの差があるのでどうしても味の好みが違う。同じように作っているつもりだが微妙にズレが生じてくるそうだ。のれん分けしてもらった以上、本家の味を正しく伝えるのは責務と考え、定期的に浜松で味の調整をしている。こういうところからしてブラボーな店であろう。

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いわゆるガチの甘いしょうゆ系焼肉のたれではない、ゴマなのだ。甘みとコクが肉の脂に絡むと異次元レベルの化学反応を起こしてまろやかなうま味が口の中で芳醇に広がり、香りとともに究極の味わいと化す。

 

そしてこのたれのおかげでものすごい焼肉量を食べても夜中に胃痛になることはない。が、しかしタンとホルモン以外、すべてこのたれなので途中で飽きるって人もいなくはない。そこで、登場するのがおひつに入ったほっかほかの白飯。そう、このタレと白いごはんは最高のパートナーなのだ。

ほっかほかの白飯

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実は私は白飯だけを好んで食べることが少ない。炊き込みごはんだったり、ふりかけがあったり、お茶漬けだったり、何かしらごはんに味がついている。ところが、このごはんは何もなくても3杯はいける。

 

私をそんな風に変えたのが新潟「かやもり農園」のお米。歴史は古く1700年から農業を始め、もう12代目(まだチビちゃんだけど)までいる。植酸栽培で育てたコシヒカリは甘みと粘り気と弾力がピカイチ!  冷めても味が落ちることがない。植酸栽培って?って聞かれると思うので、詳しくはこちらをどうぞ。

かやもり農園HP

 

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とにかく美味しい。だからこの店では早い人だと上ミノあたりからごはんを頼み、肉が焼かれると左手にお茶碗を持って待機するほど。焼き上がった肉をたれに浸してごはんの上にのせる。真っ白なごはんの上にたれが染み込み、肉とともに口に入れる……、しばし陶酔する。なんという口福の瞬間なのだろうか。

 

小さい頃は焼肉といえば白いごはんを頼んでいたのに、いつぞやからか肉は肉だけで食べて冷麺やビビンパで〆るようになってしまった。でも小さい頃の感動を思い起こさせてくれたのがこの店だ。焼肉の醍醐味はこれよ、これ、「肉とたれと白いごはん」。

 

肉とたれで3杯食べた頃、「テールスープ」が運ばれてくる。これに白いごはんを浸せば、あと2杯いける。またこれがうまいんだ。

 

店長、おかわり!

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私が一番好きな部位は「リブ巻き」。「肩ロース」と「サーロイン」に挟まれた「リブ芯」を巻くようにある肉でこれが衝撃的なうまさ。「シャトーブリアン」も真っ青だ。

 

繊維が一定方向ではなく非常に複雑。肉質はやわらかく、幾重にも押し寄せるたれの味を感じながら2秒で飲み込めてしまう。肩ロースとリブロースを扱っている店ならこの部位は取れるようだが、今まで出てきたことがないので聞いた方が賢明だろう。こちらでも必ず出るわけではないので確認が必要だ。

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私「それはそうと賄いでお肉食べられるの?」

 

薩美店長「食べられます」

 

え、働こうかな。毎日こんなお肉が食べられるなら幸せだし。それはさておき、メニューはコース9,000円、10,000円、12,000円、15,000円とちょっとお値段高め。だから肉の一番良いところだけを使うので“端っこ肉”ができる。それが賄いとなり、スタッフの“焼き”の練習にもなっている。

 

そうそう、こちらでは最高に美味しい瞬間を食べてもらうため、焼くのはすべてスタッフにお任せなのだ。2017年ぐんぐんキている、お任せ焼肉! 全員、最高の焼き方ができるようにと日々賄いを食べながら練習しているというわけだ。ちなみに薩美店長の好きなのもリブロース系。霜降り万歳!

今日のお品書き

コース/15,000 円(税サ抜)

▼コース内容
・ナムル
・タン塩
・焼きしいたけ
・キムチ
・ホルモン(たれ)
・赤みとしもふり 7~8種の生肉
・こだわりの白米
・テールスープ
・デザート 

その日の仕入れによってメニュー内容が変更になる場合がございます。

※消費税率変更に伴い、表示価格とお会計時の価格が異なる場合があります。