辛くてしびれる、本格四川料理の店が増加中

最近、都内に本格四川料理の店が急増中なのをご存じでしょうか? 汁なしの本格的な四川風担々麺がヒットしたりと、四川料理ならではの“麻辣”味にハマる人がどんどん増えてきています。

 

この麻辣という言葉、“辣”は唐辛子などに代表される辛さのこと。では“麻”はというと、「しびれ」なのです。料理にこのしびれを加えてくれる代表的な香辛料が「花椒(ホァジャオ)」。日本における「山椒」の中国版のような存在です。「麻婆豆腐」の「麻」を生み出している香辛料、といえばわかりやすいでしょうか? 今回はその「花椒」の魅力に迫ります。

麻婆豆腐に欠かせない「花椒」

「麻辣連盟」総裁が語る“麻=しびれ”の持つ力

「四川料理というと“麻辣”というイメージが強いかもしれませんが、実は意外と新しい概念なんですよ。四川地域に唐辛子が入ってきたのは今から約150年ほど前。でも“麻”、つまり花椒は、もっと古くから使われていたものだったんです」

そう語るのは、四川料理を愛し、その魅力を日本で広める活動をしている団体「麻辣連盟」の総裁・中川正道さん。

「麻辣連盟」総裁の中川正道さん

 

「四川留学をきっかけに四川料理の奥深さにどっぷりはまってしまった」という中川さんによると、花椒には興奮作用があり、中国では古来より皇帝に献上されるなど珍重されてきたスパイスだったのだとか。湿気が多く蒸し暑い場所が多いという四川地域。そういった気候的な要因からも、刺激で食欲を増進させ、疲労を発散させるような“麻辣”料理が広まったのだそう。

 

取材時に中川さんが持ってきてくれた花椒がこちら。

花椒(赤)

花椒(青)

 

花椒には赤と青があり、採れる季節が違うそう。一粒口に含んでみると、それぞれしびれ方も香り方も全く違います。言葉にするなら赤の方は口の中にしびれが広がるようで、青の方は刺すようなしびれと香り高さが印象的。四川料理のシェフたちはこれらを料理によって使い分けたり組み合わせたりしていくそう。花椒、奥が深い……。

 

「いいものだと、一粒でも30分ほどしびれが継続しますよ。中国全土で花椒は採れるんですが、グレードが高いのは四川産と雲南産。収穫シーズンになると、あちこちから四川料理のシェフたちが大量に買い付けに来る光景が見られます」(中川さん)

 

実は中国全土でもここ5年ほどで四川料理ブームが起こっていたらしく、四川産の花椒はどんどん値上がり傾向に。品質の良い花椒を手に入れるため、直接現地農園と契約する人もいるとか。花椒に注目しているのは、日本だけではないのです。

 

ちなみに粒(ホール)は炒めものなどに、パウダーは麺料理や冷菜に使うのが基本的な使用方法。料理にホールで入っている場合はよけて食べるのが本場流だそうですよ!

 

「日本では、味の要素は甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の“五味”と定義されていますが、六番目の要素として“しびれ”が入るのでは?と僕は思っています。かつての『食べるラー油』ブームでは“辛さ”が、パクチーブームでは“香り”が日本人に広まっていきました。次は“しびれ”なんじゃないかな、というのが持論です」(中川さん)

花椒の人気は、日本の家庭料理にも?

四川料理店で楽しめる花椒ですが、じつは日本の家庭料理界でも注目が高まっています。

 

「ただ揚げるだけ、焼くだけの料理でも、花椒を使うだけで一気に本格的になるというか、グッと豪華な料理に感じられる効果があると思います。うま味や辛味はさまざまな食材から感じられますが“しびれ”はなかなかない。面白い香辛料ですよね」

フードコーディネーター・管理栄養士の大島菊枝さん

 

そう語るのは、フードコーディネーター・管理栄養士として活躍する大島菊枝さん。大島さんによれば、これからの季節に花椒料理はぴったりとのこと!

 

「花椒は健胃作用があると言われているので、暑い夏で胃腸が崩れやすいときにいいですよ。ホールの方が風味はいいんですが、初めて花椒を使う人で日常的に使いたいなら、まずはパウダーを粉山椒の感覚で使ってみることをおすすめします。例えば麻婆豆腐に使うのはもちろん、きのこや卵のスープにパパっとふったり、フライドポテトにかけて風味をプラスしたり。インスタントのラーメンにかければいっきに本格風味になるし、肉みそに入れるとお店の味になります」(大島さん)

花椒の魅力が味わえるお店はここ!

厳しい暑さが続くこの夏は、花椒でしびれたい! そこで、中川さんと大島さんに、花椒の魅力をたっぷり味わえるお店を紹介してもらいました。

「麻辣連盟」総裁・中川さんのおすすめ

天府舫(テンフファン・新宿)

「実は、四川料理ブームの影響もあり、近年できた四川料理のお店だと四川地域出身でない人が手がけていることが多いんですね。でもここはオーナーも料理人も皆さん四川出身の、都内では珍しいオール四川のお店。僕がかつて留学していたときに地元の食堂で食べていたような、とてもローカルな味がします」(中川さん)

「汁なし担々麺」はお店の名物料理 写真:お店から

175°DENO担担麺 GINZa

札幌に本店を持つ担々麺専門店で、東京都内にも銀座含め2店舗を展開中。「花椒にはすごくこだわっているお店。店主自ら四川の農家から買い付けてきた、とても品質の良いものを使っています」(中川さん)

基本のメニューは「担々麺(汁なし)」と「担々麺(汁あり)」のみという潔さ。しびれがやみつきになると評判です。

一番人気は「担々麺(汁なし)」 出典:たんぼたさん

フードコーディネーター・大島さんのおすすめ

MASA’S KITCHEN 恵比寿

「花椒を強くかせるのでなく、調和させる感じで使用しているのが印象的なレストラン。パンチのある料理も好きなのですが、こちらのお店は『女子会にも使えそうな本格中華』という感じなのが気に入っています」(大島さん)

大島さんのおすすめは、クリーミーな「冷やし担々麺」とのこと。

「冷やし担々麺」は夏に食べたいメニュー 出典:djkenkenpaさん

かづ屋(目黒)

平成元年創業、昔ながらの中華そばを彷彿とさせる、あっさりとしつつも奥深いラーメンを食べられる人気店。「ワンタンが美味しいので有名なんですが、担々麺もおすすめです」(大島さん)

人気メニュー「ワンタン麺」と、「担々麺」を合わせた「ワンタン担々麺」にも注目。

担々麺もワンタンも両方食べたいかたは「ワンタン担々麺」を 出典:BARとCigarとJAZZとさん

行ってみたいお店は見つかりましたか? この夏は、第6の味覚・しびれにチャレンジしてみてください。

 

写真(中川さん、花椒)・文/川口有紀