〈「食」で社会貢献〉
2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、より良い世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まず身近な「食」から意識してみては? この連載では「食」を通じての社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店や施設をご紹介。
人と自然との共存を示唆してくれる農場が今、注目を浴びている。音楽プロデューサー・小林武史さんが2019年に開いた、サステナブル ファーム&パーク「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」(千葉・木更津)。約9万坪の広大な地で「農」と「食」、そして「自然の循環」を体感することができる。その全貌を、2回にわたり紹介していく。
教えてくれる人
船井香緒里
福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。「あまから手帖」「dancyu」「BRUTUS」などでの食にまつわる執筆をはじめ、「dancyu.jp」で連載「大阪呑める食堂」を担当。食の取り寄せサイトや、飲食店舗などのキュレーションもおこなう。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。
サステナブルな生き方の、気持ちよさを体感できる場所
都心を車で出発し、アクアラインを通り1時間ほどで千葉・木更津へ。内房総の広大な自然のなかに「KURKKU FIELDS」はある。見渡す限り、まばゆい緑と青い空が続き、思わず深呼吸をしたくなるロケーション。
そのスケールは、東京ドーム6個分。敷地内にはオーガニックファームや鶏舎、牛舎があれば、場内で育まれた素材を扱うレストランやベーカリーなどもある。さらには、自然と調和するかのように佇むアート作品があり、宿泊だってできる。食や農、アートなどを通じてさまざまな角度から、サステナブルについて、楽しく学ぶことができる場所なのだ。
「未来を誰かに委ねるのではなく、持続していける社会を自らの手で選んでいく」
プロデューサーである小林武史さんの思いから生まれた「KURKKU FIELDS」。その前身は、小林さんが2010年に立ち上げた「耕す 木更津農場」だった。「次の世代も使い続けられる農地」を目指し、平飼いの養鶏や有機農業などを実践。太陽光発電をはじめ、飼育する動物のフンや生ごみを堆肥に活用するなど、環境に対してさまざまな取り組みを行ってきた。
その後も、パーマカルチャーデザイナーや、シェフなどあらゆるクリエイターと共にアップデートを重ね「KURKKU FIELDS」が誕生したのは2019年11月のこと。
ちなみにパーマカルチャーとは、パーマネント(永続性)、農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語。「人と自然が共存する社会をつくるための手法であり、持続可能な社会のシステムをデザインしていく考え方です」。そう教えてくれたのは、フィールドの自然管理などを行う吉田和哉さん。森の散策や農業体験など、ファーム内での体験ツアーでは、子どもたちから“ヨッシー”の愛称で親しまれる人気者だ。
「KURKKU FIELDS」で楽しく学ぶ、循環の仕組み
「敷地の自然循環の仕組みは、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんにデザインしていただき、『太陽』『土』『水』という3つの循環の仕組みを作り上げています」と吉田さん。その根底には、人間が自然環境に、そして地球にとってポジティブな存在でありたい、という考えがあるという。早速、吉田さんに敷地内を案内していただくことに。
「全ての始まりは、太陽光のエネルギーです」。敷地内には約8,700枚のソーラーパネルが備えられ、太陽熱と光の恩恵を取り入れている。サステナブルなエネルギーを礎にしながら「水」と「土」の驚くような循環が機能していた。