〈極上のうま辛グルメ〉

食通が愛してやまないうま辛な逸品を紹介する「極上のうま辛グルメ」。グルメライターの武智 新平さんのおすすめは、本格派エスニックを提供する、隠れた人気店だ。

教えてくれる人

武智 新平

1970年生まれ。食雑誌をメインにフリーの編集&ライターとして活動中。食事では寿司、そば、カレー、洋食全般など、お酒は特に日本酒が好きで、仕事でもそれらを担当することが多い。一見でも心地よく、かつリーズナブルに楽しめる店を中心に紹介していきたい。

神泉駅を出てすぐ。踏切横にある小さなタイ

井の頭線で渋谷からひと駅しか離れていないというのに、駅周辺は飲食店も多くなく落ち着いた雰囲気。そんな中、赤と青のラインでデザインされた外壁がひと際目立つ店がある。「モーラム酒店」だ。とはいえ、酒類の販売店ではない。

井の頭線の脇に佇む。神泉駅の改札を出て階段を降りると、青と赤のラインで彩られた同店がすぐに目に飛び込んで来る

タイ料理、それも東北部のイーサン地方の料理をメインに楽しませてくれる店として2018年にオープンした。店内は、カウンター席にテーブル席が4席という大きさ。まるで現地のラフな食堂に来たかのような雰囲気で気分が上がるのだ。

店内に赤と青のラインはないものの、お酒が並び、ポスターが貼られ、にぎやかな雰囲気が満ちている
 

武智さん

落ち着いた街の中に鎮座する派手な外観、にぎやかな店内というお店。値段はリーズナブルなのでひとり客も多いそうですが、友人らと訪れワイワイと盛り上がりたい店です。

現地仕込みの辛さは一度経験してみていただきたい

「日本人向けに味をアレンジを加えず、イーサン地方そのままの味を提供したかったんです」とオーナー・丸山さんが語る。食材や調味料もできるだけ現地から仕入れるほか、「ホテルで腕を振るったシェフではなく、街にある人気定食屋の調理人を探しました」。そして友人の紹介で出会ったのがナムさんだ。

料理長・ナムさん(58歳)。イーサン地方の飲食店で“きれいよりも地元民に愛される味”を提供する店での腕を見込まれ、「モーラム酒店」の料理長としてスカウトされた

タイ料理の味の基本は甘味、塩味、そして辛味の3つ。なかでも東北地方のイーサンは辛味を強めた料理が特徴だ。ナムさんはタイから輸入する唐辛子のほか、「パクー」という東北地方の味の決め手となる辛口ソースも使って、青パパイヤを使ったソムタム、田舎風カレースープのゲーンオムなどを仕上げていく。

辛さレベルがひと目でわかるメニュー表

トムヤム、ガパオ、パッタイなどお馴染みのタイ料理から並ぶが、その味付けは現地そのもので辛口。メニューには唐辛子の本数で辛さが表示されているが(子供レベルでも辛い)、好みの辛さに変更してもらうこともできる。また辛さを抑えるためのトッピングの説明もあれば、辛くない料理も多数用意している。

 

武智さん

メニューにはイーサン地方そのままの辛く味付けした料理がずらり。辛さの調整が可能なのもうれしいところ。また料理の多くが小皿で提供されるので、ひとりで出かけてお酒を片手にあれこれ食べられるのも◎です。