食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに、東京の“料理がおいしい酒場”を教えてもらう連載! 第19回は、日本酒が豊富な居酒屋として酒好きに愛される店「卯水酉」のおいしいポイントを教えてもらいます。

【東京メシうま酒場 vol.19】「卯水酉」

四谷三丁目に日本酒好きがこぞって通う居酒屋があります。常時200種ほどの日本酒を取りそろえ、飲み放題やペアリングなど、日本酒を思う存分楽しめるのが人気の秘訣。 ということで、日本酒のディープかつ楽しい世界を味わいに行ってきました。

四谷三丁目の交差点から目と鼻の先、とはいえ一本曲がった路地、派手な看板はなく、あるのは地下への階段のみ。

階段を下りた先は普通のマンションの部屋のような扉にインターホン。本当にここでいいんだろうか?と不安になりつつインターホンで予約している旨を伝えると、扉を開けてくれました。

扉を開けてビックリ! 目の前にはいきなり日本酒がぎっしり詰まった冷蔵庫が。「ここでよかったんだ!」という思いとともに「これは相当本気なお店だぞ」と改めて日本酒をしっかり堪能する心持ちに。

今回は刺し盛りと生牡蠣食べ比べが入った、日本酒ペアリングと2時間飲み放題付きの「卯水酉ペアリングコース」8,800円(2日前までの予約価格)を予約。普通の飲み放題ではなく、お店の人がしっかり料理に合ったお酒をペアリングしてくれた上で、それ以外は好きなものを飲み放題というシステムが実にうれしいです(このシステム、他のお店も取り入れるべき!)。

「大号令 限定直汲み 夏生原酒」

ということで、食前酒に選んでくれたのは「大号令(だいごうれい)限定直汲み 夏生原酒」。フルーティーな飲み口でとにかくフレッシュ。1杯目にぴったりです。

お料理は、まずは前菜盛り合わせから。

・しじみのお椀

・マスカルポーネチーズ&昆布の佃煮

・蛸とお野菜の煮もの

・もずく酢

・バイ貝の旨煮

・食用瓢箪の漬物

・新じゃがマスタード和え

合わせる日本酒は「北光正宗」。

「北光正宗」

酸味がすっきりしていて、プラムのような香り。

お料理はどれも素材の味を生かした、上品な薄めの味付け。こちらはあくまで日本酒を楽しむお店。料理の味が主張し過ぎず、お酒と組み合わせた時に双方の味が引き立て合うように仕上げているのです。

続いて、すべて宮城県石巻市の「大森式流通」から仕入れている新鮮なお刺身。

・太刀魚(たちうお)

・コロ鯛(ころだい)

・伊在木(いさき)

ほどよく脂がのっていて、いかにも日本酒に合いそう。

オリジナルラベルの「松美酉」

ということで、お刺身にはこちら。神奈川のお酒「松美酉」(卯水酉オリジナルラベル)。刺身の脂をさらっと流し、旨みを膨らませてくれます。

「日高見」

さらに飲み放題ということで「魚でやるなら日高見だっちゃ!!」というキャッチコピー通り、魚にはぴったりと合う定番の「日高見」を。

石巻の魚に石巻のお酒、合わないはずがありません。お刺身の後に口に含むと、酒と魚、それぞれの旨みがぐぐぐっと口の中で倍増します! これはもはや感動の域。

続く焼魚は、トロ鯖西京焼き。焼き加減も見事です。

こちらに合わせるのは、福井の「九頭龍」。お燗でさらに引き立ったフルーティーな甘みが、焼き魚のしっかりした旨みとがっちりタッグを組みます。

同じ酒と魚という組み合わせでも〈冷酒+刺身〉〈燗酒+焼魚〉では、こうも印象が変わってくるかと、マリアージュの奥深さを感じます。

そしてこちらの名物といえば牡蠣!

今回は北海道厚岸産と兵庫県相生産の生牡蠣食べ比べ 。どちらもクリーミーさと身のぷりぷりさが絶妙なバランス。

合わせるのは「海風土 sea food」という名前通り、牡蠣などの魚介類にぴったりな一杯。クエン酸の多い白麹を使用していて、魚介類特有のにおいをさっと洗い流してくれます。

生牡蠣に合わせてさらにもう一杯。珍しいアルファベット表記の日本酒「Fu.」。

8%という低アル原酒特有の飲みやすさとフルーティーな酸味がやはり生の魚介類と合う! こういった変わり種のお酒を試せるのも、日本酒専門の飲み放題店ならでは。

そして揚物は牡蠣フライとささみフライ。カリッと香ばしく揚がっているので、どんな日本酒とも合いそうな一品。

ということで、お酒は「七本鑓」のにごり酒。

シュワシュワッとガス感があるのがにごり酒の特徴ですが、味はドライで揚げ物にぴったり。揚げたて熱々のフライと、冷え冷えのにごり酒の組み合わせが絶妙。

こうなってくるとお酒が止まりません(笑)。

せっかくなのでちょっと変わったお酒をとお願いして、選んでくれたのが「金陵」の純米吟醸生原酒。地元香川のさぬきオリーブ酵母を使用した、トロピカルな味わいのお酒。マスカットのような爽やかな味わいが特徴。

締めは、炊き込みご飯焼きおにぎりのだし茶漬け。

日本酒の飲み比べを楽しんだ後の締めは、やっぱりご飯。お米に始まりお米に終わる、これぞ日本に生まれてきてよかった!というやつです。香ばしい焼きおにぎりと優しいだしの組み合わせで、コースのラストに落ち着く一品。

「廣喜 純米」

ご飯で締まった!などと言いつつ、飲み放題なので意地汚く最後の最後に日本酒をさらにお願い。「廣喜 純米」は磨き七割でしっかりと日本酒感を味わえる一本。日本酒飲み比べの最後にどっしりとした一杯で、正真正銘の締めです。

飲み放題メニュー以外にも追加料金で頼める貴重な日本酒も沢山。とにかく日本酒ワールドにどっぷりと浸りたい人におすすめのお店です!

※価格は税込

撮影:GENIUS AT WORK

取材:小宮山雄飛

文:小宮山雄飛、食べログマガジン編集部