まるで芸術作品のような珠玉のデザートに感動!

「神の島レモンとカモミールジュレ、マルメロシャーベット、スーパーラ・フランスのハーブマリネ」

1品目は“青い香りをつけた洋梨”をイメージしたデザートです。「神の島レモン」の果汁を搾ったムースの上にはトスカーナのオリーブオイルとエストラゴンでマリネした山形県産の「スーパーラ・フランス」、カモミールのジュレ、食用菊、諏訪湖で穫れたマルメロにディルとエストラゴンを加えたシャーベットをのせて、最後にレモンの皮を削りかけます。完熟させないラ・フランスは果物というより野菜に近く、マルメロの爽やかな酸味と食用菊の苦味、ハーブの香りにオリーブオイルと、これはまるでサラダ感覚!

「クレープシュゼット」

2品目は「クレープシュゼット」です。通常、クレープをオレンジソースで煮るのですがどうやら様子が違います。国産小麦粉とライ麦粉のクレープでパルミジャーノ・レッジャーノとクリームチーズ、皮付きのみかんに白ワインビネガーを加えたジャムを包み、煮込んだキャラメルとみかんの果汁を合わせたソースでアロゼ(=フランス料理の技法で肉や魚に油をかけながら焼くこと)します。

シャンパンやワインにも合いそう!

仕上げにはイタリアのチーズ「タレッジョ」を使ったソースをかけ、添えたみかんには黒胡椒を振り、ローストしたピーカンナッツをのせ、パルミジャーノ・レッジャーノを削って完成したクレープはまさに料理の域! ソースが染み込んだモッチモチのクレープの中からはとろんと溶けたチーズがたっぷり入り、口の中でいくつもの“おいしい”が花開くよう。

「栗のパフェ」

3品目は「栗のパフェ」。鬼皮をローストして牛乳に一晩浸し、栗焼酎をちょっぴり入れてブランマンジェを作ります。次郎柿のコンフィチュールでフレッシュな柿をマリネし、しまんと地栗のペースト、八丁味噌のクランブル、米油とバニラの鞘でコンフィした栗、加賀棒茶のアイスクリーム、パートフィロにアーモンドの粉と粉糖を振って焼き上げたチュイールを飾ります。柿の香り、味噌のうまみ、栗の甘み……、こんなに多彩な味が混在しているのにこれだけ調和するのは見事! そしてパリパリ、ホクホク、フワフワ……、食感のエッセンスは最後まで飽きさせることがありません。

料理感覚のデザートが新しい!

「くるみと醤油のフィナンシェ」

「お菓子で湯気を出すって本当に難しいんですよ」と極限の焼きたてにこだわった「フィナンシェ」は信じ難いほどのおいしさです。料理では焼き方の良し悪しでおいしさが変わることは知っていましたが、焼菓子にこれほど火入れの大切さを感じたことはありません。エッジはカリッとして表面はサクッ、中はしっとりでフワフワ、こんな「フィナンシェ」があったなんて! これぞスペシャリテと言える逸品です。

メインとなるのはパフェ

冷菜、温菜、メイン、デザートとフランス料理のコースのように進んでいく青木さんのアシェットデセール。「甘いけど甘くない」「まさかこんな食材を使うとは」「この食材とこの食材がこんなにピッタリなんて」と、どれも驚きと楽しさにあふれています。その上、これだけの多種多彩な味わいと食感をまとめあげるバランス力も素晴らしい。その根源には硬さ、温度、水分量など、作りたてを食すための完璧なる計算があるのです。それも料理人としての実力もある青木さんだからなせること。今はネットで国内だけでなく海外のものまで手に入る時代。だからこそ目の前で作られ、最高のタイミングで食せることに魅力を感じるのです。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

撮影:大谷次郎
取材、文:高橋綾子、食べログマガジン編集部