〆はラーメン。贅沢素材の究極の一杯

スープは、青森シャモロック ザ・プレミアム#6のガラを沸騰させずに7時間、じっくり煮込んで作る。

そしてデザート前の料理の締めを飾るのは、なんと、ラーメン。この発想の豊かさ、ジャンルにとらわれない遊び心が、渡部シェフの真骨頂と言えよう。

もちろん、その遊び心は確かな食材があってこそ。この日のラーメンは、旨味が強く弾力ある肉質が特徴のブランド鶏・青森シャモロックのなかでも、さらに希少価値が高い青森シャモロック ザ・プレミアム#6(ナンバーシックス)で出汁をとった「黄ニラのラーメン」。

育成期間が長く、年間600羽ほどしか生産されないザ・プレミアム#6のうち、200羽を仕入れているそうで、調理中に店内に漂う出汁の香りに期待も高まる。

経営していたラーメン店は、現在は後進に任せ、新たなジャンルを邁進中。

イタリアンベースでなぜラーメンなのか。その問いの答えは、同店の料理のベースを担当するひろみシェフに関係する。ひろみシェフの実家が製麺所で、彼女自身が以前、ラーメン店を経営していたからだ。

当然、ここで提供する麺も実家の製麺所が、北海道から取り寄せた希少な国産小麦で作ったもの。「自家製麺ならぬ、実家製麺です」とは、渡部シェフの談である。
やさしいながらもしっかりとしたコシが特徴の麺と、滋味あふれる青森シャモロック ザ・プレミアム#6のスープ。日本各地の醤油をブレンドしたコクのあるかえしと、こだわり抜いた最高級のラーメンと言える。

定番だけど定番じゃない。常に進化を続けるバスクチーズケーキ

レシピをこまめに調整し、バスクチーズケーキを追求し続けている。

コースの最後は、「バスクチーズケーキ」。こちらも同店の定番と言えば定番なのだが、少しずつ改良を重ね、現在では「バスクチーズケーキ146号」という名前が付いている。

ひろみシェフ曰く「材料の配合はもちろん、焼き型の素材でも味わいが変わるので、季節やコースに合わせて、日々研究して最適なものを提供し続けていたら146号になってしまった」とのこと。同じようでいて、実は全く違うケーキなのだった。

コニャックの香りがふわりと漂う、大人のデザート。ワインにも合う。

最新は取材時点で148号というが、この日の気候やコース内容に合わせ146号のケーキが登場。

暑い季節に合う、クリーミーでありながらもすっきりした甘みと、少しプルプルとした食感で、お腹がいっぱいでもするりと入るデザートになっていた。

料理は80%の素材の力と15%の調理技術、5%の遊び心でおいしくなる

日本や世界にまだまだあるおいしいものへのアンテナは常に張り続けている。

「いんぼすこ」の魅力を語るなら、一つは渡部シェフが日本各地、世界各地から見つけて仕入れてくる素材と、その食材のポテンシャルを余すところなく料理に落とし込むアイデア、そして素材への愛情を熱く伝える人柄だろう。

どの食材も、渡部シェフがこだわって見つけてきたもので、どうすればそのおいしさを表現できるかの観点から考えられた料理。「目指したいのは、おいしいもの屋」の言葉通り、ジャンルにとらわれない発想で、これからも驚きの料理が楽しめる店だ。

麹町「エリオ・ロカンダ・イタリアーナ」でのサービススタッフ経験から、トークも軽快な渡部シェフ。

レストランのコンサルタントも務める渡部シェフ。この店のほかに、近くにはパーティールームがあるそうで、店以外でもシェフの料理が楽しめる。

今後は、ディナータイム終了後はワインバーとして使えるような展開を想定しているほか、スタッフを増やして、そのスタッフたちが自らのアイデア実現にチャレンジできるような仕掛けもしていきたいという。

神宮前に移転し、ますます目が離せない店だ。

ワインは、シャンパーニュとブルゴーニュが中心。ペアリングもあるが、1本をじっくりと飲むのもおすすめ。
店内はカウンター席のみ。6~8名で楽しめる。

※価格は取材時のもの。税・サービス料込。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。
※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:岡崎たかこ(UP SPICE)
撮影:大鶴倫宣(UP SPICE)