【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#68】「toi印食店」
スパイスカレー流行のきっかけとなった大阪は今も多くのお店が行列をなし、さらなる新店舗が生まれ続けています。大阪には多くのカレーマニアが存在するのですが、大阪カレーマニアの間で話題となり、連日多くのお客さんが集まるお店が奈良にあります。今回は地元客はもちろん、大阪から通う人も多いという注目のお店をご紹介しましょう。近鉄奈良駅近くにある「toi印食店」です。
日本人シェフによる南インド料理のお店なのですが、おしゃれなカフェのようでもあり、現地にある食堂のようでもあるという絶妙な雰囲気。
メニューはカレーの種類と数を選べるミールスという南インド定番の定食がメイン。「Curry全種+本日のおかず」2,300円をいただきました。
見た目からして絢爛豪華なミールス! この日のカレーはチキンマサラ、ダルフィッシュ、マトンクルマ、サンバルの4種。これにダル(豆スープ)やワダ(豆でできた南インドの甘くないドーナツ)などがつきます。
チキンマサラはトマトの程よい酸味とうま味が華やかな逸品。マトンクルマは骨と皮つきの羊肉にハーブを使ったニルギリと呼ばれるタイプのグレイビーがマニア心をくすぐるカレー。
ダルフィッシュ含めノンべジのカレーもおいしいのですが、僕がそれ以上に気に入ったのは肉や魚を使わないダルとサンバル。インド現地でもミールスがおいしいと評判のお店に行くと野菜のみだったりすることも少なからずあり、ミールスとは基本的に野菜料理だと思うことが多いのですが、こちらのお店もまさにそうで肉がなくとも十分に楽しめるミールスなのです。
ワダがまた非常においしい。ふわふわとサクサクが共存。半分はチャトニをつけて食べ、半分はサンバルに投入してサンバルワダという南インドの定番料理のようにして食べ、一度で二度おいしいです。
現地料理としてのミールスは、ひとつひとつの料理はシンプルで素朴ながら混ぜていくことで完成するおいしさという方向性が多いのですが、こちらのミールスは派手でおいしいのです。ひとつひとつが個性あって印象に残る味わいであり、混ぜてもそれがぶつかることがないバランス感。ミールス初心者にとってはこういうものの方が理解しやすいでしょう。そして様々なミールスを食べている方にとっても、この野菜のおいしさには感動するはずです。それに肉や魚の存在感もあるのですから満足度が高すぎる一皿が完成しています。
シェフは北インド料理、南インド料理、どちらのお店でも腕を振るってきた経験がある方だからこそのミールスです。言うなれば北インドで食べる南インド料理のような魅力。そこに日本人ならではの感覚も入っているという面白さ。これは確かに大阪から通う方が多いのもうなずけます。
「多くの方にもっと日本人が作るインド料理の可能性を伝えたいんです。インド料理の知恵を借りて地元野菜のおいしさに気づいてもらえたりするとうれしいですし、インド食文化の楽しさを伝えていくことを自己表現のひとつとして発信していけたらと思っています」とシェフは語ってくれました。
食後にミニサイズの「アイスチャイ」200円も。スッキリとした飲み口のチャイ。絢爛豪華なミールスの後を爽やかにまとめてくれて、これまた素晴らしい。期待して行ったのですが、その期待を超えるクオリティに感動しました。
お店は大人気で記帳制です。まず最初に名前を書き、そこから並んで待ちましょう。わざわざ行く価値も、並ぶ価値もある、今の奈良のカレーを代表するお店のひとつだと言えるでしょう。