〈サク呑み酒場〉

イマドキの酒場事情がオモシロイ。居酒屋を現代解釈したネオ居酒屋にはじまり、進化系カフェに日本酒バー。どこも気の利いたツマミに、こだわりのドリンクが揃うのが共通点だ。ふらっと寄れるアフター5のパラダイスを、食べログマガジン編集部が厳選してお届け!

地下にひっそり佇む隠れ家的ラーメン店

目印は控えめなメニュースタンドのみなので、見落とし注意。

東京・三鷹にあるラーメン店「鶏そば山もと TONARI」は夜のみの営業で、ビルの地下1階に店舗を構えている。地上には控えめなメニュースタンドがあるのみという隠れ家的ラーメン店である。

階段を下りると、店舗は同経営の「焼鳥 山もと」の隣にある。「んっ? 店名は『鶏そば山もと TONARI』だけど、“焼鳥店”の隣?」。店の背景を知らないと少々戸惑うので、話を整理しておこう。

「焼鳥 山もと」の隣にある、“夜版”「鶏そば山もと」

右の店舗が「焼鳥 山もと」で、左が「鶏そば山もと TONARI」。扉には以前の店の名前が残っているので、要注意。

まず、三鷹の「焼鳥 山もと」は夜のみ営業の焼鳥店で、昼の時間帯にここで月~土曜の1時間半のみ「鶏そば 山もと」を営業している。つまり「焼鳥 山もと」の“隣”にある夜版「鶏そば 山もと」といった意味合いだ。

このラーメン店がすこぶる評判がよく、昼しか食べられないラーメンを夜も楽しんでもらおうと開いたのが、「鶏そば山もと TONARI」なのである。

「えっ、ここがラーメン店?」と、誰もが驚く店内

客席は変型Uの字形のカウンター席のみ。

「鶏そば山もと TONARI」の店頭にもメニュースタンドが置かれ、そこに書かれたものと同じ内容のものが扉にも貼ってある。扉には以前の店の名前が残っているが、ここが同店なのは間違いない。
扉を開けると「えっ、ここがラーメン店?」と驚くような、落ち着いた造りの客席が現れる。何でも以前の店は接待利用が多かったそうで、その造りをそのまま生かしてラーメン店に仕立てたとのこと。

小皿料理を肴に飲み、ラーメンで締める

自然派ワインもクラフトビールも、客が自分で冷蔵ショーケースから取り出すスタイル。

実はこちらの店、普通のラーメン店とはひと味も、ふた味も違う魅力を兼ね備えている。その魅力とは、“ラーメン前”の店ということ。

聞きなれない言葉だが、そば店で日本酒と気の利いた肴で一杯楽しみ、最後にそばでツルッと締めるのが“そば前”。“ラーメン前”とは、そのラーメン版のことである。メニュースタンドも「三〇〇円均一の小皿料理と旨いラーメンで ナチュラルワイン、クラフトビールが飲める店 ラーメンだけのご利用も大歓迎です」と書いてあり、客は各々のペースで小皿料理を肴にワインやビールを楽しみ、最後にラーメンでズルッと締めくくる。

自然派ワインはすべてボトルでの販売で、価格は4,000~6,400円。クラフトビールも缶で揃え、価格は700~1,500円である。ともに、冷蔵ショーケースから客が自分で取り出すスタイルで、価格はすべて商品に表記してある。ここだけの話、かなりお得な価格設定なので、ぜひとも体験しておきたいもの。

あれもこれも目移りしてしまう、300円均一の小皿料理

小皿料理は300円均一で、つい何皿も食べたくなる。少しずつ種類も増え、現在は11種に。

小皿料理は現在11種あり、すべて300円というから驚きだ。価格は「ラーメン店のつまみなら300円くらいが手頃だよね!」と決めたとのこと。メニュー内容も、自然派ワイン、クラフトビールと相性がよく、それでいてラーメン店にあっても違和感がないもの。あるいは、「鶏そば 山もと」のラーメンの具材を上手に活用したものなどが揃っている。

ミックススパイスがやみつきになる「手羽先とスパイス」や、岩手の銘柄豚の肩ロースの挽き肉を使用した、ジューシーな「岩中豚の焼売」。卵黄とユッケダレの濃厚な味が、淡白なササミのおいしさを引き立てる「ささみユッケ」。ラーメンの具材を小粋な一品に仕立てた「葱雲吞」「糸島メンマナムル」「生搾菜の浅漬け」と、魅力の品々がいっぱいだ。

チャーシュー、味玉などラーメンの具材を酒の肴に出す店はあるが、ひと手間を加えて“お色直し”をするのが同店流。クラフトビールもうすはりグラスが出されるので、ひと手間かけてこれに注いで飲む。日本酒のにごり酒で澱(おり)が沈殿するのと同様、濃くてにごったクラフトビールも成分が下に沈むので、グラスの上と下で味が異なり、それを楽しむことができる。

口の中でとろけるロースチャーシューの至福

「山形豚のロース叉焼と山わさび」はワインとの相性もばっちり。

数ある小皿料理の中で特にワインと相性がよいのが、「山形豚のロース叉焼と山わさび」。薄切りのロースチャーシューを折りたたんで花のように盛った、何とも華のある一品。香りづけに山わさびをかけ、オリーブオイル、塩、黒胡椒を加え、塩分の主張がはっきりしたチャーシューのおいしさを引き立てている。口の中でスーッと溶けていく食感も、また心地よい。