地場食材や産直素材を活かすためのシンプルな調理

コースのパスタは自家製のものを使うことが多く、この日はイタリア南部で好まれているオレッキエッテに旬の食材を合わせたものが用意された。オレッキエッテはイタリア語で“小さな耳”の意味。外側と内側の厚みの違いから異なる食感が楽しめ、ソースや具材の絡みも良い。

また、南イタリア地方では魚介料理の仕上げに使うことが多い「モリーカ(煎りパン粉)」を最後に振りかけている。こちらも自家製バゲットを挽いてから煎って作られたもので、香ばしさや食感のアクセントに。

手打パスタを使用。旬の菜の花や桜海老をメインにミディトマトでオイルベースのソースに爽やかさを加える
「桜えびと菜の花 手打オレッキエッテ」
 

山本憲資さん

当初はコースの中の一品と思い食べたパスタですが「パスタだけでもまた食べに来たい! 他のパスタも味わってみたい!」と思えるほど抜群においしかったです。

メイン料理に使う広島県竹原市のブランド牛「峠下牛(たおしたぎゅう)」は、雌牛だけを飼育する全国的にも珍しい牛。肥育に時間はかかるものの肉質は柔らかく、力強い赤身と脂のバランスが絶妙で、ふくよかな味わいが特徴だ。

そのため、焼く前の下味は塩・コショウのみ。店では溶岩のプレートを下からガス火で熱し、立上る熱風を使ってじっくり火入れすることで、峠下牛の旨みを最大限に引き出している。

グリルした新玉ねぎと盛り合わせる。1人前80〜90gのボリュームがあり満足度も高い
峠下牛の炭火焼き。添えられたのはマルドンの塩とその燻製塩、タスマニア産粒マスタード。ソースはバルサミコ酢をベースに赤ワインやスパイスを合わせたもの
 

山本憲資さん

広島のブランド牛のなかでも特に味わい深く柔らかな「峠下牛」。絶妙な火入れ加減も相まって、アラカルトの一品かと思えるほどのボリュームにもかかわらずあっという間に完食してしまいました。

地元産のイチゴをたっぷり使ったパルフェは春限定のデザート。岡崎産ブランド卵「ランニングエッグ」を使用したマスカルポーネクリームは、コクがありながらもさっぱりとした口当たり。イチゴ、クリーム、クランブルの風味や食感が楽しく、食後の余韻にもゆったり浸らせてくれる味わいだ。

地元産イチゴとマスカルポーネチーズのパルフェ

ジャンルレスな調理法で食材と向き合い、提案

店名は広島弁で「これ、どう?」の意味の「これどがぁな」をアルファベット表記にしたもの。遊び心も利いている!

吉永さんの作り出す料理は、細かなところには存分に手を掛けつつ素材をシンプルに活かしたものばかり。使う食材も調理法も、イタリアンをベースにしながら素材に合わせた方法を積極的に取り入れているため、イタリア料理店というよりイタリアンをベースにしたジャンルレスなレストランという説明のほうがしっくりくるかもしれない。

また器にもこだわりが満載で、愛知県の蔵元や作家の品や、石都・岡崎市の伝統産業である石材を使った個性的なものなど、料理と合わせてひと皿ずつじっくり愛でたいものが揃っている。

素材・調理法・器の細部にまで心を尽くし、それぞれにストーリーを感じさせる絶巧なレストラン。予約はお早めに。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で 事前にご確認ください。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

撮影:間宮 博
文:森下右子・食べログマガジン編集部