〈ニュースなランチ〉
毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!
香港随一の名店の味を受け継ぐレストラン
百“華”繚乱のごとく高級中華レストランが集まる銀座に、新たなスターが登場した。2021年9月、GINZA SIXにオープンした「家寳 跳龍門(カポ チョウリュウモン、以下跳龍門)」。香港の名門中華の日本支店で長年、総料理長を務めてきたシェフの新たな境地に出会える店だ。
少しハードルが高く感じる高級中華も、ランチなら気軽に楽しめる。「跳龍門」では、平日限定のお手頃なセットから、シェフのスペシャリテを楽しめるコースまで優雅な銀座ランチにぴったりなメニューがそろっている。
中華の達人の新たなチャレンジ
店内には特注したという見事な木彫りの工芸品などがふんだんに飾られ、まるで中国の由緒ある邸宅に招かれたようだ。ゴージャスな雰囲気は抑え目で、気品のある空間が美食に酔いしれるのにふさわしい。
料理長を務める袁 家寳(えん かぽ)さんは、ミシュランの星を獲得し、VIP御用達として知られる香港の名店「福臨門酒家」の日本店で、伝統的な広東料理を修業。2007年から同店の総料理長に就任し、その後、店が「家全七福酒家」と名を変えた後も総料理長として名門の味を守ってきた。そして新境地を求めて「跳龍門」をオープンした。
「受け継いできた老舗の料理を守りつつ、新しい料理にもチャレンジしていきたいですね」と袁さんは語る。干しアワビやフカヒレ、ツバメの巣など袁さんが得意とする高級素材に腕を振るいつつ、より新時代にふさわしい中華を披露してくれる。
平日限定! あめ色に輝く絶品釜焼きチャーシューは必食
名門から受け継ぐ味を、まずはコスパ抜群の平日限定ランチセットで楽しみたい。セットは『香港式』焼き物セット、担々麺セット、牛バラ湯麺セットの3種類ある。この中から、焼き物セットと担々麺セットをご紹介しよう。
『香港式』焼き物セット。焼き物とは、下味をつけた豚や鶏、鴨などを焼く、香港スタイルのローストポークやローストチキンのこと。同店では名店のレシピをさらに改良。“屋台飯”のイメージがある焼き物を、香ばしさとタレ、肉の味わいのバランスが絶妙な洗練された一品にしている。
テーブルに運ばれてくると、フワッと立ちのぼる甘くどこかエキゾチックな香りに胸が高鳴る。白いご飯を覆うように「釜焼きチャーシュー」「釜焼き鴨」「豚バラ肉の焼き物」がのせられており、タレと肉汁がほんのり染みたご飯が食欲をそそる。
チャーシューは、野菜やミックススパイスを合わせた特製のタレに一日漬け込んで、味と香りをしっかり染みこませた後、専用釜でこんがりと焼き上げている。麦芽糖で照りをつけて仕上げられた肉には程良い弾力があり、タレも甘過ぎず、旨みのある豚肉の味わいがしっかりと感じられる。
焼き鴨は、しっかり乾燥させてから焼いた皮がパリパリとし、脂がのった肉はジューシーで濃厚な味わい。添えられている甘酸っぱい梅ソースがよく似合う。豚バラ肉はあっさりした塩味。カリカリに焼かれた表面の下にあるのは、しっとり柔らかい肉。ジュワッと湧く脂が甘い。三者三様のおいしさで、ご飯が進んで止まらなくなる。
担々麺は広東料理のメニューではないが「お客様に喜んでもらえれば」と袁さんがさまざまに研究して開発したオリジナルレシピ。店自慢の旨みが満ちたスープにたっぷりの芝麻醤とピーナッツバターを合わせ、濃厚でクリーミーなスープになっている。
このクリーミーなスープに絡む麺は、袁さんが30年以上使っているという極細麺。ツルツルとのど越しが良く、コシがあり、トロッとした濃厚なスープと好相性。香り高い特製のラー油は辛さ控えめで、ゴマの風味と香りが楽しめる担々麺だ。