〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は出版界きってのグルメとして知られる柏原光太郎さんに、東京・荒木町の日本料理店を教わった。
教えてくれる人
柏原光太郎
日本ガストロノミー協会会長。大学卒業後、出版社に勤務し、グルメ本を手がけたことで食の奥深さに目覚める。料理は作ることも食べることも大好きで、一人娘の弁当を毎日作っていたことも。料理好きのための食の発信基地としての役割を担うべく2017年12月社団法人「日本ガストロノミー協会」を設立。
荒木町の日本料理店「御料理ほりうち」
東京・荒木町は、通好みの和食店や居酒屋が軒を連ねる飲食の街。ここ数年は若手料理人が独立して開いた新店が増え、活気づいているエリアだ。そんな荒木町で2018年夏に「御料理ほりうち」をオープンした堀内さやかさんは、都内一流ホテルや新宿の割烹で研鑽を積み、神楽坂の和食店で料理長として活躍した料理人。堀内さんは神楽坂にいた時代から「日本ガストロノミー協会」のイベントに登壇していたため、柏原さんは堀内さんの実力を知り、独立開業を待ちわびていたのだという。
食べログでの点数は3.13だが、はたしてその知られざる魅力とは?
※点数は2021年10月時点のものです。
柏原さんイチ押しは、この3品
「御料理ほりうち」のコースは9〜10品ほどのおまかせで、11,000円、14,300円、19,800円の3種類。季節によって変わる料理も多いが定番もいくつかあり、柏原さんのイチオシは「鶏のもつ煮」「フカヒレのスッポン鍋」「白いご飯とおばんざい」の3品だ。
火入れの加減が見事な「鶏のもつ煮」
柏原さんが太鼓判を押す「鶏のもつ煮」は、「御料理ほりうち」を初めて訪れる人に必ず出されるシグネチャーディッシュだ。
柏原さん
堀内さんが『日本料理をもっと身近に感じてほしい』と、出身地である山梨県の郷土料理「鶏のもつ煮」をアレンジして開発した料理です。食べてみると、居酒屋で出されるものとは異次元の日本料理に昇華されていることに驚きます。レバーやきんかんといった鶏のもつが、火入れ次第でこんなにおいしくなるということを味わって知ってほしい。せっかくなら、日本酒を熟知したサービス担当の秋山さんのお薦めの日本酒と一緒に
堀内さんによると、この料理の火入れのコツは、ぐつぐつ煮込まないこと。昔ながらの郷土料理の「鶏のもつ煮」はずっしりと重い味わいだが、堀内さんは飴色になるまで煮詰めた地(=たれ)を鶏もつの表面だけに絡めることで、軽やかに仕上げているのだとか。ほんのり甘いタレがからんだレバーやハツやハツ元、砂肝は、その日にさばかれた新鮮なものばかり。
その上のコロンとした「きんかん」は、焼き鳥店では「ちょうちん」と呼ばれる、鶏のお腹の中に入っている卵のことだ。黒文字で表面を突き、とろりとした半熟卵の黄身のような「きんかん」を絡めながら味わうもつは、濃厚すぎない絶妙な甘辛さ。サービス担当の秋山さんが「鶏のもつ煮」に合わせて薦める、しっかりした味わいの日本酒とともに堪能してほしい。