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【今これがキテる!】~クロワッサンスイーツ(前編)~
なんだか最近目にする機会が増えた気がする……そんな、“今まさにキテる”フードを紹介する不定期連載。今回は、「クロワッサンのワッフル」「クロワッサンのフレンチトースト」など、最近やたらと耳にすることの多い“クロワッサンスイーツ”について、お菓子の歴史研究家の猫井登さんに教えてもらいました!
教えてくれる人
猫井登
1960年京都生まれ。 早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。退職後、服部栄養専門学校調理科で学び、調理免許取得。ル・コルドン・ブルー代官山校にて、菓子ディプロム取得。フランスエコール・リッツ・エスコフィエ等で製菓を学ぶ。著書に「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス刊)「おいしさの秘密がわかる スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版刊)がある。
なぜ三日月形なの? クロワッサン誕生の歴史を探る
クロワッサンとは「ひし形」もしくは「三日月形」に焼かれたパンを指すが、いつどのように誕生したのか? よく言われるのが、以下の説だ。
1683年、オスマントルコ軍がウィーンに侵入しようとトンネルを掘っていたところ、朝早くから仕事をしていた街のパン屋がその音に気付き、ウィーン軍に知らせた。これによりウィーンは陥落を免れ、戦争に勝つことができた。これを記念して「トルコ軍を食ってやる」との意味で、トルコの紋章である三日月形のパンを作ったという。このエピソードが、マリー・アントワネットが嫁いだことによりオーストリアからフランスに伝わる。
当初、クロワッサンはパン生地を薄く伸ばして作られていたが、1920年頃、パリのパン屋で現在のようなバターを折り込むパイ生地状のものが作られはじめた。日本でも、1955年頃にはこのようなクロワッサンの販売が、ベーカリー「ドンク」により開始された。
ハイブリッドスイーツブームを牽引。第1次クロワッサンスイーツの象徴=クロナッツ!
第1次クロワッサンスイーツブームともいうべきものとしては、2013年からブームとなった「クロナッツ(クロワッサン・ドーナッツ)」だろう。クロナッツは、フランス人パティシエ、ドミニク・アンセル氏がニューヨークの店で2013年5月10日に販売を開始。瞬く間に大きな反響を呼び、米国タイム誌が「2013年最も優れた発明品25」の一つに選出。日本でも、「ミスタードーナツ」が2014年に「ミスタークロワッサンドーナツ」の販売を開始。翌2015年には、「ドミニクアンセルベーカリートウキョウ」が表参道にオープンし、ブームは過熱していく。
注目すべきは、この時期にクロワッサン・ドーナッツ以外にも、さまざまなクロワッサンスイーツが誕生したことだ。同年には「クロワッサンたい焼き」が販売され、2014年には、ベーグル専門店「BAGEL&BAGEL」が「クローグル(クロワッサン+ベーグル)」を発売。
ほかにも、「クロワッサンラスク」「クロッキー(クロワッサン+クッキー)」「クロッフル(クロワッサン+ワッフル)」なども誕生した。しかしながら、クロナッツを産み出し、ブームの立役者となったドミニクアンセルベーカリートウキョウが、2019年に表参道店を閉じるに至り、日本でのクロワッサンスイーツブームは、一区切りを迎える。
第2次クロワッサンスイーツブームのリーダーは、クロッフル!
第2次クロワッサンスイーツブームを牽引しつつあるのが、「クロッフル」だ。第1次ブームのときは、アメリカ系スイーツという色彩が強かったが、今回は「トゥンカロン(韓国発祥の大きく派手なマカロン)」に次ぐ、韓国系スイーツという色彩が強い。一説によれば、韓国ソウルの繁華街である明洞(ミョンドン)に店を構え、さまざまなクロワッサンスイーツを提案する「BUTTERFUL&CREAMOROUS」が発信源ともいわれる。
クロッフルというのは、クロワッサン生地をワッフルメーカーで焼いたもの。見た目はワッフルだが、クロワッサンのサクサクした食感と香ばしいバターの味わいを堪能できるという意外性と、家庭でも簡単に作れるという手軽さも手伝い、人気が上昇している。農林水産省のホームページ内「2021年流行スイーツ予想」コーナーに、担当職員の予想としながらも、「クロッフル」が入っているのも興味深い。
もうひとつ、ポストパンケーキブームの流れで2014年頃から人気のフレンチトースト(フレトー)の一種である「クロッフレトー(クロワッサン+フレンチトースト)」も見逃せない。さらには、クロワッサンそのものをスイーツ化した「菓子パン系クロワッサン」も見逃せない。これについては、次回後編で詳しく説明しよう。