〈おいしいテイクアウト〉

新型コロナウイルスの影響で外食も自粛ムード。こんな時だからこそ「お家でおいしい食事をして元気になってほしい」と、テイクアウトを始める飲食店が続々と登場している。小さな子供がいて諦めていたあのお店の味も、いつもは予約でいっぱいのあのお店の味も、テイクアウトならお家でゆっくり味わえる。在宅勤務で自炊も飽きてきた、そろそろプロの味が恋しい……。さあ、もっとテイクアウトを活用して、日本の素晴らしい飲食店を応援しよう。

 

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※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※テイクアウトは期間限定の場合も多く、日々内容も変化するため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

「NEW NEW YORK CLUB(ニューニューヨーククラブ」【自由が丘・アメリカ料理】

テイクアウトグルメの拡充とともにジワジワと人気を集めているのが、ニューヨークを代表する屋台メシ「チキンオーバーライス」。90年代前半、戒律上の制限が多いイスラム圏の出身者向けに誕生したハラルフードだ。センセーショナルな味が人種を超えて支持され、今ではすっかり街の名物。世界各地に広まり、ここ最近は日本でも提供するお店が増えてきた。

日本での火付け役は東京・自由が丘にある「ニューニューヨーククラブ(NEW NEW YORK CLUB)」のオーナー。10代の頃からNYカルチャーをこよなく愛する振角勇輔さんだ。

 

マンハッタンにあるチキンオーバーライス発祥の人気店「The Halal Guys」を中心に、これまで数百食を食べ歩き、1年ほど試行錯誤の末に本場の味を再現。2015年、お店をオープンした当初は無名の料理だったが、右肩上がりでファンが増えているそうだ。

「CHICKEN OVER RICE」

特に苦心したという蒸し茹でチキンには、クミンやクローブなどをミックスした秘伝のスパイスを使用。細かく切り分け丁寧にほぐしているため、たとえ冷めても食感は驚くほど柔らかい。元々テイクアウトを想定している料理だけに、先割れスプーン1本あれば口元を汚さず食べ切れるのもうれしいポイントだ。

 

あえて水分量を少なめに調節しているというチキン、パラパラのジャスミンライスに、ヨーグルトベースの自家製ホワイトソースが味の決め手。しっとりと優しい酸味で全体を包み込み、複雑なスパイスの香りを浮かび上がらせる。

 

カイエンペッパーをふんだんに使用している自家製レッドソースはとても刺激的。ヨーグルトの効果でマイルドに感じるが、段々と刺激が強くなるため、かけ過ぎにはご注意を。

 

本場にないオリジナル要素が自家製キャロットラペ。甘酸っぱく食感豊か、カレーで言うところの福神漬けのような役割だ。ここにも巧みにスパイスが使用されており、チキンやライスに混ぜ込んでもきっちり調和する。

 

NYの空気感を大切にするお店だけにセットメニューも本格派。「CHICKEN OVER RICE(チキンオーバーライス)」850円は、飲み物が付くcomboにしても1,050円からとリーズナブルである。

チキンオーバーライスと相性抜群の「CHERRY COKE」

comboにプラス150円のオプションとなるが、是非オススメしたいドリンクが「CHERRY COKE(チェリーコーク)」だ。アメリカ産らしいストレートな甘さがレッドソースの辛さを押さえ込み、チェリーの香りで食欲を増進してくれる。

 

お酒と合わせるならcomboにプラス600円の「BROOKLYN LAGER(ブルックリンラガー)」が良い。キレのあるラガーらしい飲み口ながら、エールのような力強いホップの香りも楽しめるため、チキンオーバーライスのパンチの利いた風味にピタリとはまる。

お気に入りの皿を使って盛り付けを楽しめるのもテイクアウトならでは

より贅沢な味わいを目指すなら、「AVOCADO (アボカド)」200円をトッピングして盛り付けよう。ホワイトソースだけでも十分なめらかな口当たりになるチキンオーバーライスだが、アボカドを加えることでクリーミィさやコクが倍増する。レッドソースを多めにかければ、辛み、甘み、旨みが相乗し、なおのこと多幸感に包まれるはず。

「CHOPPED SALAD」

プラス350円で追加できるサイドセットには、NYで流行中の「CHOPPED SALAD(チョップド サラダ)」も用意されている。ミックスビーンズをはじめ、細かく刻まれた紫玉ねぎやパプリカのピクルス、トマト、レタス、アボカドなどが入り栄養バランスは文句なし。オリジナルドレッシングから漂うカルダモンの香り、優しい蜂蜜の甘さもたまらない。

「FALAFEL OVER RICE」

チキンオーバーライスと同様、中東諸国からの移民がニューヨークに浸透させたハラルフードの代表格が「FALAFEL OVER RICE(ファラフェルオーバーライス)」1,000円(ドリンク込みのcomboは1,200円〜)。こちらも自家製ホワイトソースをかければ、クミンやコリアンダーといったブレンドスパイスが香り立つ。

お肉を使用していないヘルシーな料理ながら、細かく砕かれたヒヨコ豆とサクサクとした衣の食感が小気味良く、レッドソースの刺激も相まって食べごたえは抜群。プラス350円を支払えば、チキンオーバーライスのトッピングとしてファラフェルをふたつ追加できるので、名物料理をまとめて堪能するのも良い選択だろう。

「SMOKED SALMON CREAM CHEESE BAGEL SANDWICH」

麻布十番にある姉妹店がニューヨークスタイルのベーグル専門店なだけあり、サンドウィッチのレベルも高い。NYでLOX(ロックス)と呼ばれている定番メニューが「SMOKED SALMON CREAM CHEESE BAGEL SANDWICH(スモーク サーモン クリーム チーズ ベーグル サンドウィッチ)」950円(comboは1,150円〜)。

 

ずっしり凝縮感のある生地に馴染むのは、なめらかなクリームチーズ。噛むほどに燻製サーモンの旨みと香りが広がるなど、個性あふれる食材が互いの隙間を見事に埋めている。紫玉ねぎやパプリカのピクルスによる酸味のアクセントも素晴らしい。

「CARROT CAKE」

締めのデザートもバリエーション豊か。NY気分を盛り上げるなら「CARROT CAKE(キャロット ケーキ)」450円がちょうどいい。

 

キャロットだけでなくクルミやレーズンも入った生地は濃密で、シナモンやナツメグが豊潤に香る。そこにクリームチーズを泡立て固めたフロスティングが混ざり込み、またまた複雑ながらも一体感のある風味にまとまるのだ。

主食、軽食、デザートを問わず、ニューニューヨーククラブのメニューに共通する不思議な魅力。程よくドライな土台にクリーミィさと複雑な香りを加えるテクニカルな調理法もあるが、何より惹かれるのはニホンナイズされていない本物の異国情緒を感じるからだ。

 

しばらく海外旅行は難しそうではあるが、自由の国に思いを馳せ、口内だけでもニューヨーク気分で満たしてみてはいかがだろうか。

 

※価格はすべて税抜

 

 

撮影・文:佐藤潮