一番美味しいカツカレーを追い求めて

刺激的な香りが鼻腔をくすぐるカレーライス。うまさがギュッと衣の中に閉じ込められたとんかつ。そのふたつが同時に楽しめるのがカツカレー。浅野温子と浅野ゆう子W主演ばりのぜいたくなひと皿を、いつでも、どこでも「うまい、うまい!」と食べてきた。しかし、である。どうもカレー屋、洋食屋、とんかつ屋でカツカレーは、その方向性が微妙に違うというのだ。

 

さらに美味しくカツカレーを食べ続けるためにも、真相を究明せねば!というわけで、「カツカレー探求班」を集め、調査を開始したのである。

カレー屋のカツカレー

餅は餅屋! カレーが主役、カツは薄めでナイスアシスト

 

さまざまなスパイス・ハーブを調合し、香り豊かで刺激的な味わいに仕上げられたカレー。カツはカレーが程よくなじむように、やや薄めにカットされて揚げられることが多い。衣の香ばしさとサクッとした食感、さらに豚の甘味がスパイシーなカレーにアクセントを加えるという計算だ。とんかつ店のカツカレーとは逆で、まずはカレーを味わい、そしてカツとともに口に運んでみる。カレーだけでは味わえない、絶妙のハーモニーを楽しめるはずだ。

ロダン

切れ味抜群のカレーとジューシーなカツの共演

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この店のカレーは、炒めた大量の玉ネギをベースにし、カルダモン、クローブ、コリアンダー、クミンなど数種類のスパイスとS&Bカレー半分をブレンド。ひと晩寝かせることで、スパイシーですっきりとした切れ味にまとめ上げる。仕上げにコクのあるカシューナッツソースをかけて、さらにアクセントを加えて出来上がりだ。 d024そこに豚ロースをラードで香り高くカラリと揚げたカツが添えられ、カツカレーが誕生する。濃い焦げ茶色で程よい熱さのカレーは香り豊かで、コクも十分。それが口の中でジューシーなカツと一体となる感覚はまさに至福で、リピーターが後を絶たないのも納得。別料金のチーズをトッピングするのもお薦め。

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常時15〜16種のスパイスが常備され、それらを駆使したカレーももちろん魅力的だが、カレーファンからも「日本一美しい」と称されるこちらのカツカレーをまずは食してほしい。850円という高コスパでボリュームもたっぷり。すぐにその魅力の虜になるはずだ。

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【メニュー紹介】

「ロースかつカレー」850円の他、「特製ビーフカレー」850円、「えびフライカレー」1,200円など

 

トリコカレー

濃厚な日本カレーをカツが引き立てる

「この店のカツカレーの主役はカレーであり、とんかつはあくまでトッピング」だと言い切る店主。

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その主役のカレーだが、8種のハーブ、スパイスをメインにマンゴー・桃などのフルーツソースを配合。独特なうま味を醸し出す濃厚な、これぞ“日本のカレー”。

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味は中辛・辛口と選べるが、さらに辛味スパイスで辛くしたり、付属のチキンスープを注ぎ、カレーの濃さを自分好みの濃度にカスタマイズできたりと、ひと皿でさまざまな味の広がりを楽しめるのも高ポイント。ルーの持ち帰り販売も行っているので、家庭でも店の味を試したいところだ。

 

ライスは秋田小町を使用し、白米と玄米から選べる。男性と女性の普通盛り・大盛りの量が別設定になっており、女性には小盛りもある配慮もうれしい限りだ。

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さて、脇役のカツであるが、豚肩ロースを日本酒やパプリカなどいくつものスパイスに漬け込み、しっかりと下味が付いたボリューミーなとんかつとなっているので、それだけで食べても十分に美味しい。しかし、さっくり、さっぱり感で濃厚なカレーを邪魔することなく、むしろカレーのコクを盛り立てるあたり、これぞ超名脇役!

 

もともとは福岡で十数年経営していた店を6年前に新代田に移転。さらに3年近く前に、中野に再移転。近年では外国人客も多くなってきたという、日本が誇るカツカレーをどうぞ!

 

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【メニュー紹介】

「カツカレー」1,200円の他に、「ピピカレー」1,200円、「タコカレー」1,100円など

 

アサノ

リッチなカレーの店

欧風と和風、そこに現地仕込みの東南アジアのテイストを加えた、ここでしか出合えない味わいを体験できるのが「アサノ」のカレーだ。

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カツは小型ながら柔らかい肉質と甘い脂が特徴の高座豚を使用。それだけなら、互いに主張し合いまとまりが悪そうに思えるが、カレーはさらりとし、さらにカルダモンが効果的に使われ、豚の甘さを引き立てるように爽やかな味に仕上げられている。

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カツもカレーの邪魔にならないように、1cm弱の厚みで極細のパン粉をまとわせ、サラダ油でカラリと揚げられている。と、それぞれが主役でありながら、お互いの個性を引き立てる脇役にもなっている。だからこそ、口に含めば、香り豊かなカレーと、サックリで芳醇な甘みのあるカツが程よく絡み合い、「あぁ」とため息の出る美味しさとなるのだ。本当に必食のうまさである。

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5年後をめどに移転も考えているというが、「この味は変わることなく、楽しんでもらいますよ」(店主・浅野信三さん)。とはいえ、カツカレーファンなら今すぐ足を運ぶべきだ。

【メニュー紹介】

「カツカレー」1,450円の他に、「チキンカレー」「ポークカレー」ともに950円、「エッグカレー」1,000円など

 

洋食屋のカツカレー

カツとカレーはダブルインカムな共働きプレイで各々独立

 

カレーは欧州風で芳醇な香りとコクを持ち、マイルドなのが特徴。そしてカツは豚のうま味を見事に閉じ込めたさっくりとした仕上がり。またカツとカレーが別になって提供されることも多く、カツだけ、カレーだけ、両者一緒にと、気分に合わせて食べ進みたい。

 

ふたつの味が重なるが雑然とすることなく、とんかつ店やカレー店にはない上品でリッチな味わいのカツカレーで、ちょっとぜいたくな気分にさせてくれるはず。

レストラン 香味屋

長年愛されてきた老舗のカツカレー

大正14年創業の老舗によるカツカレーは、元々は裏メニューだったそう。しかし10年ほど前からグランドメニューとして提供している。 c0671

長い歴史の中で基本的には変わらない製法のカレーは、S&Bカレー、C&Bカレーと炒めた小麦粉を配合し、玉ネギ・ニンジン・セロリ・ニンニク・ショウガなどを炒めた物と合わせて、チキンブイヨンに投入。さらにリンゴなどのフルーツチャツネを加えて、じっくりと煮込んで完成。

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通常のカレーにはここにポークやビーフも加えるのだが、カツカレーは肉を抜いている。上州せせらぎポークのヒレ肉を使用し、開いてから薄く叩き伸ばしてから揚げるカツの邪魔をさせないためだ。

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年配の客も多いので、カレーライスと一体となったときに食べやすくと工夫されたアイデアである。辛すぎず、野菜のうま味がたっぷり溶け込んだ上品な味わいのカレーと、柔らかいカツのハーモニーは絶妙。料理長いわく、別皿で提供されるので、お好みの食べ方で召し上がってほしいとのこと。

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さり気ない心遣いがなされ、老若男女に長年愛されてきた老舗レストランによる絶品カツカレーをご堪能あれ。

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【メニュー紹介】

「カツカレー」2,500円の他に、「カレーライス」1,750円、「ビーフカレー」2,300円など

 

洋食・ワイン フリッツ

女性・ファミリー層にも人気のお店

かつて赤坂見附で人気を博していた「フリッツ」で働いていた代表の田苗見賢太さんが、その店のフリット=揚げ物メニューに衝撃を受け、店名を受け継ぎ、昨年5月に小石川にてこちらをオープンさせた。

a0091 揚げ物メニューだけでも15種ほど常備しているこの店のロースカツは、薄めの衣で3分半ほど揚げたのち、2~3分余熱で寝かせる。すると、100~110gのボリュームで中はジューシーだが軽い味わいの仕上がりとなり、あっさりと食せるというわけだ。

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またライスの上にとんかつを置くが、カレーには触れない状態で提供するため、別提供されるソースとマスタードを付けて、カツ単体でも、カツカレーでも楽しめるようにしているのも、こだわりだとか。

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気になるカレーはいって焦がしたスリランカスパイスと鶏肉やたっぷりの野菜などを炒め合わせ、具が溶け切るまで煮込んだサラサラカレー。このカレーとカツのバランスが絶妙な、どちらも主役といえるカツカレーは、ランチタイムのみの提供で、サラダ・コーヒー・デザートつき。

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女性・ファミリー層も多いこのお店でリピート率の高い人気メニューをぜひ。

【メニュー紹介】

「ロースカツカレー」1,500円の他に「フリッツカレー」1,000円など

 

レストラン サカキ

カツカレーの提供は平日のランチタイムのみ

京橋で、今話題の千葉県産林SPF豚を使用した絶品カツカレーを食べられるのがこちら。

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この肉の特徴は、肉の細胞膜がしっかりとしていてパサつかず、ジューシーさが凝縮されていること。このお店ではラードで3分、軽めに揚げている。薄くカットされているのは、カレーと共に口に入れたときに、肉が厚いとカツの食感が勝ってしまうというバランスを考えた上でのこと。

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そのカレーは、ブイヨンや炒めたクアン、コリアンダー、カルダモンなどのスパイス、野菜、黒毛和牛の煮汁などをブレンド。煮込んだ後にミキサーに掛け、滑らかな食感に仕上げられている。小麦粉を使っていないのもポイントだ。dsc_91221

1956年創業・現在4代目の店主が腕を振るい、親子何代かでひいきにしている客も多いという。柔らかく食べやすい甘みが際立つカツと、香り豊かな辛口カレーのマッチングは、一度体験するべきこの店ならではの伝統の味だ。

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昼は洋食、夜はフレンチのお店となる。カツカレーの提供は平日のランチタイムのみなので、お間違えなく!

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【メニュー紹介】

「カツカレー」1,350円の他、「黒毛和牛のビーフカレー(サラダ付き)」1,300円など

 

とんかつ屋のカツカレー

ひと口目は必ずカツからいって! カツを味わうためのカレーはサブ!

 

脂の乗ったこだわりの豚肉を厚めにカットし、ラードを使って香ばしく揚げたカツ。そのボリューミーかつジューシーなカツを引き立てるべく、カレーはスパイスが香りつつもまろやかな味わいで、カツを軽やかに食べさせてくれるよう工夫している店が多い。

 

まずはカレーが掛かっていない部分をかじって自慢のカツを堪能したならば、今度はカレーとカツを共に頬張り、カレーの香り、カツの甘み・うま味という両者のバランスを満喫してみてほしい。

のもと家

玉ネギの甘みがカツを引き立てる

大門・浜松町界隈のビジネスマンの強い味方である、とんかつ店「のもと家」。とんかつ屋が作るカツカレーもまた、味わい深いぜいたくな美味しさでビジネスマンを魅了している。

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この店のとんかつに使う六白黒豚は、甘く柔らかな脂身が特徴で、そのなかでも最高品質の鹿児島県産のみを扱っている。そして夜の部のカツカレーのカツは、この豚肉を熱伝道の速いラードでズシッと揚げている。分厚い肉に薄めの衣がサックリまとわり、見た目から食欲をそそる。

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この重厚なカツに合うルーは、とあるそば屋のカレーで、カツの甘みを引き立てるのにピッタリなことから参考にしたという。玉ネギを1人前に約1個の割合で使って煮込んだシンプルな味わいのルーは、確かに主役のカツに絡みつく名脇役。

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ちなみに、ご飯も鹿児島県産である湧水米を使用しており、こちらとの相性も抜群だ。

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またこの店では、とんかつに茎わさびをのせ、鹿児島甘露醤油を掛けて食べるのも特徴で、カツカレーにプラスアルファとして付け加えるのもお薦めだ。

 

 

近隣に勤めるビジネスマンだけでなく、この店の評判を聞きつけやって来る人も多い。皆さんもぜひ一度駆けつけてみてほしい。

【メニュー紹介】

「かつカレー」六白黒豚/1,800円(昼は国内産白豚/1,200円)

 

とんかつ檍のカレー屋いっぺこっぺ

とんかつの名店が作る、豚×2の逸品

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蒲田とんかつ界の名店「檍(あおき)」の姉妹店として、同店の隣で繁盛しているカツカレー専門店。こちらの商品には「檍」の分厚いとんかつが使われているというのだから、たまらない!

 

特定の病原菌を持たず、筋肉繊維の脂肪が多い千葉県産林SPF豚150gを大胆に使用。165°Cの油で7〜8分じっくり揚げている。

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そして、カツと一緒に供されるルーの特徴は、玉ネギに加え豚のヒレ肉や肩肉を大量に投入し、煮込んでいること。まさに豚と豚とのぶつかり合いだ!

 

だからこそカツとカレーを同時に口に入れたときの、見事なまでの一体感! カツカレー用のカレーには肉を煮込まないお店も多い中、あえて豚に豚をぶつけてきて、成立させるとは、さすが「檍」の姉妹店!

 

店長いわく「家庭用のルーの辛口くらい。」といった辛さも豚の風味を際立たせている。

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また、「檍」と同様にアメリカテキサス モートンロックソルト、ヒマラヤ岩塩 ナマックという2種の岩塩でとんかつを食すのもお薦め。この店のカツカレーは、まず岩塩で豚カツをひと口、ついでカレーと合わせて楽しんでみてほしい。

【メニュー紹介】

「ロースカツカレー」1,000円、「特製メンチカツカレー」1,000円、「特上ロースカツカレー」2,300円など

 

見えたのは紛れもないカツカレー愛

今回の「カツカレー探求班」による調査は以上である!

 

カレー屋、洋食屋、とんかつ屋の視点から作られたカツカレーの違いをご覧いただいたが、いかがだっただろうか。カレーとカツの単体でのうまさと、交わることで見える相乗効果によって、カツカレーは成り立っている。

 

とかく我々は比較して順位を付けようと浅ましい争いを生み出しがちだ。対決などと銘打って取材をしてきたが“みんな違ってみんないい”と、そういう結論にたどり着いた。

 

各店の手法は違えど、その絶妙なバランスに対する熱いこだわりは、対決の俎上に出すべきものではない。カツカレーの数ほど、店主の愛の種類も千差万別。この違いは、ぜひカツカレー行脚をしてご実感いただきたい。