宣言どおり年内でクローズ。最高のフィナーレの舞台が始まる
2013年9月のオープン以来、開業からわずか2カ月でミシュラン一つ星を獲得し、2017年には「The World’s 50 Best Restaurants」のディスカバリーシリーズに選出されるなど、華々しい経歴をもつレストラン「TIRPSE(ティルプス)」。
1年間限定で平日のランチタイムをパティシエ中村樹里子さんによる「デザートコース」が体験できる場としたり、1週間限定とんかつコースを提供したり、予約のみのスイーツ「富士山カヌレ」が人気になったりと、従来のレストランの枠を大きく越え、“食”の楽しさや可能性を常に提案してきた異色の存在である。
しかしそのレストランは今年一杯で閉店する。
しかも閉店は今から2年前、2016年に既に宣言していたものだった。
「次のステージに行くために」と、閉店の理由の詳細は明かされていないが、この愛すべきレストランが閉店してしまうことに寂しさを覚えている人は読者の方々の中でも多いのではないだろうか。
けれど、これまでもあの手この手で多くの食いしん坊たちを楽しませ、満足させてきたレストランがこのまま終わるわけがない。閉店を宣言していたオーナーの大橋直誉さんは「最後は、TIRPSEでやってきた5年間の総集編のようなコースを出したい」と言う。
今、世界中から注目を集めるシェフ、渥美創太氏がやってくる
そんな総集編の最初を飾るのがパリの名店「クラウンバー」のシェフを務め、今年自らの店「Maison」を開業する渥美創太さんだ。クラウンバーでは、2015年フランスのグルメ誌『ル・フーディング』における「フランス最高のビストロ」の称号を得たのをはじめ、パリを代表する人気シェフとして、世界中にその名を知られるように。また、今年4月からの3カ月間行われたNYでのポップアップレストランでは、全日満席という偉業も成し遂げた。
そんな渥美シェフが「最後のTIRPSE」で腕を振るうというのだから、期待はおのずと高まる。
お互いを「親友」と呼ぶ大橋さんと渥美さんの関係は、数年前にさかのぼり、大橋さんがフランスにワーキングホリデーで滞在中に出会ってから。
「僕が27歳、創太は25歳。最初からいろんなことを話しましたね。料理を食べる前から“こいつは一番の料理人になる”って確信してたし、言い続けてました」と大橋さんは振り返る。
TIRPSEでのコラボレーションディナーをはじめ、地方でのイベントなど過去にも何度か仕事を共にしてきた二人だが、今回はそれにも増して大きな意味をもつコラボレーションとなりそうだ。
きっかけは渥美さんから。突然「TIRPSEで1カ月シェフをやらせて」と大橋さんに連絡があったのだという。
「パリの自分の店の工事が長引いてオープンが延びたので、その間何かやりたいなと思いました。チームを連れてNYでポップアップを3カ月やり、店が開業したらパリで腰を据えてやる。だったら日本でやりたいな、と。せっかくなら楽しくやりながら成果も得たいと思った時に最初に浮かんだのが大橋でした。TIRPSEでシェフをやろうと思ったというより、大橋とやりたいなと。そしたらパリの店でやることもよりグレードアップするんじゃないかと思っています。仕事のできるアイデアマンの親友大橋くんに期待しています」
という渥美さんに対して、一方の大橋さんはこう語る。
「僕は彼をNo.1の料理人だと、言い続けてきました。それと彼と仕事をするのは本当に楽しいしエキサイティング。お互いに率直に意見を言い合えるし、言葉に出さなくてもその場のノリだけでもわかりあえる。今回は最高の舞台になると確信しています」
稀代のアイデアマンと、世界で活躍するシェフとの共創は、2018年屈指の注目すべきイベントとなりそうだ。
*TIRPSE x Maison by Sota Atsumi
期間:2018年9月18日~10月18日(日・月休)
1名¥30000(ペアリングコース付・税サ込) (ノンアルコールの方はティーペアリング)