【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2024年4月を振り返る

ここのところ「コロナ前の売り上げに戻った」や「前より売り上げが増えた」など、飲食業界が好調だというニュースや現場の声が届くことが増えてきました。外食を好むものにとっては喜ばしい状況です。そんなこともあってか、新店舗も各地に続々と増えてきているのを感じます。そんな中、2024年4月もさまざまな新しいお店をご紹介しました。

  1. 世田谷を熱くする、名店出身シェフによる個性あるスパイスカレーのお店
  2. 大阪を代表するスリランカ料理の名店が東大阪の地で2店舗目を開店
  3. 話題となったものの長く休業していた間借りカレー店が西新宿で復活
  4. 有名インド料理チェーンの本部長が独立開業した、インド料理でお酒を楽しめるお店

以上4店舗。どのお店も今後大人気となりそうなお店ですが、現状はまだそこまで混んでいるわけでもなさそうです。今のうちに行っておくのが良いですよ。

東京のみならず、大阪にも続々と注目店が生まれています。5月の1週目も大阪のお店をご紹介予定。大阪以外の方にはゴールデンウィーク等連休の大阪旅行の参考にしていただければと思っておりますので、引き続き本連載のチェックをよろしくお願いします!

【第1週のカレーとスパイス】世田谷に新たなカレーの注目店が登場! 人気店出身シェフの個性が光る一皿を堪能すべし「HUTCHERSON(ハッチャーソン)」

今回は人気店出身シェフによる新店舗をご紹介しましょう。世田谷駅近くに2024年1月24日にオープンした「HUTCHERSON」。世田谷の新店舗と言えば先日ご紹介した「ルビーマーレー」も記憶に新しいところですが、ほぼ同時期にオープンしたお店です。

↓ルービーマーレーの紹介記事はこちら

トンネルのような入り口

「HUTCHERSON」のシェフは大阪発の大人気店「旧ヤム邸」系列の東京のお店で2年、その前にもカレーのお店(現在は閉店してしまいましたが個人的に好きなお店でした)で腕を振るっていた方。

カウンターにはスパイスがずらり

階段を上って店内に入ると深緑のタイルが印象的でシックな装い。スパイスが並べられたカウンター席の他にテーブル席もあり、一人でも複数でも楽しめそう。

メニューを見るとカレーライスのみならず前菜的なメニューからデザートまで充実。せっかくなので前菜、カレー、デザートと全部楽しみました。

「桜海老とケールの春巻 トマトチャトニ」

まずは「桜海老とケールの春巻 トマトチャトニ」450円を。青汁の材料として使われることも多いケールの味わいと桜海老の食感、うまみが調和し、トマトチャトニをつけて食べるあたりにカレーのお店ならではの楽しさもあります。

パリパリの皮の中には具材がぎっしり

カレーはチキン、キーマ、ポーク、シーフード、マトンがあり、その内容が随時入れ替わっていく形。マトンがビーフになったりポークが2種になったりすることもあるそうです。創業時から変わっていないメニューはポークのカツビンダルーのみで、他は一期一会のメニューとなるとのこと。

「カツビンダルー」

定番の「カツビンダルー」1,300円はきめ細かい衣に包まれさっくりと揚がったカツがご飯の上にのり、ビンダルーらしく酸味が印象的なカレーがカツにかからない形で盛り付けられ、スタイリッシュなルックスのカツカレーとなっています。程よい厚みのカツをカレーにつけながら食べていけばスプーンが止まらないおいしさ。

褐色のビンダルーと黄金色のカツのコントラストが美しい

ビンダルーとはインド南西部のゴア地方の名物料理で、通常はカツではなくビネガーでマリネした豚肉を煮込んだカレーなのですが、それを分解再構築した形とも言え、楽しさとおいしさを兼ね備えた逸品となっています。

「マトンカレー レモンと胡瓜のライタソース」

「マトンカレー レモンと胡瓜のライタソース」1,350円も良いですよ。レモンのほろ苦さと酸味、ヨーグルトの甘やかで穏やかな酸味が調和するカレーで、こちらも重厚なパンチがありながら同時に爽やかであるというアウフヘーベンを成立させています。

酸味とほろ苦さが後を引く一皿

あいがけは無いのですが、一皿で成立する味なのでこれは一品をしっかり楽しむべきカレーライス。他が気になれば2皿食べるか、またお店に行けば良いのです。

デザートに「甘酒と黒糖のアイスクリーム ムング豆の餡」400円と「ホットチャイ」500円を合わせて。

「甘酒と黒糖のアイスクリーム ムング豆の餡」

甘酒、黒糖、あんこと和風ですがあんこの豆が小豆ではなくインド料理でよく使われるムング豆で作られた餡というのが気が利いています。前菜同様カレーのお店ならではの工夫があり、そこがとても良いのです。

「ホットチャイ」

チャイはシンプルイズベストな仕上がりで、前菜、カレー、デザートと楽しんだ締めくくりをより優しく包んでくれるようなテイスト。

名店出身シェフのお店といっても色々で、修業先の料理とあまり変わりばえのないものを出すお店も少なからずあります。それはそれで再現性は素晴らしいと思うのですが、どうせなら修業先での経験を活かした上でオンリーワンの個性を見せてほしいところ。

そういう意味でも「HUTCHERSON」は修業先の良さを踏まえつつ個性ある料理がいただける期待の新店舗であり、エリックサウス出身の「ルビーマーレー」と共に、世田谷のカレーを熱く盛り上げてくれそうですね。

【第2週のカレーとスパイス】わざわざ行くべき名店! 関西のスリランカ料理店が東大阪に2号店をオープン「セイロンカリー 東大阪店」

2013年に大阪・大正区でスタートして人気となり、南船場に移転してさらに知名度を上げた大阪を代表するスリランカ料理店のひとつ「セイロンカリー」が、2024年3月23日、東大阪市稲田新町にて「セイロンカリー 東大阪店」を2号店としてスタートさせました。

駅からは少し距離はあるものの、食後の腹ごなしにはちょうどいい距離

徳庵駅から徒歩15分、長田駅からは徒歩20分と、徒歩では少々行きにくい場所にあるのですが、わざわざ行く価値のある名店です。

1階のカウンター

店内はカウンター席とテーブル席。程よくスリランカを感じさせつつ温かみある雰囲気。さらには2階にも客席があり、広い空間は貸切やパーティーなども対応可能とのことで、さまざまなニーズに対応してくれる店舗となっています。

2階は貸切OK

名物の「アンブラ」を、メインはポークカレー、ご飯はバスマティライスを選択(1,400円)してオーダー。

「アンブラ」

僕が食べに行った日はセイロンカリーのグランシェフであるランジさんが自ら厨房で腕を振るっていたので安心感がありました。

副菜たっぷりのプレート

ワンプレートの副菜は、上の写真左手前の緑色のものが大和まなのサンボル(和え物)、そこから時計回りにポルサンボーラ(ココナッツのふりかけ的な料理)、パパダン(豆粉のせんべい)、三度豆テルダーラ(炒め物)、レンコンのキラタ(辛くないココナッツカレー)、パリップ(レンズ豆のカレー)という構成。それぞれ単品で食べると引き算の味付けで素材の味を活かした滋味深いおいしさなのですが、混ぜて食べていくとおいしさの相乗効果が生まれます。

ポークカレー

ポークカレーのスリランカ料理らしくスモーキーでスパイシーな味わいは、豚肉の甘みとうまみがスパイスや副菜と絶妙にマッチして、食べすすめるごとにテンションが上がっていくような絶品です。

副菜、カレー、ご飯を混ぜて味の変化を楽しめるのがスリランカカレーの醍醐味!

大阪のスリランカ料理は東京に比べて味にパンチがあってインパクトも強いテイストのお店が多く、それが魅力でもあるのですが、ランジシェフの作る料理は強すぎず程よい絶妙な着地点であり、食べていて疲れず、日常的に食べても飽きない料理だと感じます。

「ビーフロティ」

1皿で大満足だったのですが、もっと食べたいという気持ちになるのがランジさんの料理。「ビーフロティ」600円もいただきました。注文が入ってから作るできたてのロティはもっちりした食感の中に香ばしさもあり、牛肉とじゃがいもをシンプルにスパイスで味つけしたものが包まれ、満足度をさらに高めてくれました。

サイドメニューも充実

ワンプレートのみならずサイドメニューも充実しており、ビーフロティのように1ピースから頼めるものもあるのは、おひとり様食いしん坊にはとてもうれしいことです。

「セイロンティー」

食後に「セイロンティー」(通常450円、ランチタイムはサービス価格100円)で締めくくり。こちらはキリテーと呼ばれるスリランカのミルクティーで、世界的に紅茶の産地としても名高いスリランカならではの上品な味わい。おいしい料理で高まったテンションを優しく落ち着けてくれました。

2号店をスタートすることになった経緯を聞いてみると、ランジさんの希望なのだそうです。ランジさんはドイツ、オランダ、韓国、中国のエキスポでのスーシェフの経験もある凄腕シェフ。実は数年前から大阪市内で物件を探していたのだそうですが良い物件が無く、さらに地域を広げて探したところ東大阪市のこの地が見つかり、ここでスタートさせたとのこと。だからこそランジさんも気合いを入れて厨房に立っていたというわけです。

大阪は言わずと知れたスパイスカレーの聖地ですが、大阪スパイスカレーはスリランカ料理に大きな影響を受けているとも言われています。ランジさんは大阪スパイスカレーの名店シェフのみならず、全国的に各地の人気店のシェフたちにも影響を与え、リスペクトされる存在。そんなレジェンドシェフの絶品料理。冒頭でもお伝えしましたが、あえて重ねて言いましょう。

わざわざ食べに行く価値のある名店です!