旬のネタが揃うお造り盛り合わせ

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンした店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分にあり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちに楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する企画。今回は田中知之さんが愛する地元、京都のお気に入りの一軒「吟味屋 菜々色」。帰省の度に必ず足を運ぶという店の魅力を探っていく。

教えてくれる人

田中 知之
DJ/プロデューサーとして国内外で活躍。FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリースする他、多数のアーティストの楽曲プロデュース、100曲以上のRemixも手掛け、東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。食通としても知られ、DJツアーで培った全国各地を網羅する情報量の多さから、各界著名人からの信頼も厚い。

季節の味を囲んで、京都人もゲストも気兼ねなく過ごせる「吟味屋 菜々色」

オープンは2010年

京都市内の主要な南北の通りの一つで、歴史的資源も多く残る堀川通。その堀川通から少し東に入った場所に佇むのが、田中さんが贔屓にする「吟味屋 菜々色」だ。5年ほど前に、京都に住む友人の紹介で初めて利用したのを機に、帰省の際には度々足を運ぶようになったとか。旬の素材を使った料理を手ごろな価格で楽しめる、居酒屋の理想形だと太鼓判を押す。

食べログでの点数は3.09だが、独自の審美眼を持つ京都人が贔屓にし、大切な客を案内する際にも利用するという店。その魅力を味わってみよう。

※点数は2022年4月時点のものです。

店主の心配りが行き届いた、温かな雰囲気の中でくつろぐ

大通りのそばでありながら、地元の人以外はあまり通らないような場所に立つ「吟味屋 菜々色」。大正時代に建てられた町家を利用した落ち着いた雰囲気の表構えだ。「お客さんのつながりで、新しいお客さんとの縁が生まれればいいと思っているので、こういう場所がぴったりなんです」と、店主の林英作さん。

スタッフとのやりとりを楽しむならカウンター席へ
店主の林英作さん

2階はテーブル席。1階はカウンター席。厨房はわざわざ低く掘り下げ、カウンター席に座ったお客さんと目線が合わせやすいように設計。空間づくりには「お客さんとのコミュニケーションを大切にしたい」という林さんの意見が随所に取り入れられている。厨房と客席の仕切りは食器棚を兼ねていて、料理のオーダーが通るごとに器が減って、隔てるものがなくなるという仕掛けもユニークだ。

メニューの説明も会話のきっかけに
林さんは飲食業歴30年以上のベテラン
 

田中さん

町家をリノベーションした空間が心地よいです。地元の人たちに愛されるお店ですが、関東や海外の友人を案内しても必ず喜んでくれます。自信を持って紹介できるお店ですね。