心躍るテーブルビュッフェが、100年先の海の未来を守ることに繋がる

「Chefs for the Blue」の発信拠点として

2020年9月、原宿駅竹下口から歩いて3分ほどの場所にオープンした、食に特化した商業施設「JINGUMAE COMICHI」。多彩なジャンルの18軒がにぎやかに並ぶ施設の2階奥に「Sincere BLUE(シンシアブルー)」は店を構える。

The Tabelog Award」のBronzeを受賞しミシュラン一つ星も獲得した予約困難店「Sincere(シンシア)」のオーナーシェフであり、一般社団法人Chefs for the Blue (シェフス フォー ザ ブルー) のリードシェフを務める石井真介さんによる、“サステナブルシーフード”を使った料理を中心としたビュッフェスタイルのレストランだ。

魚をモチーフにしたロゴデザインが愛らしい

Chefs for the Blueとは、フードジャーナリストと東京のトップシェフ約30名を構成メンバーとして2017年に活動を開始した、水産問題を中心とする社会課題に取り組むシェフネットワーク。魚が激減中の日本の海に危機感を抱き、持続可能で豊かな海を目指してNGOや研究者などと協働しながら、企業・自治体との各種プロジェクト推進や啓発イベント開催など精力的に活動している。

コロナ禍に見舞われた今年4月〜7月には、シェフがつくるお弁当を医療機関に届けるSmile Food Project(スマイルフードプロジェクト)を遂行。お弁当には多くのサステナブルシーフードを取り入れた。その活動の延長線として、より多くの人に知って欲しいという思いから「シンシア ブルー」が誕生した。

窓の外には神宮の杜の緑が望め、心地よい風が吹き抜ける店内

魚のロゴが描かれた「シンシア ブルー」の扉を開けると、ゆったりと席が配置された開放感あふれる店内が広がる。インテリアは、少しでも水産資源に目を向けてもらいたいという思いから、海を意識しているそう。

壁に飾られたドライフラワーのアートは、魚を模していて、よく見ると魚がひょっこりと顔を覗かせているので、ぜひチェックしていただきたい。オープンキッチンになっており、料理をするライブ感も客席に伝わってくる。

思わず息を呑む、テーブルビュッフェ

こちらのディナーでは「テーブルビュッフェ」4,900円(2021年2月より5,900円に変更予定)というスタイルを採用。テーブルに運ばれてくる10種類以上もの前菜を一通り楽しんだ後、お好みのメニューを再オーダーすることができる。そして、メイン、デザートへと進んでいく。

好きな料理を、好きなだけというビュッフェの魅力はそのままに、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期し、テーブルごとにサーブし、MYトングで料理をシェアする。新しい生活様式に沿った安心感に加え、出来立ての状態で味わうことができるのも特徴だ。

ビュッフェスタイルは、土曜日のランチ限定で「シンシア」で開催していた「sincere+(シンシアプラス)」の着席ビュッフェの流れを汲んでいる。

前菜として登場するメニューの数々。写真は2名分

前菜は「MSC帆立と岩海苔のクロケット」、「ASCブラックタイガーのカダイフ」、「ASCパンガシウスのベニエ」、「和歌山ビンチョウ鮪と根セロリ」、「未利用魚のカルパッチョ」など魚尽くしのメニューが勢ぞろい。

「MSC」や「ASC」(※1)とは、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業、養殖業に対する認証のひとつ。また「未利用魚」は、水揚げしても食用として流通しない魚のこと。コバンザメ、オオモンハタ、カマスサワラなど日頃は口にする機会がなかったり、聞き慣れなかったりする名前の魚だが、実際に味わうとそのおいしさに驚くはずだ。その背景には、神奈川県長井港で仲買人として魚を買いつけ、神経締めや血抜きの適切な処理を行って届けてくれる長谷川大樹さんのような存在も欠かせない。

※1 MSC=海洋管理協議会、ASC=水産養殖管理協議会

聞けば聞くほど奥が深く、世の中ではまだまだ認知されていないが、これから先の海の資源を守るためには、魚を口にする私たち一人一人が知り、それらを選ぶことが大切。一流レストランのクオリティで丁寧に仕上げた魚料理をカジュアルに提供する根底には、現状を多くの人に知って欲しい、という強い思いがある。

前菜は他に、「シンシア」でも愛されているフォアグラ入りの「うさぎの最中」、ソースがクセになる「バーニャカウダ 蟹味噌のソース」、キューブ形の「特製ブリオッシュ」と実に盛りだくさん。これらが好きなだけお代わりできるというから、ぜひお腹を空かせて出かけたい。

ビュッフェは2名~、2時間制。休日に限り、小学生以下(2,000円)と未就学児(無料)も来店できる。